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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第11話「不安」


「……なんで雨やまないかなぁ」


 放課後の教室で自分の席に座りながら窓の方を見て私はつぶやく。

 ここ数日雨は降り続けている。

 なんというか自分の心が天気に現れているようで少し憂鬱な気持ちになる。


「で、でも、天気予報では明日には止むって言ってたよ」

「そっかぁ」


 放課後で雨ということもあり、教室には私と千奈ちゃんだけだった。

 梓ちゃんはお店の買い出しをしないといけないらしく、桜田君はゲームの発売日がどうということで姫城君を連れて先に帰ると言っていた。

 降りしきる雨を眺めながら、千奈ちゃんの言うとおりこの雨が明日で止めばいいなと思う。

 そして私の気持ちも晴れるといいなと思いながら席を立った。


「私たちも帰ろっか」

「う、うん」


 鞄を肩に背負い、二人で教室を後にした。



 階段を下り、廊下を曲がった辺りで声が聞こえる。

 この声は……せんちゃんと有馬さん?

 どうやらあの二人も今から帰るようで、下駄箱へと向かっているらしい。


「ねぇ夏妃、今日どっか寄って行かない?」

「こんな雨の日に出歩く必要ないわよ」

「えー? じゃあ夏妃の家行っていい?」

「……別にかまわないけど、私の家に来ても特に面白いことはないわよ」


 有馬さんは片手に参考書か何かを持ち、それに目を通しながらせんちゃんの話を聞いていた。

 なんというかその光景が普通で、梓ちゃんの言うような一人でいることが普通と感じられないような。


「あの二人って、仲がいいのかな?」

「せんちゃんと有馬さんは幼馴染だって前に聞いたことがあるよ」

「え? そうなの? でもそれならなんで有馬さんは一人でいることが多いんだろう?」

「べ、別に幼馴染だから常に一緒なわけじゃないと思うけど……」


 確かに言われてみればそうかもしれない。

 普段梓ちゃんや姫城君、桜田君の光景を見ていたことでそういう認識が脳裏に焼き付いていたのだろう。


「それに、あの二人はお互いがお互いを信頼してるようなそんな雰囲気があると思う」

「そうかなぁ? というか、千奈ちゃんやけに詳しいね?」

「……わたしは友達とかいなかったからその、に、人間観察をよくしてたから」


 ……なんか想像するととても悲しい図が見える。


「と、とにかく、二人は仲がいいってことなんだよね!」


 千奈ちゃんにフォロー(?)を入れつつ、私たちも下駄箱へ向かい、革靴に履き替えて外に出る。

 しきりに振り続ける雨の中、傘をさして帰宅するのだった。



 翌日。

 朝起きてカーテンを開けて外を見渡すと、曇ってはいるが雨は止んでいた。


「……また降ってきそうな天気だなぁ」


 そう思いながら学校へ行く準備をするのだった。



 いつも通り授業を受け、昼休みになった。

 今日は忘れずにお弁当を持ってきているため、自分の席でみんなとお昼を食べようと思っていたのだけど……。


「いやー悪いな、理科担当の先生が急用で外に出て行ったことで一番暇してた私が荷物運びを任されたんだが、荷物多いし一人だと面倒だったからな」


 私はなぜかみなちゃん先生に荷物運びを手伝わされていた。


「みなちゃん……毎回思うんですけどなんで私なんですか? あと、食後でもよくないですか?」

「なんで綾乃かっていう質問に関してはお前が学級委員だからだ。あと食後に荷物を運ぶのは多少面倒だからだ。あと先生をつけなさい」


 学級委員であることは仕方ないとして、最後の方私情入ってないかな……?


「それじゃあ、これが終わったらたまには私と一緒に昼でも食べるか?」

「……はい、そうですね」


 事前に梓ちゃんと千奈ちゃんにはみなちゃんの手伝いがあるからと先にお昼を食べてもらっているので問題はないと思う。

 そんなこんなで荷物運びを終え、私は教室にお弁当を取りに行き、みなちゃんは職員室へ進路相談室の鍵と昼食を取りに行くと言っていた。

 私が進路相談室の近くまで来たところで、みなちゃんがこちらへと向かってくる。


「どうやら違う鍵を持ってきてしまったから少し待っててくれ」

「え? それって……」


 私の声はみなちゃんには届かず、みなちゃんはそのまま職員室へと向かって行ってしまった。

 残された私はどうすればいいのだろうか。

 職員室はここからそこそこの距離があるため、少し時間がかかる。

 もうすでにお腹すいてるんだけどなぁ……。


「あれ? あやっち?」

「うん? せんちゃん?」


 声を掛けてきたのはせんちゃんだった。


「どうしたの? こんなところで」

「みなちゃんが鍵間違えたって言って今職員室に取りに戻ってる。せんちゃんは?」

「私は図書室の帰りだよ」


 そっか、4階の突き当りは確か図書室だったはず。


「それじゃあ私は教室に戻ってるね」

「あ、待って!」


 慌ててせんちゃんを呼び止める。


「あの、少しだけ暇だったらでいいんだけど、有馬さんってどんな子か聞いてもいいかな?」

「なっちゃん? うーん……」


 右手の人差し指を曲げて顎に置き考えるせんちゃん。


「なっちゃんはね、とってもまっすぐな子だよ。いつでもはっきりしてるし、それで反感を買ったりするけどちゃんと納得のいく説明までしてくれる。ある意味正々堂々という感じ。まあ、勉強が趣味っていう変わった子だけどね」

「有馬さん、一人でいることが多いって聞いたけど、せんちゃんから見てそれはどう思う?」

「そうだね、なっちゃんは他の人と関わることには対して興味を持ってないみたいだけど、私としてはちょっと心配かな。今は勉強とかをしてるだけでも困ることはないとか言ってたけど、今後私がなっちゃんと一緒の保証がないから、その環境でうまくやっていけるのかなとか。あはは、ここまで言うとただの心配性だね私」


 せんちゃんは本当に有馬さんのことを心配しているのだろう。

 私が梓ちゃんや千奈ちゃんがすきであるように、せんちゃんも有馬さんがすきなんだな。


「でもね、最近なっちゃんは変わったんだよ。他の人からは変わらないって言われるけど、かわいくなった感じがするんだ。前からかわいかったけどね!」

「……かわいくなった?」


 確かにかわいい子だと思うけど……。


「中3の後半くらいだからあやっちにはちょっとわからないかも。理由はわからないけど、もしかしたら恋でもしてたりして」

「こ、恋!?」


 その単語に反応してしまう。

 理由は私にとって最も縁遠いワードだったからだろう。


「あ、先生来たみたいだよ。それじゃあ私そろそろ戻るね」

「う、うん。ありがとう。今度何かお礼するね」

「あはは。楽しみにしてる」


 せんちゃんが去り、それと入れ替わる形でみなちゃんが戻ってくる。


「ん? 今のは能登か? まあいいか、待たせたな綾乃」

「みなちゃん! 恋ってなんですか!?」

「え? こい? あぁ、魚?」


 結局昼休みは進路相談室にてそれ関連の話をするのだった。

 みなちゃんにはめっちゃはぐらかされたような感じだけど。



 恋。

 午後の授業中もそのことばかり考えていた。

 私は恋を知らないが、他の人たちはどうなのだろうか。

 梓ちゃんや千奈ちゃん、桜田君にそれに姫城君。

 聞いてみたい感じはあるけど、聞いていいものなんだろうか。


「綾乃ちゃん?」

「……え?」


 隣の席から梓ちゃんが話しかけてきていた。

 というか、最近全く同じことがあったような……デジャブというやつだろうか。


「ごめん。また考え事してたみたい」

「そっかー。悩みがあるんだったら相談に乗るよ? ここ最近の綾乃ちゃんめっちゃ心配だし」

「あはは……まあ今のところは大丈夫だと思う。その時が来たら頼むかも」

「うん。その時が来たら教えてね。それより今日は翔と紗輝がやることないって言ってたからみんなで遊びに行こうと思ってるんだけど」

「行く!」


 最近雨続きということもあって外に遊びに行くことがなかった。

 もっとも今日も曇りだからいい天気とは言い難いけど。

 そして千奈ちゃんと桜田君にも梓ちゃんがその話をしている。


「あれ? 姫城君は?」

「あー、紗輝ならさっき教室出て行ったけど」

「じゃあ飲み物買に行くついでに探してくるよ!」

「あ! ちょ……」


 桜田君が何か言いかけていたけど、私は教室を出て自販機を目指しつつ、姫城君を探すのだった。


 校舎の外の自販機で紙パックのいちごミルクを購入し、周りを見渡す。


「……まあさすがに見渡しただけじゃ見つからないか」


 そう思いながらふと校舎を見上げる。

 そこに姫城君の姿を見つけた。


「あ、いた!」


 姫城君の元へと急いで駆け出すのだった。


 姫城君のいた場所は特別教室棟の5階で、階段付近にいたと思う。

 ……特に5階付近って何もなかった気がするんだけどなぁ。

 とにかく考えるより行動しようと思い、特別教室棟の5階を目指す。


 しばらくして先ほど姫城君がいた特別教室棟の5階にたどり着く。

 人通りは全くなく、歩くと自分の足音が少し響く。

 こんなところで姫城君は何をしているのだろう。

 そう考えていると、誰かの話し声が聞こえる。

 場所はこの先を曲がった辺り……階段だ。


「ずっと姫城君のこと見てました! すきです! 私と付き合ってください!」


 階段のある場所を曲がろうとしたとき、そう聞こえてとっさに物陰に隠れる。


 ……え?

 今、なんて言ってた?

 思考が追い付かない。

 姫城君が告白をされている?

 姫城君は……どうするんだろう?

 

 胸をおさえる。

 胸が痛い。

 どうしてだろう。

 不安な気持ちがとても大きくなる。


 私は話の続きを聞きたくなくて、来た道を走って戻っていった。

 そしてその足音はまた降りはじめていた雨音によってかき消されていくのだった。


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