第38話「誕生日プレゼントの選び方」
「うーん……」
プレゼントを考えると言って教室を出たのはいいものの、プレゼントって何をあげればいいんだろう?
「綾乃ちゃんはプレゼントを誰かにあげたっていう経験はある?」
「……ないかな。そもそもそう言う間柄の友達が今までいなかったし」
「……うん。わたしも同じ感想だよ」
ふたりしてため息をつく。
こんなことなら梓ちゃんに事前に何が欲しいかとかそことなく聞ければよかったんだけど、よく考えたら誕生日のことをそもそも知らなかったので意味がなかった。
「ん? あれって……」
廊下を曲がった先、そこには生徒と話をしているみなちゃん先生の姿があった。
そういえばみなちゃん先生っていつも何をしているのだろう?
基本的に体育教師という以外は私の見る限りでは失礼だけどほぼ何もしていないようにも見えるけど……。
「千奈ちゃんはみなちゃん先生って普段何やってるか知ってる?」
「彩咲先生? ……あまりよくは知らないけど、生徒の相談にのったりしている姿をよく見かけるかな」
「なるほど」
じゃあ今現在も生徒の相談にのっている最中かな?
そのように考察していると話が終わったようで、みなちゃん先生がこっちへと向かってくるのがわかる。
「あれ? 綾乃たちか。どうしたんだこんなところで」
「私たちはちょっと考えことというか……みなちゃん先生はさっきの生徒の相談にのってたの?」
「あぁ、そうだな。いろいろあって相談されることが多くてな」
「いろいろ? 何か特殊な感じのですか?」
「実際そんな感じだな。思春期の悩みもあれば身の回りで起きる不思議な体験についてとか、自分の体質や人間関係など様々な分野について相談を受けることが多い」
「そ、そうなんだ……」
いつにもましてみなちゃん先生が先生のような(先生だけど)会話をしている。
それにしてもいろいろな分野か……ちょっとどういう話をしているのか気になる。
「まあ、それもこれも私の経験上と推測を交えた回答になる関係上、正確な解決法になるかはわからないけどな」
「彩咲先生もそう言う経験があったんですか?」
みなちゃん先生の過去……私は前に聞いた友達だと思っていた人たちが友達じゃなかったという話を思い出す。
経験上、というのはそこからきているのだろうか。
「はっはっは、まあな。といっても、昔吸血鬼と一緒に戦ったとか話しても信じないだろう?」
私の心配をよそに、みなちゃん先生は冗談を言いながら笑い飛ばしていた。
「それは……確かに信じないですけど」
「でもまあ、そう言う類の話は私が居た高校時代からあったものだ」
それは俗に言う『中二病』というやつではないだろうか。
「お前たちはこの地域に伝わる星に関する秘密や伝承について知っているか?」
「星に関する秘密や伝承……ですか? わたしは聞いたことがないけど……」
「わたしもお店の本とかは読みますけど聞いたことないですね」
星に関する秘密や伝承というものが残っていたら商店街の方とかで昔聞かされていそうなものだけど、千奈ちゃんも知らないということはこの地域のごく一部のしきたりのようなものだろうか。
「実際知っている人の方が少ないからな。この地域ではごく稀に自分でも気づかないことが多いような特殊な力を持った人が存在するんだ」
急に漫画のような話になった!?
みなちゃん先生ってもしかしてそう言う漫画とかの影響を受けすぎているとかかな……。
「……まあ、そう言う顔にもなるよな普通。だがな、それが他の人にとっては些細なことだったとしても、そいつにとってはとても重要なことかもしれない。そんなやつらの背負っている物を少しでも減らせれば、それだけでも人は前向きになれると私は信じているんだよ」
特殊な力とかそう言うのは素直に信じることができないけど、みなちゃん先生の言うことはもっともだと思う。
実際、私は相談して少し前向きに行動できたはずだから。
「彩咲先生、特殊な力ってどんなものがあるんですか?」
千奈ちゃんが意外とノリノリ!?
結構こういう話好きだったりするのかな。
「まぁ、その話はそのうちな。もしかしたらお前らもそう言うことに首を突っ込むことになるかもしれないからな」
そう言ってみなちゃん先生は歩きだしていった。
なんだかいろいろと壮大な話を聞いたような気がするけど……。
そこで私は思い出す。
元々梓ちゃんのプレゼントについて考えていたことを。
その相談をみなちゃん先生にするため、急いで追いかけるのであった。
~~
みなちゃん先生に事の概要を説明し、プレゼントは何がいいのかを伝える。
「……ということなんだけど、どういうのをえらべばいいのかな」
「ふむ……」
みなちゃん先生は顎に曲げた人差し指を当てながら少し考えているようだ。
……まあ、きゅうりとか言われたら困るけど。
「そんなに深く考えなくてもいいだろう? 心のこもったプレゼントなら素直に喜べるはずだ。仮にお前らだったらどんなプレゼントだったら喜ぶか、どんなプレゼントを受け取ったら嬉しいかを考えればいいんだ。実際、私は気の許せる友達からプレゼントしてもらえるってだけでもうれしかったからな」
気の許せる友達からプレゼントしてもらえるってだけでもうれしい、か。
私もその立場だったら多分そうかも。
「……ありがとう。みなちゃん先生のおかげで何か見えてきた気がするよ!」
「お、そうか。高垣はあんまりピンと来てないみたいだが、頑張れよ」
まだ釈然としていない千奈ちゃんと共に商店街へと向かうために下駄箱を目指して歩くのだった。




