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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第30話「今と昔」


 綾乃ちゃんに連れられてきたのは商店街から少し離れたハンバーガショップだった。

 少し時間がかかるとのことで注文を終えたわたしたちは番号の書かれたプレートを持って適当な席へと座った。


「千奈ちゃん。早速だけど聞いていいかな?」

「う、うん」

「石川君ってどんな人?」

「え? どんな人っていうのは……」

「えっと、なんていうか、昔からあんな感じなのかなって思って。ごめんね、ちょっと気になっちゃって」


 もしかして綾乃ちゃん、わたしに気を使ってくれてるのかな?

 だとしたらわたしはずっと綾乃ちゃんに気を使わせてばっかりだ。


「ご、ごめんね。なんか気を使わせちゃってるみたいで……」

「え!? いや、そうじゃなくて……今の石川君って中学生の時の私に何となく似てる気がしてて」

「中学生の時の綾乃ちゃんに?」

「理由はわからないけど、前にテレビで偶然石川君の昔の演奏を聴いたことがあって、その時の石川君の演奏と今日聴いた石川君の演奏はなんか違う気がして……曲は違うからそれは当然なんだけど、そう言うことじゃなくて、その……」

「……楽しそうじゃないってことかな」

「……そう、かも」


 綾乃ちゃんは詳しくではないものの、わたしと同じことを感じていたようだった。


「ご、ごめんね。石川君の演奏は上手だし、私がそんなこと言えた義理じゃないんだけど」


 だからなのかな。

 人のために何かを考えてくれる綾乃ちゃんと友達になりたいと思ったのは。


「ううん。そんなことないよ。実際、わたしも同じように思っていたから」


 わたしは綾乃ちゃんに今自分が思っていることを告げることにした。


「今の柊くんは前とは全然違う感じなの。綾乃ちゃんの感じた演奏も感じたとおり昔はもっと楽しそうだった。今は性格も後ろ向きな感じだし、たぶん音楽が原因で何かがあったのかもしれないけど……」

「うーん」


 腕を組みながら綾乃ちゃんは何かを考えているみたいだったが、結局何も浮かばなかったのか机に突っ伏していた。

 そして店員さんが注文した品を持ってきてくれたことで綾乃ちゃんは復活していた。


 その日の帰り道。


「千奈ちゃん。学園祭の出し物だけどさ、演奏演劇はクラスのみんなを説得してやめようと思うんだ」

「そ、そんなことできるかな……今日のでだいぶそっち側に意見が偏っちゃってるけど」

「大丈夫だよきっと。それに失敗を恐れてたら前になんか進めないからね!」

「うん。ありがとう」


 改めて綾乃ちゃんの心強さを知った。


~~


 翌日。

 自分のクラスへ着き、自分の席へと向かうとすでに綾乃ちゃん、梓ちゃん、姫城くん、桜田くんが集まっていた。

 柊くんは鞄が置いてあるからトイレとかかな?


「……っていうことなんだけど」

「おはよう。何の話をしているの?」

「あ、千奈ちゃんおはよう」

「おはよー。今綾乃ちゃんが演奏演劇を取りやめようって話をしてて」

「多分、その心配はなく演奏演劇は候補から外れると思うよ」

「え? それってどういう……」


 そのタイミングでチャイムが鳴り響き、程なくして彩咲先生が現れた。

 同じタイミングで多分トイレに行っていた柊くんも戻ってきて席に着く。

 点呼を取り終えた後で彩咲先生は話し始めた。


「昨日の演奏演劇の件だが、うちの学校ではどうやら体育館のステージは2年生以上じゃないと使えないっていうルールがあるらしい。だからお前ら今回は諦めろ。帰りのHRでまた出し物考えるから意見はまとめとけよー」


 それだけ言うと彩咲先生は教室を後にした。

 彩咲先生の話を聞いた生徒たちは不満を言いつつも仕方ないといった感じで次の授業の準備を始めたりしている。


「うーん……」

「姫城君どうしたの?」


 姫城くんが何かを考え込んでいる様子に気づき綾乃ちゃんが声を掛けていた。


「いや、昨日の時点で先生は体育館のステージ使用の件はそもそも知っていたと思うんだけど、なんでわざわざそれを伝えずに電子ピアノのある教室に俺らを連れて行ったのかなって」

「え? どういうこと?」

「HR中にピアノのある部屋を借りに行くって時点で職員室にいる他の先生たちに体育館のステージが使えるか確認できるはずだよね?」

「でもそれって聞かなかったって言う可能性もあるんじゃないか?」


 話を聞いていたのであろう桜田くんも会話に混ざりはじめる。


「あの先生の性格だ。普段変なことをよく言ったりするけど、今まで見てきた感じだと行動は早いはずだから聞いていると思う」

「それが本当だとしたら確かに謎だけど、考え過ぎじゃないか?」

「そうかな。俺には何か理由があると思うんだけど」

「お前のその様子だと、何となく思い当たる節がありそうだな」

「……まあね。あくまで俺の推測だけど、先生はピアノを弾かせる、あるいは聴くか聴かせる必要があったんじゃないかな」


 それを聞いた瞬間にわたしはガタッという音を立てて席を立ち、彩咲先生の後を追っていた。


「彩咲先生!」

「ん? 高垣か。廊下はできるだけ走らないようにな」

「あ……すいません。あの、相談があるんですが開いている時間でいいので聞いてもらえませんか?」

「ああ、いいぞ。その様子じゃ少し話は長そうだし、そうだな……昼休みに弁当とか持って進路指導室前で待っててくれ」

「はい、わかりました」


 彩咲先生との約束を取り付け、わたしは教室へと戻るのであった。


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