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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第14話「夏の始まりと私の恋心」


 7月になりました。

 6月に比べて気温が上がり、夏服だというのに暑い。

 いつも通り通学路を歩いていると、商店街の方に見知った顔を見つけた。

 急いで追いかけて声を掛ける。


「おはよー千奈ちゃん」

「あ、綾乃ちゃん、おはよう」

「今日も暑いねー。この時期になるとプールの授業が待ち遠しくなるよ」

「あはは、綾乃ちゃんらしいね」


 そんな他愛もない会話をしながら再び通学路を歩きはじめる。

 しばらく歩き、ふと立ち止まる。

 そこは私が入学式の時に迷ってしまった場所だった。

 少し前までは桜が咲いていた並木道だったが、今は緑色の葉を見せていた。

 今思うと、ここから学校まではそう遠くもなくまっすぐ進めばいいだけの話だったんだなと思う。

 でも、そのおかげで私はあの男の子に出会うことができたんだ。

 

「綾乃ちゃーんおはよー」


 少し緩やかな声が聞こえる。

 振り返るとそこには梓ちゃんに桜田君にそして姫城君だ。


「おはよう。金森さん、高垣さん」

「お、おはよう」

「みんなおはよう!」


 代宮高校に入学してから、私の生活は変わりました。

 まずは友達ができたこと。

 中学時代に気の許せるような友達がいなかったから今このときがとても幸福だ。

 そしてもう一つ、新たな感情が芽生えました。

 私はこの男の子、姫城君に恋をした。

 この感情は初めてで、どうすればいいかもよくわからない。

 だからいつも通りに……


「あ、ちょっとじっとしててね」


 姫城君が私の方に一歩近づき、頭に手を伸ばす。

 その影響もあってか姫城君との距離感がとても近くなる。


「はい。葉っぱついてたよ」


 私の頭からとった葉っぱを片手に姫城君が目を合わせる。

 距離が近いせいだろうか、私の心拍数があがっているのが自分でもわかる。

 少し目を合わせた後、二人して目を背けていた。

 どうやら姫城君に対して緊張しているみたいだ。


「うぃーっす……ふぁ」


 私の状況を特に気にしない様子で気の抜けた声と共に桜田君は挨拶を終えてすぐに大きな欠伸をしていた。


「さ、桜田君は寝不足みたいだね?」

「あぁ、最近ちょっと徹夜しててな」

「……勉強?」

「いや、千奈ちゃん。翔はずっとゲームやってるだけだから」

「寝よう寝ようとは思ってるんだがな、つい続きが気になって気づいたら夜が明けてるんだよなこれが」

「……それでいつも起こすのに苦労してるんだけどー?」


 梓ちゃんと千奈ちゃんと桜田君の三人はそんな会話をしながら、私と姫城君は話すタイミングが掴めないまま学校へと向かうのだった。


~~


 時間は過ぎて昼休み。

 私と梓ちゃんと千奈ちゃんの三人は昼食を購買で調達したのちに人が少ない特別教室棟の5階の屋上に続く階段に腰かけていた。

 廊下の窓が開いており、涼しい風が入ってくる。


「ここは涼しくていいね」

「静かだし風が吹き抜けるからねー」

「………」


 ……心なしか千奈ちゃんがずっと私のことを無言で見ている気がする。

 気のせいかな。


「千奈ちゃん? どうかしたの?」

「……え? あ、ごめん。ちょっと気になることがあって」

「気になること? 私がらみで?」

「う、うん。でも聞いていいことなのかどうかわからなくて……」

「なんかよくわからないけどあたしもそれ気になるー」

「うん? なんかよくわからないけど遠慮せずに何でも聞いていいよ?」


 それにしても千奈ちゃんが私に対して気になってることってなんだろうか?

 現状はいつも通り大量のパンを食べているだけなんだけど……


「もしかして食事量に対するダイエット方法とかかな?」

「え? 特に何もやってないけど……」

「そ、そうじゃなくて」

「そっか……その情報が欲しいのはあたしだけか」

「ち、違くて、綾乃ちゃん、単刀直入に聞くね」

「う、うん?」

「綾乃ちゃんって姫城君のこと好きだよね?」


 一瞬私の思考が止まった。

 言い当てられたからというのもあるが、特に行動に表してもいない(つもり)だったはずだけど……。


「そうなのかなー? 私にはいつも通りの綾乃ちゃんにみえ……」

「えっと!? いや、あの! その……」


 自分が取り乱して、徐々に自分の顔が火照っていくのがわかる。


「この反応は本当だー!!」

「な、なななな、なんでわかったの!?」

「えっと、なんというか見てればわかるというか……」


 そんなに私の行動って表に出ているの!?


「ということは梓ちゃんも!?」

「え? あー、うん。し、知ってた……よ?」


 梓ちゃんは本当に知っていたのだろうか……?

 というより、なにこの状況。

 めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……。


「ところで綾乃ちゃんはいつから紗輝が好きなのー?」


 梓ちゃんがあからさまにニヤニヤしながら聞いてきている……。


「そ、それはわたしも興味があるかも」


 千奈ちゃんもキラキラした目で詰め寄ってきた!?

 じりじりとにじり寄ってくる二人にあらがえず、私は先日のことを話すのだった。

 私はおそらく最初に出会ったとき、あの並木道で出会ったときにはもう好きだったことを。

 それは揺るぎない真実だ。


「まあ、そういうことだよ」

「「………」」


 話し終った途端、二人は黙っていた。

 ……恥ずかしいからできれば何か話してほしいんだけど。


「それでそれで!」

「い、今話したことで全部だよ……それにもう恥ずかしいから今日はここまでにしよう……」


 さらに話を続けようとする二人だが、これ以上は私の精神が持つかわからないので止めた。


「友達にこんなことを告白するのは恥ずかしいものだね……」

「その告白を紗輝にすればいいんじゃないかな?」

「無理無理無理!! 絶対無理!!」

(いけると思うけど……)


 綾乃の言葉に対して密かにそう思う千奈であった。


~~


「えー、そんなわけで来週から期末テストあるからお前ら本気で頑張れよー」


 帰りのホームルーム。

 みなちゃん先生はそれだけ言って教室を後にしていた。


「期末……テスト!?」


 そんな時期だったのか……全く気付かなかった……。

 教室の大半の生徒もそんな感じのようであたふたしているのが目に見えている。


「あ、綾乃ちゃんたち今回も勉強会する?」

「千奈ちゃん……気持ちは嬉しいけどやっぱり自分の力でどうにかしないと……」

「あ、言い忘れてたが、今回テストで赤点取ったやつはもれなく夏休み前半返上で補習プラス追試だから覚悟しろよー」

「お願いします千奈ちゃん先生!!」


 みなちゃん先生が戻ってきて放ったセリフはそのクラスの大半の生徒を焚き付けた。

 私と梓ちゃんは反射的に起立して千奈ちゃんに頭を下げており、桜田君はなぜか土下座をしていた。

 おそらく皆の意思は同じ……


 『夏休み前半を獲得する為』という信念のためであった。


~~


 それから数日私たちは千奈ちゃんと姫城君に勉強を教わった。

 そして猛勉強の末、テストが終わり、結果発表が張り出される。

 だが生徒たちが結果のところに詰め寄っている影響で全く見えない。

 ある程度見える位置に移動し、1から順に確認していく。


 『1.有馬夏妃』


 最初に見えたのはその文字だった。


「な、夏妃ちゃんが1位!?」

「有馬さんは中学の頃から常にトップをキープしてたからね。彼女が2番目以降に名前が載ったところを見たことはないかも」

「わっ! 姫城君か」


 いつの間にか隣にいた姫城君にびっくりしながら改めて夏妃ちゃんのすごさを知った。


「私……もしかしてかなりの強敵に宣戦布告してしまったのでは……?」

「……? 何のこと?」

「い、いや! なんでもないよ! それよりほら! 千奈ちゃんが4位! 姫城君も13位だよ!」

「あはは……それより、今回はちゃんと勉強した結果がみんなでてるみたいだよ」


 え?と思いながらずらっと見ていくと、桜田君に梓ちゃん、私の名前まで書かれていた。

 順位はそれぞれ桜田君が69位、梓ちゃんが84位、私が89位だった。


「私、発表欄に名前乗ったのはじめてだよ!!」

「頑張ってたもんね。結果出せてよかったね!」


 満面の笑みを浮かべる。 

 つられて私も笑顔になった。

 こうやって姫城君の隣でいつまでもこんな顔を見ていられたらと思う綾乃だった。



 その光景を見ていた夏妃。


「強敵はあなたの方よ。綾乃」


 誰にも聞こえないような声量で微かにそれだけ呟きその場を後にするのだった。



 期末テストが終わり、いよいよ数日後『夏休み』が始まる。


どうも月見です。

最近は気温が高くなったり低くなったりして大変ですね。

今回のお話も終わり、次回からは夏休みのお話となります。

最近はゲームやアニメマンガ、TRPGなどやりたいことが多くて中々時間が取れないですが、

挫けずにお話を書ければなと思っております。

また、登場キャラクターの詳細とかを提示する機会がなかったので、

いずれ書こうかなと思います。


今までのお話を読んでいただいている方がいらっしゃったらそれはとても励みになります。

今後ともよろしくお願いいたします。

今回はこれくらいで〆させていただきます。

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