第20話「席替え」
金髪……?
もしかして不良少年!?
「黒板に名前を書いて自己紹介をしてくれ」
その少年はみなちゃんの言葉に従って黒板に近寄り、チョークで『石川 柊』と書いてこちらに向き直った。
「石川柊です。転校したばかりでわからないことも多いですがよろしくお願いいたします」
少し心配したが、どうやら中身は悪い人じゃなさそうだ。
それにしても石川柊って名前どっかで聞いたような気もするけど……。
「というわけで早速だが席替えから始めて行こうと思う。一旦石川は奥の席に座ってくれ。くじ引きの箱はここに置いておくから適当にやっていいぞ」
それだけ言って窓際にあるパイプ椅子に座っていた。
なんて投げやりなセリフなんだ……。
ともかく、席替えは少し楽しみだ。
「それじゃあみんな順にくじ引き引いていこう!」
学級委員らしく自分から宣言する。
すると周りも同じように席替えムードとなり、にぎわい始めていた。
くじ引きの箱にはクラスの人数分の数字が書かれているようだったため、姫城君が黒板に席を書いて適当な番号を振っていった。
それに対応した席が自分の席となる仕組みだ。
席替え、姫城君の近くだといいな。
そう思いながらくじを引く。
1番だった。
「わーい! 一番だー」
「子供かお前は……」
桜田君にそう言われながらも1番の席を探す。
どうやら窓際の後ろから二番目の席のようだ。
自分の机を持ってその場所に置く。
「あ! あたし綾乃ちゃんの前の席だー」
「俺は梓の隣の席か」
どうやら他の人たちもくじを引き終えたようで机を移動している。
「金森さん」
机を持った姫城君が私の隣に来ていた。
「もしかして姫城君の席って私の隣!?」
「うん。これからもよろしくね」
「はっはっは。高垣は金森の後ろらしいな」
「千奈ちゃんまで!? やったー!」
丁度机を運び終えていた千奈ちゃんだったが、その顔は何かを考えているようだった。
「あれ? 千奈ちゃんは特に気にしてなかった、かな?」
「……え? あ、ううん。ちょっと考え事してただけだよ。わたしも綾乃ちゃんたちと近い席で嬉しいよ」
よかった。
ちょっとだけ不安になっちゃった。
安堵していると、千奈ちゃんの隣に机を運んできた人物がいる。
先ほど自己紹介をしていた石川君だった。
「石川君そこの席? 私は金森綾乃。よろしくね!」
「あ、うん。さっきも自己紹介したけど石川柊です。よろしく」
私に続くように姫城君、桜田君、梓ちゃんが自己紹介をしていった。
だが、千奈ちゃんだけはボーっと石川君の方を見ているだけだった。
「ねぇ千奈ちゃ……」
「……柊くん?」
千奈ちゃんの発言により、私の言葉は停止していた。
なんというか千奈ちゃんの石川君の呼び方は親しいようなそんな感じだったからだ。
「違ってた申し訳ないんだけど、わたしだよ。千奈……だよ?」
「……もしかしてって思ってたけど、本当に千奈ちゃんだったんだね!」
「……うん!」
「前にあった時と、なんていうか……変わってたからわからなかったよ」
状況がつかめない私だったが、ふと夏休み最後の千奈ちゃんの話を思い出した。
そうか、この人が千奈ちゃんと遊んでいた男の子なのだろう。
~~
少ししてクラス全員の席替えが終わり、丁度授業が終わって放課後となった。
本日は始業式ということもあり、始業式とHRのみだったからだ。
放課後になった途端、千奈ちゃんと石川君の周りには人だかりができていた。
しばらくして落ち着いたようで教室に残ったのは私たちいつものメンバーと石川君だけとなっていた。
「まさかお前ら二人が知り合いだったとはなー」
「あはは、わたしも会えるとは思わなかったから驚いてるの」
「千奈ちゃんも前に比べて変わってたからびっくりしたよ」
「柊くんもなんていうか、少し変わったような気がする」
心なしか、石川君と話す千奈ちゃんはかなり明るく感じる。
なんか少し悔しい。
「あ、そうだ。柊くんは今でも音楽はやってるの?」
千奈ちゃんのそのセリフに石川君はビクッと身体を震わせた。
「……っ! 思い出した。もしかして君は天才ピアニストの石川柊君じゃないか?」
「え? 紗輝、どういうこと?」
「小学生の頃から大人顔負けの音楽センスを持ち、少なくとも俺の知る限りでは出場したピアノコンクールですべて1番になるほどの実力を持っていたすごい人だよ」
それを聞いて夏休み中に偶然目に留まったピアノコンクールを思い出す。
そうか、あれはまぎれもなく石川君だった。
……石川君ってすごい人だったんだなぁ。
ただ、姫城君の『実力を持っていた』という発言は少し気になるが……。
「そんなすごい奴だったのか……」
「うん! 柊くんはピアノだけじゃなくていろんな楽器を上手に弾けるんだよ!」
楽しそうに話す千奈ちゃんの傍ら、石川君はどうにも浮かないような顔をしていた。
「ごめん。音楽はもうやってないんだ」
その言葉で辺りは静まり返った。
微かに窓から入ってくる風の音だけが残る。
「とりあえず、昼食にみんなで行かない? いい時間だしさ」
少ししてからこの状況を姫城君が打開するように発言していた。
確かにもう昼時でいい時間だった。
みんなその言葉に賛成のようで、私たちは鞄を持って教室を後にするのだった。




