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普段の話  作者: おやつ君
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剣道

剣道をやっていた。

 さっき、父が僕の子供の頃の写真を引っ張り出してきた。幼い時の僕は本当にかわいいのだ。かなりのイケメンの子供だった。今はもう立派なおっさんになってしまった。それでいいと思う。まぁ、時の流れは残酷なものだ。それでも、他のおっさんより若々しいと思うのだけれども。まぁ、いいか。自分で若いと思っておけばいいのだから。花粉症で鼻水が止まらない。今日は花粉症の薬は飲んでいない。だから鼻水がでるのだろう。あぁ、しんどいなぁ。頭がぼーっとする。今日は小説書きができたらそれでいいや。睡眠の質があまりよくない。軽い運動をした方がいいかなぁ。なんだか頭が痛いのだ。頭の使い過ぎかもしれない。家で小説書きをしているので普段は他人とは接触がほぼない。ウクレレ教室の日だけ他人と接する。あとは病院に行ったりした時かな。一人で行動するのが苦じゃなくなってきた。もうずっと単独行動だ。会社勤めもバイトもしていない。心の病で長年お薬を飲んできた。生活が闘病と一緒になっている。気象に敏感になる。天気の具合が気持ちに直結するからだ。丁度良く晴れて、花粉もなく気持ちのいい季節というのはわずかしかない気がする。

 僕は十歳くらいの時から三十歳手前まで剣道をしていた。今でも剣道の夢を見る。三十歳手前ぐらいで今さらながら母が僕が剣道を続けることに難色をしめしだした。それでまぁ、やめたのだけれども。断腸の思いだった。スッキリしていたと思っていたのだけれども、実は夢に出てくるくらい精神の奥深くまで剣道が根付いていたのだった。よく見るのが、竹刀が壊れていたり、なくなったりして試合ができなくなるという夢だ。あとは防具のつけ方や袴の履き方を忘れる夢だとか。もうやらなくなったからそれでいいのではないかと思うのだけれども、僕の無意識は忘れることに恐怖を覚えているようだ。何しろ、唯一の自分のアイデンティティーだったからだ。剣道をやめてからウクレレをしたり文章を書くようになった。自分のアイデンティティーの再構築を図っている最中なのだ。もうウクレレもやり始めて七年が経つし、日記は十年つけている。 それでも剣道をやっていたことで得たことや失なったことの熱量にはまだまだかなわない気がする。僕は剣道しかできないという思い込みだとか。

 三十歳を越えてから勉強をしたりしてみるとかえって新鮮で面白かったりする。学生時代は全然勉強をしなかったからそのうちにまた勉強にも打ち込めたらいいのにと夢想する。剣道をやめたことによって他の可能性が出てきたのだ。病気になってから薬を飲むようになり、辛い日常を送ることが多くなった。それでも大学や専門学校に入ったりした。でもいずれも中途半端な状態でやめてしまった。仕事にしてもそうだった。ただ、今は違う。ウクレレも文章書きも続けられているのだ。打ち込むことがあるということはいいことなのだろう。新しい自分だ。

やめてから随分経つ。

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