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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第15話「夏休みの学校」


 7月の真ん中あたりに差し掛かり、待ちに待った夏休みが始まりました。

 朝だというのに日差しはとても強くとても暑い。

 一応ここは東北の地域ではあるけれど、たぶん都会人が言うほど涼しい環境ではないと思う。

 そんな中、私は学校の通学路を歩いていた。

 理由は学校へ行くためだ。

 もちろん服装も制服であり、いつも学校へ行く恰好をしている。

 さて、なんで私がわざわざ夏休みだというのに学校へと向かっているかというと……


―――


 それは昨日のこと。

 明日から夏休みということもあり、クラス内は皆浮かれていた。

 かく言う私も明日からのスケジュールを考えている。

 夏休みだからみんなでどっかに行きたいなーとか、一日中家でゴロゴロしたいなーとか、とにかくいろいろ考えていた。


「お前ら明日から夏休みだからと言って浮かれすぎだ」


 1学期最後のHRをするために教室へ来たみなちゃんがそう言いながら入ってきていた。

 それを見て各々自分の席へと戻ってゆく。

 皆が自分の席に座り終え、静かになったところでみなちゃんは話始めた。


「いよいよ明日から夏休みだが、絶対に問題を起こすようなことはするんじゃないぞ。夏休みだからと言って羽目を外して警察沙汰にでもなったら何より担任である私がめんどくさい」


 いや……それ先生が言っちゃダメでしょ……。


「だが不純異性交友はやってよし! 私はたしなむ程度に楽しませてもらうぞ」


 なんて真面目じゃない先生なんだ……。


「まあ冗談は置いといて、本題に入るぞ」


 今のは本当に冗談だったんだろうか?

 そう考えるが、真面目に夏休みの過ごし方や宿題などの話をしているところを見ると結局どっちかわからない。

 なんというか今更だけどよくわからない変な先生だ。


「最後に大したことじゃないが、夏休み誰か学校に来て私の仕事を手伝ってくれ。言っちゃなんだが雑用なんだが私一人ではさすがに効率が悪くてな。誰か一人でいいぞ」


 さすがにそれで挙手する人はいない気がする。

 案の定皆手を挙げていなかった。

 というより夏休み前日に言うのもどうかと思うけど。


「仕方ない……それじゃ綾乃、一緒に頑張ろうか」

「ちょっと待ってください!? なんで私が選ばれるんですか!?」

「ん? 私と一番仲がいい関係だからだな」

「それは……否定はできないですけど」

「じゃあよろしくな。夏野菜やるから」

「どうせきゅうりじゃないですか!!」


―――


 ……などと半強制的に決まってしまったためである。

 なんというか理不尽な決まり方してるなぁ。

 まあ、みなちゃんが私のことを頼りにしてくれているというか、信用してくれているってことなのかな。

 そう思うようにしよう。


「……あれ?」


 通学路の並木道の途中、見知った顔があるのに気づく。


「姫城君?」


 どうしたんだろう、制服を着ているけど。

 学校に用事かな?

 でも、夏休みだというのにすきな人に一番に会えるのは嬉しい。


「おはよう金森さん」

「うん。おはよう。姫城君はどうしたの? 私は昨日のHRで言われたようにみなちゃんの手伝いに行く途中だけど」

「えっと、俺も一緒に学校に行こうかなって」

「? それじゃあ一緒にいこっか!」


 何やらそっぽを向きながらそう言った姫城君と共に学校へ向かう。

 偶然かもしれないけど、こういう時間ってとても幸せだ。


「金森さんは夏休みの予定って何か立ててたりする?」

「ううん。でも、前半は毎日じゃないけど学校で手伝いがあるから後半はみんなでどっかに行きたいね!」

「あー……ごめん。後半外せない予定がいっぱいあるんだ」

「……そっか。なら仕方ないよね」


 姫城君と会えないのは寂しいけど、予定があるなら仕方ない。


「その代わりと言ってはなんだけど、今週末に神社で花火大会があるんだけど行かない? ……みんなで」

「行きたい!!」

「うん。それじゃあ後で他のメンバーにも連絡しておくね」


 夏祭りかー。

 よく一人で食べ歩きしてたなぁ。

 でも今回は一人じゃない。

 とても楽しみだ。


 そのような会話をしているとあっという間に学校の校門前にたどり着いていた。


「……あれ?」

「どうしたの?」

「遠くから何か近づいてくる音がする」


 これは……車のエンジン音だろうか。

 普通の車にしては少し特殊な音がするような気がする。

 しばらく耳を澄ましていると、予想した通り車が近づいてきていた。

 赤いカラーの2ドアの車。

 俗に言うスポーツカーというやつだろうか。

 その車が目の前、校門を通り過ぎて行った。

 なんというか……


「かっこいい!! 姫城君すごいよ! 赤いよ!」

「………」


 はしゃいでいる私とは裏腹に落ち着いた様子の姫城君。

 男の子って車好きそうなイメージがあるけど、姫城君はそうじゃないのかな。


「す、すごい車だよあれ!! 近くで見てみたいと思ってたけどまさか学校関係者の人で乗ってる人がいるなんて驚いたよ!」


 少しの時間を置いて姫城君は子供のようにはしゃぎだしていた。


「ちょっと見に行こう!」


 そう言うや否や走り出すのだった。


 学校の駐車場スペースを確認すると、先ほどの赤い車が停車しており、運転席の扉が開かれた。

 そしてその中から出てきたのはみなちゃんだった。


「みなちゃん!?」

「お? 綾乃はわかるが、なんで姫城も一緒なんだ?」

「いや、それより先生……なんでこんないい車乗ってるんですか」

「なんでって、気に入ったから? それにしてもお前、やけに食いついてくるな」


 言われてみれば確かに。


「姫城君、車に詳しいの?」

「うん。少しだけどね」

「そうなんだ。ちなみにこの車なんていうの?」

「ホンダから出ているNSXっていう車だよ。国産のスポーツカーでこのモデルは最近出たもので価格は2000万円くらいするんだ」

「2000万円!?」


 みなちゃん実はかなりお金持ち……?


「さすがに見栄を張って買ったとかではないですよね?」

「あぁ。もちろん一括支払いで購入したぞ」


 一括払いって2000万円をポンと支払ったってことだよね……。

 またもやみなちゃんの謎が増えるのだった。


「まあ、それはそうと早速仕事するかー」


 こうしてみなちゃんの仕事を手伝うこととなった。


~~


 しばらくして昼時。

 今日消化する仕事(今日は主に倉庫になりつつある空き教室の掃除だけど)がある程度片付いたころ、姫城君のポケットの方から着信音が聞こえてきた。


「ちょっと出てくるね」


 そう言って電話に出ながら教室を出て行った。 


「そう言えばなんでお前ら朝二人で登校してきたんだ?」


 ゴンッ!!


「いったぁ!!」


 みなちゃんの唐突な質問に対して過剰反応してしまい、どういう原理かロッカーに頭をぶつけていた。

 めちゃくちゃ痛い……。


「……さすがに反応しすぎだろ。というかよく近場のロッカーに頭ぶつけられたな」

「うぅ……別に大したことはないんだけど偶然会ったから」

「ほうほう……偶然ねぇ」


 何やらみなちゃんはニヤニヤとしている気がする。

 そう思っていると姫城君がもどってきた。


「ごめん、梓の家の人出が足りないみたいだから手伝ってくる。いいですか先生」

「あぁ。元々二人で事足りることだったからな。でも感謝はしてるぞ。お前にも後で夏野菜を分けてやろう」

「きゅうりの未来しか見えないです……。それじゃあ先に帰ります。お疲れ様です」

「またねー」


 姫城君は去って行った。


「さて、それじゃあ私たちもちょっと外へ出るか」

「え? ここの掃除はもういいんですか?」

「とりあえずはな。荷物の整理は明日から始めればいいだろう」

「じゃあ外に出るってどういうこと?」

「ちょっと夏野菜を取りにな」


 みなちゃんは白衣のポケットから車のカギを取り出して指先でくるくると回していた。

 ということはあの赤い車に乗れるのか!

 なんかちょっと楽しみだった。


~~


 思っていた通り私はみなちゃんの赤い車の助手席に乗って道路を走っていた。

 普段乗る軽自動車やハイブリットカーに比べて走りはじめからスピードが速い。

 最初は驚いたけど、少し乗っているうちに慣れてきてむしろ楽しくなってきた。


「なんか悪いな。わざわざ手伝わさせて」

「本当にそう思ってます?」

「まあな。さすがに夏休みに一人で作業するのも気が滅入ってしまうから話し相手が欲しかったんだ」


 先生の仕事がどんなものかはわかってないけど、確かに一人よりは誰かいたほうが効率が良かったりするかもしれない。

 私も中学時代部活で練習を一人でやってたけど、途中から後輩と走ってたこともあったし。


「まあ礼と言ってはなんだが夏野菜の他になんか話してやるぞ」

「なんか、ですか」


 とはいっても急には思いつかないけど。


「それじゃあみなちゃんの高校生の時の話が聞きたい」


 パッと浮かんだのは私たちと同じ年の時何をしていたんだろうということだった。


「高校時代か……だとすると1、2年編と3年編があるな」


 シリーズ化されてるの!?


「じゃあとりあえず1、2年編で……」

「いいだろう。少し重い話になるが大丈夫か?」

「え? うん」


 みなちゃんに対して重い話っていうのが何とも想像できない。

 そんな想像をしながらみなちゃんは話始めるのだった。

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