第39話「贈るもの」
みなちゃん先生からヒントを得た私と千奈ちゃんは学校を出て商店街の方へと足を運んでいた。
商店街には小物を扱うお店もいろいろあったはずだから何かいいものが見つかればいいけど……。
「中々見つけられないものだね……」
「……うん」
千奈ちゃんと雑貨屋をあちこち回って見たものの、中々いいものが見つからなかった。
というよりも、かわいい小物とかはいろいろとあったのだが、これだ! と思えるような品が見つからなかった。
「時間はまだあるからその間に用意できればいいんだろうけど、方向性だけでも決めておきたいよね」
「ねえ、綾乃ちゃん。わたしたちって実はあまり梓ちゃんのことを知らないんじゃ……?」
千奈ちゃんの何気ないその一言で私は言葉に詰まる。
よく考えたら私は梓ちゃんの趣味や好物についてあまりよく知らない。
私はそんな状態で梓ちゃんの友達と言えるのだろうか……。
「……そうだね。すごく今更な感じだけど否定できないよ」
「で、でも! まだまだこれから知れればいいんだよね」
そう千奈ちゃんは言ってくれているものの、私の気持ちは少し晴れずにいた。
そんな状態で近くの雑貨屋に入ると、見知った顔を見かける。
「せんちゃん?」
「あ! あやっちにちなっち、やっはろー」
小物を眺めていたせんちゃんがこちらに気づき、私たちに対して陽気に挨拶をする。
「やっはろー。せんちゃんも何か買物?」
「うん。というより、私は付き添いみたいなものだけどね」
そう言ってせんちゃんはある方向を指す。
そこには『とどろきくん グッズフェア』と書かれたコーナーがあった。
ちなみにとどろきくんとは雷をモチーフにしたキャラクターが化学や自然についてユーモアに解説をする教育番組である。
そのとどろきくんのコーナーにはひときわ目を輝かせている夏妃ちゃんの姿があった。
「な、なんか私の知っている夏妃ちゃんとイメージが違うんだけど」
「なっちゃんは昔からとどろきくんが好きすぎてあんな感じになっちゃうんだよ」
「もしかして有馬さんが勉強を好きになったきっかけって……」
「うん。とどろきくんが発端だよ」
意外な情報を手に入れてしまった。
「あのキラキラした目のなっちゃん、かわいいよね」
「まあ、確かにかわいいけど」
ちょっといつもの雰囲気とギャップを感じて何を言えばいいのか……。
「そう言えばあやっち達は何でここに?」
「え? あ、うん。実は……」
せんちゃんに梓ちゃんの誕生日のためにプレゼントを探しているが、なかなか決まらないことや梓ちゃんの好みのものをよく考えたら知らないことなどを説明する。
「なるほどねー。そっか、梓ちゃん誕生日なんだ」
「だから困ってて……せんちゃんだったらどんなものをあげる?」
「私? うーん、私ならね……その人に合いそうなものをあげるかな」
「合いそうなもの?」
いまいちピンとこない。
「ほら、どういうものがいいかなーって考えじゃなくて、どんなものがあの人に似あうかなーっていうような感じ?」
「それってどう違うの?」
「えっと、せんちゃんが言いたいのって喜んでもらうというよりはその人にピッタリなものを贈るってことかな?」
「そうそう、そんな感じ。その人にピッタリなものを贈って結果的にそれが喜んでもらえるようなものってことじゃないかな」
なるほど、そう言う考え方もできるのか。
しかし、それだけではまだ解決にはならないかもしれない。
「だから私は基本的に手作りで何かを贈ることが多いかな。手作りってことはその人のためにちゃんと作るってことだしね」
「手作り……あ、そっか」
何となく道が開けた気がする。
「何か閃いた?」
「うん。ありがとうせんちゃん」
「力になれたならなによりだよ」
「そうだ、せんちゃんは誕生日いつ?」
「私は12月1日だよ。ちなみになっちゃんは8月14日」
「せんちゃんの誕生日ももうそろそろだね。その時はお祝いするからね!」
「あはは、楽しみにしておくね」
ひとしきり話し終え、私と千奈ちゃんはせんちゃんと別れて雑貨屋を出る。
「綾乃ちゃん、さっき何か閃いたって言ってたけど」
「うん。それはね……」
千奈ちゃんに一通り私の考えを話す。
その提案を千奈ちゃんも気に入ってくれたようで二人で作業に取り掛かるのだった。




