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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第21話「千奈の気持ち」


 わたしの名前は高垣千奈。

 私立代宮高校に通う1年生です。

 入学当初まで友達がいなかったわたしだったけど、今では声を掛けてきてくれた綾乃ちゃんや梓ちゃん、姫城くんに桜田くんと仲良くなりました。

 もしもあの時、綾乃ちゃんがわたしのことを助けるという選択をしてくれていなかったら今でもわたしは何もかもを諦めていたかもしれない。

 だからかはよくわからないけど、まっすぐな綾乃ちゃんはわたしの憧れです。


 そんなわたしは今日、運命的な再会を果たしました。

 小さいころによく遊んでいた唯一の友達である石川柊くんが代宮高校に、それもわたしと同じクラスに転校してきたのです。


 教室を後にしたわたしたちは梓ちゃんの家である、さの屋へと来ています。

 久しぶりの再会をした柊くんとみんなで教室で話をしていた影響もあってか、人が多く来るピークは過ぎていたようで人はまばらな状態となっていた。


「それじゃあ注文が決まったら呼んでねー」


 それだけを残して梓ちゃんは店の奥へと消えて行った。

 おそらく着替えに行ったのだと思う。


「それにしても驚いた。佐野さんの家って定食屋さんだったんだね」


 店内をきょろきょろと見渡しながら柊くんはそう言った。


「ああ、俺と紗輝は昔からここで厄介になってるんだ。定期的に店が忙しいときは手伝ったりとかもしてるんだぜ?」

「それは大変そうだね……」

「確かに大変なこともあるけど、結構楽しいんだよなこれが」

「……なんかそう言うの少しうらやましいかも」


 心なしか柊くんの雰囲気が少し落ち込んでいるように見えた。

 もしかして柊くんは何か悩んでいる事でもあるのかな……?

 少し考えてみると、結局柊くんと結びつくものは『音楽』しか浮かばなかった。

 あくまでわたしの推測だけど柊くんは何か音楽をやめることになった、あるいはやめたくなるような状態になったのかもしれない。


「まあそれはそれとして、今日は俺のおごりだ。好きなもの頼んでいいぜ」

「え? でもそれは悪いんじゃ……?」

「え!? いいの!?」


 柊くんが遠慮している傍らで綾乃ちゃんが桜田くんのセリフに食いついていた。


「……まあ、たまにはな。今日は全員分払ってやるよ」


 少し間があった感じがするけど、どうやら今日のお昼は桜田君のおごりということになったようだ。

 ……なんかすごく申し訳ない気がするから後でこっそり返しておこうかな。


「翔、さすがに俺も代金半分払うよ。たまにはそう言うのも悪くないしね」

「あはは……悪いな紗輝」

「みんなー、注文決まったー?」


 着替えを終えた梓ちゃんが戻ってきて、わたしたちはそれぞれ料理を注文するのであった。


~~


「そう言えば石川……いや、柊でいいか?」

「うん、名前はどっちでもいいよ」

「そっか、ところで柊は今どこに住んでるんだ?」


 みんなの注文した料理が運ばれて少しくらいしてから桜田くんは柊くんに問いを投げ掛けていた。


「今は親戚のおじさんのところに住まわせてもらってる。たぶん商店街の楽器屋だからすぐにわかると思うよ」

「商店街の楽器屋……あのおっきいお店?」

「うん」

「へぇー、私未だにあの店に入ったことなんだ。なんか私が入れるような場所じゃない気がして」

「そんなことないよ。僕と千奈ちゃんは小さいころいろんな楽器を弾いて遊んでたから、気軽に見てみるといいよ」


 ちょっとうれしかった。

 柊くんがわたしとのことを覚えていてくれたことが。

 でも、勝手に弾いてて何度か怒られたこともあったっけ。


「そうなんだ。それじゃあ千奈ちゃんも何か楽器が弾けるの?」

「………」


 柊くんが言葉に詰まっていた。

 確かにわたしの音楽の才能は……自分でもわかるくらいになかったはずだ。


「……独特な音を出していた、かな」


 すごく気を使っているセリフだった。

 そう言わせている柊くんに少し申し訳なさを感じた。


「聞いてたら少し興味が出てきたよ! 今度行ってみるね!」

「うん。僕もバイトみたいな感じでいることが多いと思うからその時は気軽に声を掛けてね」

「え!? 柊くんあそこでバイトするの!?」


 楽器屋でバイトをするという柊くんの発言に対して咄嗟にそう答えてしまう。


「さすがに住まわせてもらっている身だから、少しくらいでも手伝えればと思ってね」

「そうなんだ……」

「実際楽器は好きだし、何より今の僕にはそれくらいしかできないから……」

「え?」


 少し寂しそうな表情を見せた柊くんだったけど、それも束の間で笑顔に戻っていた。


「いやなんでもないよ。っと、もうこんな時間か。申し訳ないんだけどこれから形式だけだけど面接に行ってくるね。今日はありがとう」

「ああ、また明日な」


 お礼を言って店内から出て行く柊くんの姿を見送り、再び柊くんの言っていたことを思い返してみる。

 きっと柊くんは何かが原因で音楽をやめたんだと思う。

 それが何かはわからないけれど、柊くんの話を聞く限り音楽が嫌いになったわけではなく、音楽から離れたくないようなそんな感じというべきだろうか。

 だからわたしは……


「みんな、聞いてほしいことがあるんだけどいいかな?」

「どうしたの千奈ちゃん?」

「柊くんのことなんだけど、できれば昔のことを聞かないようにしてほしいの。今の柊くんはなんだか音楽と向き合えていないというか、中身がなくなったように空っぽというか……小さいころに比べて無理しているような……えっと、ごめんなさい。うまく言葉にできなくて」

「わかってるよ。石川君が無理してるのは俺も何となく気づいてたから、俺は石川君が話すまで待ってみるよ」


 わたしの言葉に対して姫城くんがそう言ってくれた。

 それに続くように他のみんなも同じように賛同してくれていた。

 改めてわたしはみんなと出会えてよかったと思った。

 だから……


「ありがとう」


 みんなに向けてそう言った。


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