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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第13話「夢の中と私の決意」


 ゆらゆらと揺れている感覚。

 心地いいリズムを感じる。

 なんだか少し懐かしい気もする。


―――


 目を開けると、私は公園のベンチに座っていた。

 周りでは子供たちがはしゃいでおり、様々なことをして遊んでいる。

 そして私は気づく。

 これは夢だと。

 理由はいつもより目線が低い為である。

 これは私が小さいころ何度も見た夢。

 いつしか見ることがなくなっていたが、この夢に関する記憶は鮮明だ。

 私がベンチに座っていると、男の子が声を掛けてくる。


「きみ、こんなところで何をやってるの?」


 この頃の私は内気でみんなの輪に入るのが苦手で、一人ぼっちだった。

 友達はいなかったけど、自分の足で新しい発見をすることが楽しかった。

 だからか昔の私の趣味は散歩をすることだった。

 しばらく黙っていた私に続けるように男の子は会話を続ける。


「もしよかったらぼくといっしょにあそぼうよ」


 そう言って私の手を引いて駆けて行く。

 最初こそ戸惑ったが、遊び始めたことで徐々にその男の子に心を開いていった。


「ねぇ、なんでわたしにこえをかけてくれたの?」

「なんでって、きみがひとりでみんなをみてたからあそびたいのかなっておもって」


 その通りかもしれない。

 私は一人でいることが普通だったけど、本当はみんなと遊びたかった。 

 きっと友達が欲しかったんだ。


「そうなんだ……こえをかけてくれてありがとう」

「ううん。ぼくもきのうここにひっこしてきたばかりだったから」


 その男の子は私とは真逆で活発な子だった。

 私が早くうち解けることができたのもこの男の子の影響なのかもしれない。


「だからさ、よかったらぼくとともだちになってよ!」


 男の子は私の欲しかったものを簡単にくれた。


「い、いいの?」

「もちろん。ぼくもきみとあそんでたのしかったもん」

「えへへ……うれしいな」


 嬉しさと恥ずかしさが入り混じったようにそう答えた。


「わたし、ともだちができたのってはじめて」

「え? そうなの?」

「じぶんではなしかけるのってこわいから……」

「でも、じぶんのことちゃんといわないとわからないよ」

「……うん。わたしがんばってみる」


 それからしばらくの時間、私たちは遊んでいた。

 気づくと夕方になっており、辺りは夕暮れに染まっていた。


「あ! とうさん!」


 男の子が声を上げる。

 その先にはカメラを首にぶら下げている大人の人が立っていた。


「こんなところにいたのか。おや? この子は?」

「きょうともだちになったんだ」

「早速友達ができたのか。よし、それじゃ写真を撮ってあげよう。二人とも並んで」


 言われるがまま男の子と共に並ぶ。

 カシャリという音が聞こえ、写真のシャッターが下りたのがわかった。


「もうそろそろ帰る時間だし、今日はお開きにしような。君は一人で帰れるかい?」

「あ、わたしかえりみちわかんなかったんだ……」


 遊ぶのに夢中になりすぎて、自分が迷子だということを忘れていた。

 それほどに私はこの男の子と遊ぶのが楽しかったのだろう。


「え! それは困ったね……君、名前は?」

「あやの。かなもりあやのっていうの」

「あやのちゃんだね? えっと、どこから来たかはわかるかな?」

「しょうてんがいのほう」

「商店街か……道を知ってる人いないか探してくるからちょっと待っててね」


 そう言って男の子のお父さんは公園から出て行った。

 残された私たちは公園のベンチに座る。


「ごめんね。かえりみちわからなかったのにさそっちゃって」

「……ううん。うれしかったよ」

「そっか。じゃあとうさんがもどるまで……」


 その先はうとうとしてて声を聞き取ることができなかった。

 そしてそこで私は眠りに落ちて行った。


―――


 今思えば、あの夢が私の背中を押していたんだ。

 あの夢の中の男の子が私に勇気をくれていた。

 夢の中での出会いが私を変えてくれたんだ。


 それは私の想いを紡ぐための道標のように。


 そして気づいた。

 私はあの男の子のことがすきだったんだ。


 もしかしたら難しく考えていたのかもしれない。

 私の姫城君に抱いている感情はきっとあの男の子と同じ……


 恋愛感情で『すき』っていう感情だったんだ。


―――


「う、うーん……」


 目を開くと視界には白い天井が見えていた。


「あ! 綾乃ちゃんが目を覚ました!」


 声がした方に目線を向けると、そこにはいつもの梓ちゃん、千奈ちゃん、桜田君、そして姫城君がいた。


「あ、あのね。綾乃ちゃんはバスケットボールに当たって気絶しちゃって、それで姫城君がおぶって保健室に運んでくれたんだよ」

「姫城君が?」


 姫城君の方を見ると、少し照れくさいのか視線を横に向けていた。


「ありがとう。姫城君」


 嬉しさがこみあげて、私は笑顔になっていた。


「……やっと笑ったね」

「え?」

「最近何か落ち込んでたみたいだから心配だったんだけど、よかったよ」


 姫城君はずっと心配してくれてたんだ。

 いつも助けてくれたり心配はしてくれていたけど、今まで以上に嬉しい。

 多分それは私がやっと姫城君をすきだとわかったからなんだと思う。


 ぐぅぅぅ―――………。


 不意に私のお腹が音を鳴らしていた。

 そっか、気絶していてお昼食べ損ねてたんだった。


「あはは……」


 それを聞いたからか、途端にみんなが笑いだした。

 そしてその少し後に桜田君が話始める。


「よし、それじゃあ飯でも食いにどっか寄り道しようぜ!」

「うん。そだねー」


 窓の外を見るといつの間にか雨は上がっており、太陽が辺りを照らしていた。

 それはまるで今の私のような晴れ晴れとした天気だった。


 ……ん?

 ふと私は気づく。


「え? もう放課後なの?」

「う、うん。綾乃ちゃん3時間くらい寝てたみたいだから」


 つまり私は5限目と6限目を欠席してしまったわけか……。


「あ、これ綾乃ちゃんの鞄だよー」

「ありがとう」


 鞄を受け取り、ベッドから降りて立ち上がる。

 そして寄り道をして帰宅するのだった。 


~~


 翌日の放課後。

 特別教室棟の4階、図書室のある通りを早歩きで歩いていた。

 その視界の先にいる人物、有馬夏妃と話をするためだ。


「有馬さん!」


 声を掛けるとすっとこちらに振り返る。

 私に芽生えた感情、それはこの人には伝えないといけない気がした。


「何?」


 相変わらずの素っ気ない対応をされているが、それに構わず話始める。


「私も姫城君のことがすき……うまくは言えないけどこの気持ちだけは嘘じゃない。だから私は夏妃ちゃんと戦うよ。真正面から」

「……そう」


 そう言って再び歩き出す夏妃ちゃん。


「負けるつもりはないから覚悟しなさいよ、綾乃」


 夏妃ちゃんが初めて私のことを名前で呼んだ。


「……うん」


 私もそれだけを言葉にしてその場を後にするのだった。

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