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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第12話「宣戦布告、見つからない答え」


 ………。


 しばらく走り続け、私はゆっくりと減速して行く。

 ここは2階の教室棟と特別教室棟を繋ぐ渡り廊下だろう。

 頭が真っ白だったからか、あれからここまでの記憶が全くない。

 とりあえず教室へと戻ろうと思って前に進もうとするが、少しフラフラする気がする。


「あれ……?」


 壁を背にして座り込み、頭を伏せる。

 本当にどうしちゃったのだろう。

 あの光景を見てから明らかに変だ。

 頭じゃ何も考えられなくなってるし、考えるより先に逃げ出してしまった。


「……あなた、何やってるの?」


 ふと誰かが話しかけてきたようで、顔を上げる。

 そこにいたのは有馬さんだった。


「……有馬さん」

「急に廊下を走って行ったかと思ったらこんなところで顔を伏せてるとはね」

「あ……その、ごめんなさい。ちょっと立ちくらみというか」


 ……なぜ私は聞かれてもいないのにこんなことを話しているのだろうか。


「全く、仕方ないわね」

「えっ?」


 急に有馬さんが私の腕を自分の首の後ろに回し、抱える形で歩き出した。


「え? えぇ!? 有馬さん!?」

「いいから黙ってなさい。そして保健室で少し休憩してきなさい」


 今の言葉から察するに保健室に向かっているようだ。

 確か保健室は一階の下駄箱などがある東棟だったはず。


「ありがとう」


 そう呟いたが、有馬さんは特に何を言うわけでもなく私を保健室へと運ぶのだった。



 保健室には先生はおらず、人の気配も特になかった。

 ベッドに近づき有馬さんは私を降ろした。


「先生はいないみたいね。少し安静にしておきなさいよ」


 そう言って保健室から出て行こうとする有馬さん。


「ま、待って!」


 そんな有馬さんを私は呼び止めていた。


「……何?」


 呼び止めたはいいけど、特に何も考えていなかった……。

 自分の浅はかさを感じつつも少し考え、再び言葉を発する。


「有馬さんって……恋ってしたことある?」


 何を聞いているんだ私は!?

 こんなこと有馬さんが答えるわけが……


「……あるわよ」


 自分の言ったことを後悔していると、意外にも有馬さんがそう答えていた。

 そして続けるように言葉を発していた。


「私がすきなのは……姫城よ」


 それを聞いた瞬間、また頭の中が真っ白になっていた。

 有馬さんがすきなのが姫城君……。


「ここまで言えば、あなたに対する私の態度が何となくわかるでしょ」


 そっか、そういうことだったのか。

 私が姫城君と一緒にいたから有馬さんは……。


「で、でも、なんでそれを私に言ったの……?」

「宣戦布告よ。ただ、ここまで言ってもあなたは自分のことわかってないのね。この意味よく考えてみることね」

「え、それってどういう……」


 言い切る前に有馬さんは保健室を出て行ってしまった。

 ……私は何をわかっていないんだろう。

 保健室のベッドに座った状態から上半身を後ろに倒して寝転がる。

 しばらく考えても答えは見つからず、ガラッと保健室の扉が開かれる音が聞こえた。


「綾乃ちゃん?」

「梓ちゃん?」


 扉からは梓ちゃんと千奈ちゃん、桜田君に姫城君の姿があった。


「さっき有馬さんから保健室にいるって聞いて……あ、これ鞄ね」


 二つ持っている鞄の内、私の鞄を差し出してくる梓ちゃん。


「あはは……ちょっと立ちくらみしちゃったみたいで」


 鞄を受け取りながらそう答える。


「立ちくらみ? 常に元気人間の金森にしては珍しいな。まあ、どっちにしろこの雨じゃ遊ぶ話はなくなっちまったけどな」


 言われて外を見てみると、確かに数日前に比べて雨粒が大きく降水量が多い気がする。

 でも、今日は少し丁度良かったかもしれない。

 多分遊びに行っても今の気持ちが発散できるわけでもなかっただろうし。


「心配かけてごめんね。今日はもうかえろっか」

「うん。そだねー」


 梓から受け取った鞄を肩にかけ、立ち上がり保健室の扉から出て行く。


「………」


 姫城はその綾乃の光景に少し違和感を覚えていたのだった。


―――


 家に帰ると、私は自分の部屋で着替えを済ませてベッドに横たわる。

 そして、有馬さんの言った言葉の意味を考えていた。


『宣戦布告よ。ただ、ここまで言ってもあなたは自分のことわかってないのね。この意味よく考えてみることね』


 宣戦布告。

 おそらく有馬さんが私に対して感じているのは姫城君のことだろう。

 ただ、それに対して有馬さんが言った『あなたは自分のことわかってない』とはどういうことなのだろう。

 確かに入学当初、千奈ちゃんに絡んでいた二人の女子に対して初めて怒りの感情があった。

 きっと私は、私の知らないことがまだまだあるのだろう。


 そんなことを考えていると、一階の方からお母さんの声が聞こえる。

 どうやら気づいたころには夕飯の時間になっていたようだ。

 私は一言だけ返事をし、一階へと降りていくのだった。


 夕飯を食べ終わり、その後お風呂に入り、しばらくしてから自分の部屋へ戻る。

 自分の部屋に戻った私はしばらくボーっとしていた。

 いくら考えても私の思考は答えにたどり着かず、もやもやした気持ちを抱えながら布団に入るのだった。


~~


 翌日。

 布団から起き上がる。


「あれっ……」


 立ち上がるとフラッと視界が揺れる。

 それもそうか、昨日は一睡もできなかったから。

 結局寝ようとしたが、有馬さんの言葉が脳裏をぐるぐる回り、その言葉の意味を考えていた。

 だけど、どんなに考えても答えにたどり着くことはなかった。


「うぅ……少し頭が痛い」


 きっと徹夜の弊害だろう。

 初めて徹夜をしたが、これは結構つらい。

 でも学校を休むわけにはいかないため、準備を始める。


~~


 4限目の体育の時間。

 昨日降った雨が降ったりやんだりを繰り返していることから今日も体育館である。

 何とか授業中も寝ずに来たが、何かに集中しないと寝てしまいそうだった。


「綾乃ちゃんフラフラしてるけど大丈夫?」

「うん……なんとか」


 バレーで身体を動かしていることでどうにか寝ずに済んでいるが、寝不足の影響で身体の動きがワンテンポ遅れる。

 これはとても動きづらい……。

 そう考えていると相手のコートでトスが行われる。

 相手の行動から察するに次の相手のスパイクは私のいるこの付近だろうか。

 さすがに直前で軌道を変えるようなテクニックを持っているようなプレイヤーであれば難しいが、予測できる相手の行動がわかれば今日のこのワンテンポ遅れの身体でもどうにか対応できる。

 相手の動きを直前まで確認し、ボールに触れた瞬間に大体の軌道を予測してその位置に身体を移動させる。

 ボールの軌道は想像通りピンポイントで私のいる場所へと飛んでくる。

 重い身体を動かし、レシーブを行う。

 でもさすがにこの状態を繰り返すのはさすがに厳しい……。

 一瞬でも目を離すと行動が遅れるし、何よりたまに思考が飛びかける。

 できるだけ集中しようと思っているが、この気力がどこまでもつか……。


 そう考えていた瞬間だった。


 何かが横から飛んできており、音でそれを認識できた。

 目線をそちらに向けるとそれが男子のバスケットボールのコートから飛んできたものであり、それが私の元へと飛んでいることがわかる。

 いつもの私なら瞬間的に対応できたかもしれない。

 だが、目の前に集中しすぎたせいで一瞬反応が遅れてしまい、さらに身体の動きがワンテンポ遅れている。

 何とか身体を動かそうとしたがその行動もむなしく、私の意識はバスケットボールが頭を直撃した瞬間に途切れるのだった。



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