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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第19話「二学期の始まりと転校生」


 8月最後の週、月曜日の朝。

 私はワイシャツを着てスカートを履き、ネクタイを締めていた。

 長かった夏休みが終わり、今日は学校の登校日です。

 着替えを終え、自分の部屋からリビングへと向かう。

 リビングにはすでにキッチンで料理を作っているお母さんと新聞を読んでいるお父さんがいた。


「あら? 今日はやけに早くない?」


 お母さんが私に気づいたようで、そう言葉をかけてくる。

 確かにお母さんの言うとおり、いつもより時間が1時間ほど早い。


「今日は少し早めに出て友達のところに寄ってから学校に行くんだー」


 その発言にお父さんはビクッと体を震わせていた。


「ま、まさかその友達って男じゃないだろうな!?」

「え? 女の子だけど?」

「そ、そうか。よかった」


 お父さんは何を心配しているのだろうか?

 ともあれ、早々と食事を済ませてもう一度自分の部屋へと戻り、自分の鞄と化粧品の入ったメイクボックスを持って家を後にした。

 商店街の中の小道に入り、曲がり角にある千奈ちゃんの家の本屋の裏手に入る。

 そこからチャイムを鳴らし、しばらく待つと千奈ちゃんのお母さんが出てきたようだ。


「おはようございます!」

「あら、おはよう。千奈に話は聞いてるよ。さ、あがってあがって」

「ありがとうございます」


 家の中の客室に招待され、少し待つと千奈ちゃんが出てくる。


「あ、綾乃ちゃん。おはよう」

「おはよう! 早速始めていくからね! まずは……」


 夏休み最後の方と同じようにナチュラルメイクであまり濃くならず、ありのままの顔立ちの良さを引き出していく。

 少し時間が経ち、メイクが完成したところで次は髪型を変えていく。

 まずはあらかじめ用意していたヘアゴムで後ろ髪を上下に分けて少し低めの位置で結ぶ。

 そのあとに毛先をねじっていき、結び目にぐるっと巻き付け、結び目でピン留めをしてから全体的に整えて……。


「できたっ! はい、鏡」


 千奈ちゃんに手鏡を渡し、後ろ髪を別の鏡で映しだす。

 今回千奈ちゃんに施した髪型はお団子ハーフアップ。

 少し低めにお団子を作ったのは落ち着いた雰囲気でかわいく仕上げたためだ。

 我ながら上手にできたと思う。


「な、なんか自分じゃないみたい」

「かわいいよ千奈ちゃん!」


 一通り終わったので時計を見てみると学校へ向かうにはいい時間帯だった。

 私と千奈ちゃんは鞄を持って部屋から出る。

 すると千奈ちゃんのお母さんと鉢合わせた。


「お邪魔しました! 行ってきます!」

「お母さん行ってきます!」


 それだけ伝えて私たちは玄関を出るのだった。


「千奈……よね?」


 千奈の母親は自分の娘の変化を見て驚きを隠せなかったのだった。


~~


 高垣家を後にした私と千奈ちゃんは並木道の通学路を歩いていた。

 夏休みが終わったとはいえ、まだ少し暑さが残っているが久しぶりの登校の間隔で学校に行くのが少し楽しみだった。


「あ! 綾乃ちゃーん」


 通学路の行く先で聞き覚えのある私を呼ぶ声がした。

 よく見てみると、梓ちゃんと二人の人影、おそらく姫城君と桜田君だろう。

 早足で3人の元へと近づく。


「おはようみんな!」

「おう、おはよう……って後ろにいるのは高垣か!?」

「あ、あはは……おはようみんな」


 梓ちゃんは一度メイク後の姿を見ている影響かあまり驚きはなかったようだけど、桜田君はとても驚いているようだった。

 なんだか私まで嬉しい。

 ふと、姫城君の方に目線を向ける。

 どうやら姫城君も少し驚いていたような表情を見せていたようだ。

 すると姫城君の目線がこちらへ向き、一瞬目が合う。

 不意を突かれたことで過剰に目線を背けてしまうが、もう一度見ると少し笑っているような表情へと変わっていた。

 なんだかとても恥ずかしい……。

 それに夏休み前とは比べ物にならないくらい鼓動が早い。

 自分自身顔が赤くなっているのがわかるくらいに。


「金森さん? 顔赤いけど大丈夫?」

「だ、大丈夫だよ!」


 少し近づこうとする姫城君を制止させる。

 そんな傍らで他の3人は会話を続けていた。


「これは綾乃ちゃんがやったんだよー」

「ど、どうかな」


 少し不安そうに千奈ちゃんはそう言う。


「結構似合ってると思うぞ? なあ紗輝」

「うん。すごくいいと思うよ」


 それを聞いて千奈ちゃんの表情が綻ぶ。


「金森がやったのか……それにしても女って化粧でだいぶ変わるもんだな……」

「そうだよ。だからメイクだけの人に引っかかったりしちゃだめだよ?」


 3人のおかげでどうにか落ち着くことができたが、その反面少し辛さを感じる。

 このまま姫城君と一緒にいたら私はどうなるんだろう。

 そんな不安を考えながら学校へと向かうのだった。


~~


「おーっす、おはよー」


 教室に入るや否や、桜田君が挨拶をする。

 それに対して他のクラスメイトも『おはよー』と返事を返している。


「桜田、姫城。夏休み何してた? 俺はさー」

「ん? な、なあお前ら、誰だあの子!?」


 クラスメイトの男子の一人が千奈ちゃんを指差してそう言っていた。


「誰って、高垣だよ? 俺もびっくりしたけどさー」


 桜田君が名前を言った瞬間、クラス中が騒がしくなった。


『う、ウソだろ!? あれが高垣か!?』

『普段顔を隠してたりしてたからわからなかったけどめちゃくちゃかわいいじゃん!!』

『俺、声かけてみようかな』


 などといい意味でクラス中の話題になっていた。


「おいおいお前ら。もう予鈴はなってるぞ? 今から始業式だから廊下に並べ―」


 いつの間にかみなちゃんが教室の扉の前に立っていた。

 どうやら予鈴が鳴っていたようで、夏休み明け最初は体育館で始業式が行われるというスケジュールらしい。

 私を含めたクラスのみんなは速やかに廊下に並び、体育館へ向かうのだった。


~~


 始業式が終わって教室へ戻り、みなちゃんが戻ってくるまで千奈ちゃんは質問攻めにされていた。

 それに対して千奈ちゃんは少し戸惑いながらも頑張って接しているようだった。


「なんていうか、少し前じゃ考えられなかった光景だよな」

「それは言えてるかもしれないねー」

「確かに高垣さんはちょっと変わったね。少し前向きになったようで安心したよ。これも金森さんのおかげかな」

「……そんなことないよ」


 確かに千奈ちゃんは最初に比べると他人との会話もぎこちなくはあるけれどできている。

 でも私は千奈ちゃんにあくまできっかけを与えただけなんだ。

 だからこそ変わったのは私のおかげじゃなくて、千奈ちゃん自身だ。


「おーい。お前ら席に着けー」


 準備を終えて戻って来たであろうみなちゃんは束になったプリントを片手に持ってそう言った。

 みなちゃんも教壇へ立つと話を始める。


「みんな久しぶりだな。夏休み明けで休みボケが抜けてない人間がいくらかいるだろうが、気を抜かずに生活を送るようにな」


 それだけ話し終えると少しだけ間を置いて再度話し始めた。


「それと、今日はこのクラスに転校生が来ている。入ってきていいぞ」


 それを聞いた瞬間、クラス内は途端に騒がしくなった。

 朝も同じような光景を見たような気もするけど……。

 それにしても転校生ってどんな人なんだろう?

 そう考えているとクラスの中に一人の男子が入ってきた。

 姫城君や桜田君と比べると少し小柄で、まだ少し少年のような顔立ちが残る金髪の男子だった。


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