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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第35話「想い」


「ん……」


 目を開けると、そこは病院の一角の手術室前であることがわかる。

 ……わたし、寝ちゃってたんだ。

 ふと、左隣から重量を感じた。

 見てみると、そこには寝ている柊くんがいる。

 どうやらお互い寄り添うように眠りに落ちてしまっていたらしい。

 時間を確認すると15時近くになっているようだった。

 それにしても、あの夢はわたしと柊くんがはじめてあった時のものだ。

 あの時がずっと楽しくて、それをくれた柊くんとわたしはずっと居たいと思っていた。

 いや、今だってそうだ。

 わたしはこれから先もずっと柊くんと居たい。

 それはわたしが……

 そこまで考えて、わたしは前に彩咲先生の言っていたことの意味が何となく分かった。

 ……わたしは柊くんのことが大すきだ。

 ずっと居たいと思うほどに。

 これはまぎれもなく『恋』という感情だった。


「……う、ん」


 柊くんがそう小さく声を上げると、わたしは反射的にビクッと身体を震わせる。

 なぜかわたしが柊くんのことをすきだとわかったからだろうか、無性に恥ずかしくなってきた。

 というより何をどうすればいいのか本当にわからなくなってきた。

 わたしがそう思っていると、柊くんは目を開ける。

 周りを見渡し、状況を察したようだった。


「あ、えっと、寝てたんだ僕……」

「う、うん……」

「……ごめんね。悠長に寝てるような状況じゃないのに」

「い、いや、多分柊くんも疲れているだろうし……」

「ううん、それだけじゃないね。千奈ちゃんには謝らないといけないことがいっぱいだね」

「そんなことないよ。わたしだって感情に任せて柊くんをぶっちゃってごめんね」

「元はといえば僕がずっと黙ってたことが原因だよ。それにこの状況を自分の中で解決しようとして、自分が弱気になっていたことも合せて本当にごめん」

「わ、わかったからもう謝らないで? それじゃあこれからは悩みがあったら一人で抱え込まないこと。これでこの話は終わりにしよう?」

「……うん」


 それから少し静寂が続いた。

 そして手術室のランプが消え、扉が開かれた。

 わたしと柊くんは反射的に立ち上がり、医師の先生が出てくる。


「手術は成功しました。あとは目を覚ますのを待つだけです。ですが、患っていた記憶が戻るかはいまだ不明です。今後同じようなことが起こり得るかもしれませんがなるべく早期発見で対処できればと思います」

「はい。ありがとうございます」


 それだけ言って先生はその場を後にし、柊くんのお母さんも病室へと運ばれていったようだった。


「よかったね、柊くん」

「うん」

「あ、いたいた!」


 ふと、聞き覚えのある声が聞こえた。

 そこには綾乃ちゃんを含めいつもの面々がいた。


「あ、あれ? みんなまだ学園祭の途中じゃ……?」

「一通り終わったからみんなで出てきちゃった!」

「先生には許可を得て、後半の仕事は他のみんなに任せてきた感じだね」

「っと、まあここじゃ迷惑になりそうだし、他のところに移動しようぜ」

「あ、それならここの病院は屋上にいけるよ! この時間帯ならほとんど人もいないし!」


 綾乃ちゃんの提案により、わたしたちは屋上へと向かうのだった。


~~


 屋上につくと、そこに人はいない状態だった。

 桜田くんと梓ちゃんは飲み物を買ってくると言っていたので少し遅れるとのことだった。


「本当は僕、今日この場に来ないつもりだったんだ」


 屋上の柵に手を置きながら柊くんはそう言う。


「でも、僕は千奈ちゃんに手を引かれてここに来た。千奈ちゃんがあそこまで怒るとは思っていなかったからびっくりしたけど」

「わ、私はそれを近場で見ててびっくりを通り越してこわかったよ……」

「あ、あはは……あの時は必至だったから」

「僕さ、また音楽……ピアノを再開しようと思うんだ。僕と僕以外の人が楽しいと思えるようなそんな音楽を目指そうと思う」


 柊くんが音楽を再開する。

 そう言ってくれただけでわたしはとても嬉しかった。


「今の僕はあまりピアノに触れてないし、同年代の人とは差ができちゃってるかもしれないけどね」

「そんなことないよ。柊くんなら……」

「千奈ちゃん。僕はキミにずっと言いたかったことがあるんだよ」

「え?」

「僕は不完全な人間だよ。千奈ちゃんは優しいからできるって言ってくれるけど、僕は自分自身できるかなんてわからない」


 ……確かにそうだ。

 他人にできると言われて出来なかったらと思うと、なんてそう思うのなんて当然だ。

 わたしはそんなことも考えずにただ言葉を発していただけなのかもしれない。


「でもね、千奈ちゃんにそう言われるとできるかもって思ってもくるんだ。だから……」


 一呼吸置いて、柊くんは次の言葉を発した。


「僕は千奈ちゃんのことがすきだ。こんな不完全な僕だけど、僕と付き合ってほしい」


 わたしは言われた言葉の意味を理解するのに少しかかり、


「は、はい!」


 そう答えていた。

 近くではそんな光景を見せられていた綾乃ちゃんと姫城くん、そして飲み物を買い終えて戻って気だであろう桜田くんと梓ちゃんが固まった様子でこちらを見ているのだった。


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