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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第16話「美鳴飛の過去」


―――


 私が学生だった頃の話だ。


 当時の私はお嬢様校と呼ばれている聖鳥学園に通っていた。

 自分で言うのもあれだが成績も良く、実家が道場ということもありその類のスポーツはずば抜けて得意だった。

 実家の道場はジャンルを問わずそれぞれの戦い方を学んでいたゆえに私は強くなっていった。


 どんな人間とも戦えるほどに。


 その影響だからだろうか、私の周りには常に取り巻きがいた。

 互いに慕い、助け合うといういい奴らだ。

 そんな取り巻き達を私は信用していた。


 そんなある日のことだ。

 放課後になり、その取り巻き達と別れて家に帰る途中、私は複数人の人間に囲まれた。

 それに対し私は一切も臆することなく、全員を叩きのめした。

 そして帰ろうとした矢先だ。

 今まで感じたことのない痛みが腹部を襲った。

 触れてみると嫌な感触が手に広がる。


 出血していた。


 ナイフで刺されたのだ。

 私は振り返り、犯人の顔を確認した。

 ……それは先ほど別れたはずの取り巻きの一人だった。

 それがわかった瞬間、私は意識を失った。


 その刹那、視界には笑みを浮かべるその取り巻きの姿が見えた。


 次に目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。

 話によると三日間寝たきりだったという。

 すぐさま私は犯人である取り巻きの一人のことを説明した。


 ……だが、そいつは捕まるどころか停学にすらならなかった。

 証拠となるものが何もなかったのだ。


 数日が経ち、私は退院することができた。

 元々傷の治りが早いことが幸いしたのだ。

 学校に戻ると、何事もなかったかのように取り巻き達が近づいてきた。

 あんなことがあったばかりだ。

 私は取り巻き達を無視して素通りした。


 放課後になり、無視をし続けている影響か段々と私の元から離れて行った。


 ……ただ一人を除いて。


「……お前!」

「どう? 気分は?」


 白々しくそう質問を投げかけてくる。


「ふざけるなッ! 私がお前たちと築き上げてきたもの……友情はなんだったんだ!!」

「フフ、ふははは!!」


 私の言葉を聞いてからか高らかに笑い出していた。


「何? 友情? ははっ! 自分で言ってて恥ずかしくないの? まあそうだよね。私は取り巻きの一人であなたととーっても仲がよかったもんね? でもね、あなたは一つだけ勘違いしてるよ」

「勘違い……?」

「あんたが言う友情? だっけ、そんな綺麗事は最初から存在してなかったんだよ。あんたに近づいたのだってすべて計画。周りの取り巻きも私が集めた駒だったしね」


 ……他の取り巻きもグルだったってことか。


「その計画の唯一の失敗はあんたが生きてるってことだけどね!」


 こいつは最初から私を殺すつもりで私に近づいたのか?

 いったいなぜ、何のために……。


「まあいいわ。証拠は全部隠滅したし、私はもうこの学園に留まるつもりもないから。あ、でもあなたの友達だと思ってる取り巻き達は残るから。残りの学園生活、そうやってひとりで生きてなさい」


 そう言い残して教室から出て行った。

 教室に残された私はしばらくそこから一歩も動けなかった。


 ……その通りだ。


 友情なんてものは最初から存在しなかったんだ。


 すべては偽りなのだ。


―――


「それから私は三年の時に家庭の都合でこっちの方の星来高校へと転校したんだ。これが1、2年編だ」


 ……残酷だ。

 友達だと思っていた人物に裏切られ、そのほかの人たちも全員共犯者だったなんて……。


「昔の話だ。それにお前はそんなこと気にしなくてもいいんだ」


 そんなことはできない。

 おそらく私もここまではひどくないけど似たような体験をしているからだろう。

 だからか咄嗟に言葉を発していた。


「じゃあ、転校した先で本当の友達を作れば……」

「ふふっ」

「え、なんで笑ってるの?」


 なんか変なこと言ったかな私。


「いやすまん。唯一私がこの話をしたやつにも全く同じようなこと言われてな」

「……その人とは?」

「うん。今でも大切な友人だよ」


 そう言うみなちゃんの表情は嬉しそうで、でも少し寂しそうな表情だった。


「お、見えてきたな」


 その言葉を聞いて正面を見てみると、そこは広い畑だった。

 パッと見ただけでもかなりの数の農作物が栽培されている。


「わぁーすごい……」

「それじゃあ少し待っててくれ」


 みなちゃんは車を降り、農家の男性に話しかけている。

 その男性はみなちゃんとそう年が変わらないようでかなりの美形だった。

 もしかしてみなちゃんあの人のことが……!?

 という想像は早くも打ち砕かれ、家の方から若い女性が段ボールを抱えて出てきていた。

 そしてなぜか会話の合間合間にその男性が嘔吐しており、その場所から虹がかかっていた。

 みなちゃんは女性から受け取ったダンボールを抱えてこちらにもどってくる。

 トランクに段ボールをすべて入れて運転席へ。


「あの人めちゃくちゃ吐いてたけど大丈夫なんですか?」

「あぁ、あいつは一個下の後輩で山本っていうんだが、学生時代の成績はトップクラス、おまけにスポーツ万能でイケメンだが昔から何か食ってないと落ち着かないが食べ物を吐き散らす癖を持っているんだ」


 なんて濃い癖を持っている人なんだ……。


「今日はこの後農作物の面倒を見るってことらしいから紹介はまた今度な」


 はたしてその日が来るのかわからないけど……。

 車のエンジンがかかり、発進し始める。

 私は先ほどのみなちゃんの話を思い出していた。


「そう言えば、なんで私に昔のこと教えてくれたの?」

「なんでって、聞きたいといったのはお前だろう?」

「でも、普通なら辛い過去はそっとしておいてほしいと思うものじゃないかな。それでも無理やりにでも聞いたんだったら私は……」

「なんだそんなことか。それはな今となっては些細なことだからだ。さっき言った通り大切な友人というものができたからな」


 みなちゃんは少し嬉しそうな顔をしてそう言った。


「それに、お前は少し私と似ている気がしたからな」

「え? それってどういう……」

「不器用ってことだ」

「不器用って……えぇ?」


 釈然としない回答をされて困惑する私。

 そんな会話をしながら私たちは学校へと戻るのだった。


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