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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第27話「運動大会二日目(後半)」


「綾乃ちゃん遅いなぁ」


 中庭にレジャーシートを敷いてそこに腰かけるあたし、佐野梓はそう思った。

 ここにいるのはあたしと千奈ちゃん。

 翔と石川君は飲み物を買いに席を外している。


「確かにそうだね……何かあったのかな」


 かれこれ15分くらい待ってるわけなんだけど、まだ紗輝は見つからないのかなぁ……。

 そう考えていると、こちらに向かってくる人影が一人。

 段々と近づいてくることでそれが紗輝であることがわかった。


「あれ? 綾乃ちゃんは一緒じゃなかった?」

「え? 金森さん? 一緒ではないけど……」

「そうなの? 紗輝のこと探しに行くって言ってたんだけど、入れ違いとかで見つからなかったのかなぁ」

「それじゃあちょっと探してくるよ」

「ううん。あたしが行くよ。さっきお昼先に食べてたし、紗輝はまだ食べてないでしょ?」

「そっか……じゃあお願いするよ」

「まかせてよ」

「あ、それならわたしもついていくよ」


 千奈ちゃんと共にその場を離れ、手分けして綾乃ちゃんを探しに行くのだった。

 ……それにしても、綾乃ちゃんならすぐに紗輝を見つけそうなイメージなんだけど、何かあったのかな。


―――


 ひとしきり走って辿り着いたのは体育館裏だった。

 立ち止まった私、綾乃は体育館を背に壁にもたれかかりながら座り込む。

 そして先ほどの出来事を思い出してか、一滴、また一滴と目から涙をこぼしていた。


「あなた、何してるの?」


 ふと、声がかかる。

 重い頭を上に向けるとそこには腕を組みながら立つ夏妃ちゃんの姿があった。

 前にもこんなことがあった。

 あの時も同じように夏妃ちゃんが声を掛けてきてくれたっけ。


「というより、なんで泣いてるのよ」

「姫城君を……探しに行ったら……告白している瞬間に鉢合わせて……姫城君は断ってたけど……すきな人がいるって……」


 私は俯きながら震える声でそう答えた。

 夏妃ちゃんが今どんな表情をしているのかはわからない。

 少し間を置いてから夏妃ちゃんは声を発した。


「バッカじゃないの?」


 怒りともとれるようなそんな口調でそう言った。


「すきな人にすきな人がいないなんて大抵ありえないに決まってるじゃない。それとも、そのすきな人が身近な誰かだったら自分は身を引くってわけ? そもそも、私とあなたが一人をすきになってる時点で少なくともどちらかは辛い思いをするのはわかっているはずでしょう?」


 夏妃ちゃんの言うことに対して私は何も言い返すことができなかった。

 それは夏妃ちゃんがもっともなことを言っていたからだろう。


「私は諦めないわよ。告白をするまではね」


 それだけ言って去っていくのがわかった。

 私は顔を上げられず、ずっと俯いたままだった。


―――


 千奈ちゃんと手分けして綾乃ちゃんを探すため、あたしは体育館の方へと足を運んでいた。

 こっちの方は思ったより静かだけど、何やら少し声が聞こえる。

 方向は体育館裏の方かな?

 体育館を迂回して裏の方へと向かう。

 裏の方へ出ると、有馬さんがこっちの方へと向かってきていた。

 ……少し怒っている?

 そんな表情をしながら通り過ぎていく。

 そして有馬さんが来た方向には壁にもたれかかりながら座り込んで俯いている綾乃ちゃんの姿があった。


「綾乃ちゃん!」


 近づいてみると、微かに震えている?

 もしかして有馬さんが……?


「……何があったの?」


 とりあえず千奈ちゃんに軽く現在地と綾乃ちゃんが見つかった旨を報告し、綾乃ちゃんは今までの経緯を話し始めるのだった。


「なるほどねぇ」


 途切れ途切れではあったものの、綾乃ちゃんは話してくれた。

 紗輝を探しに行ったことで紗輝にすきな人がいること、それを聞いた有馬さんに怒られたこと。

 あたしにも同じような経験があったから綾乃ちゃんの気持ちは分からなくはない。

 それにしても有馬さんがこういうことで怒るのも意外だったけど……。


「綾乃ちゃん自身はさ、どう思ってるの?」

「……わからないよ。もうどうすればいいかなんて」


「じゃあ、諦めるの?」


―――


「そんなの嫌だ!」


 私は反射的にそう答えていた。


「うん。それでいいと思うよ」


 梓ちゃんが優しい声でそう言ってくれた。


「何より、結果を出さないで諦めるなんて綾乃ちゃんらしくないよ」

「……うん。ありがとう、梓ちゃん」

「綾乃ちゃん、梓ちゃん!」


 私たち二人を見つけて千奈ちゃんがこちらへと向かってきていた。


「えっと、何かいろいろあったみたいだね……?」


 私たちの姿を見て千奈ちゃんはそう言った。

 私の代わりに梓ちゃんがこの状況を説明してくれて、千奈ちゃんはそれを聞いて納得したようだった。


「そうだったんだ……確かにそれも大事だけど、もうそろそろ次の種目が始まっちゃうみたいなの」

「次の種目って……あたしたちの二人三脚だ!」

「あはは、ごめんね。私に付き合わせたみたいで」

「そんなの気にしなくていいよ。それより、ちょっと顔やばいことになってるから一旦顔洗ってから戻ったほうがいいよ」

「わたしからはこれ。綾乃ちゃんには少ないかもしれないけど、お昼のパン」


 梓ちゃんにはハンカチを千奈ちゃんからはパンの入った紙袋を手渡される。

 そして二人は次の競技の準備の為、この場を去って行った。

 一人になった私は紙袋を開け、中身を取り出す。

 中身はホットドックとメロンパンとごま餡最中、それにパックのお茶だった。

 ごま餡最中は私が好きな食べ物だ。

 千奈ちゃん覚えててくれたんだなぁ。

 ホットドックの袋を開け、一口頬張る。

 また、涙が出た。

 先ほどとは違い、梓ちゃんと千奈ちゃんの優しさからくるものだろう。

 程なくしてすべて食べ終え、顔を洗って身だしなみを整えてからグラウンドへと向かうのだった。


~~


 グラウンドへと向かうと、ちょうど二人三脚が終わった後らしく次のリレーの準備中だった。

 私も急いで準備に取り掛かり、リレーが始まった。

 アンカーである私は一番最後であるため待機時間が少し長い。

 そして励まされたとはいえ、まだ少し身体が重い状態だった。


 順番が回ってきたため位置に着く。

 現在の順位は私のクラスが3位。

 いつもの私なら苦戦しないかもしれないけど……。

 隣の女子がバトンを受け取り、次々とバトンを受け取って走り出す。

 ついに私のクラスのバトンを受け渡され、走り出す。


 だが、いつもと感覚は違う。

 身体が思うように動かない。

 走れないほどではないが、まるで身体に重りをつけているような感覚だ。

 何とか2位の女子を抜き、後は1位を狙うのみだ。


 ……全然差が縮まらない。

 ゴールはもうすぐなのに負けちゃうのかな。


『頑張れ! 金森さん!』


 生徒の様々な応援の中、私に聞こえた声援。

 姫城君だ。

 私は……負けたくない……!!

 その声援を聞いたからだろうか、身体が軽くなった気がした。

 地面を思いきり踏み込む。

 1位との差は格段に縮まっていた。

 そして……。


 私は1着を取った。


~~


 すべての種目が終わり、総合結果発表へと移っていた。

 結果からいってしまうと、私たちのクラスは学年別で2位、総合で5位という結果となっていた。


「や、やっぱり1位とるのって難しいね」

「そうだねー。やっぱり綾乃ちゃんも悔しいよね」

「確かに悔しいけど、今回は自分自身いろんなことに気づけたから私は満足かな」


 今回一番私が気付かされたのは友達の優しさだったと思う。

 この状態がずっと続けばいいなと思う。


 ぐぅぅぅ――――……。


「……お腹すいた」

「あはは、それじゃあみんなであたしの家にいこっか」


 こうして私の運動大会は終わっていくのだった。


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