表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

超短編ホラー小説②「手紙」

作者: みすたー

『手紙』


私は同じ高校の同級生と付き合っている。

彼はサッカー部に所属していて、私は帰宅部だ。

私の家庭は公務員一家で、父親は何とも頑固な人で、私は毎日毎日勉強に追われ退屈な日々を送る高校生活であったが、それでも折れる事なく頑張れているのは彼がいるからだ。

放課後すぐには帰らず、彼の部活が終わるまで教室で勉強をして待っていた。

定時になると、彼が教室まで迎えに来る。

そして、駅まで一緒に話しながら帰りそこで別れる。

私にとっては人生で初めての彼氏だった。だからこそ毎日が夢の様で、彼と話している時間一秒一秒が私にとってはかけがえのないものだった。一人の女が現れるまでは。

二、三ヶ月前から彼とよく話している女子生徒がいる。その女子生徒は私たちの二つ下の学年で、高校一年の子だ。

彼女は休み時間になるとよく彼の元に会いにきて、笑顔で話し始める。彼もなぜかまんざらではない様子で話している。

最初の頃は特に気にはとめないようにしていたが、だんだんとその女子生徒が怖くなっていった。もしかして私から彼を奪う気なの?そう思い、直接その子と話をしてみる事にした。

私は根っからの臆病者で、普段その子のことを彼氏に聞いたりすることもできなかったが、これはきちんと話をつけないとまずいと思った。そうして放課後その子の元に行った。「あの、突然ゴメンね。ちょっと話があるんだけどいいかな?」頑張って私は話しかけてみた。するとその子は、「あ!私今日時間がないので!」と言って走っていってしまった。

その後も何度か面会を試みたものの、一度もまともに話してくれなかった。

そのため私は彼に相談する事にした。しかし、どうにもこうにも彼にその話をきりこめないのだ。普段どんな内容の話でもするのにその話をしたらもう彼が私をふってしまうんじゃないかとビクビクしていた。そこで私は彼に手紙を書く事にした。

『いきなり手紙なんて渡しちゃってビックリしたかな。実は日頃直接言えない事があってね。それを手紙で聞こうと思ってたの。あのね、最近よく同じ高校の一年生の女の子と一緒にいたりするよね?あんまりこういうことを疑いたくないんだけど、もしかしてその子の事好きなの?それとも何か事情があるのかな。本当にゴメンね。こんな事のためにわざわざ手紙なんて面倒くさいことして・・・。でもずっとその事がモヤモヤしててね。もしそうだったらはっきりそうって言ってね!返事待ってます。』

手紙に思いを込めて、次の日部活中の彼のカバンにこっそりと入れ込んだ。

私は次の日、返事を待っていた。しかし彼からの手紙は無かった。

そしてその次の日、彼は死んだ。学校帰りに電車に轢かれ、即死だった。真っ暗闇のホームには彼のズタボロになった制服と腕や血やどこのものかわからない皮膚が辺りに飛び散っていた。もはや部位の原型はほどんど留めていなかったが、左手だけはしっかりとした形で残っていた。その手の中には、

『僕手紙なんて書くの初めてでどう書いたらいいかわからないけどちゃんと返事書くね。最近なんか元気がないと言うか話をしていても若干上の空というか。その原因はそんなことに悩んでたんだね。ちゃんと言ってなかったんだけどあの子はね、僕の遠い親戚で訳あって少しの間だけ僕の家にいてね。ほとんど身寄りも無くて友達も少なかったみたいだったからちょっとでも支えてあげたかったんだ。ゴメンね。心配させて。僕はずっと君の事が好きだから。浮気なんかじゃないよ。』

と書かれた手紙が残されていた。


それなら、もっとちゃんと言ってほしかったのに。

それなら、私だって愛していたのに。

それなら、私が守ってあげたのに。

それなら、殺すことなんてなかったのに。

眩しい電車の光が真っ暗なホームを照らし出す。その光を直視していることはできなかったが、私は彼と反対側のホームから線路に飛び込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ