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フール

作者: 琴内光乃

『ファウスト』をもとに独自の詩でアレンジしました。

『フール』


 詩人の方――

 彼は、『知者』のために殺されたのだ。

 ここで言う知者とは神に最も近いもののことである。

 世界は、『魔』により破壊され、魔によって暗黒の響きになりて、日にいずるより月がでて魔の世界を照らしたもう。


 魔の方――

 我が思ふに、我がゆりかごはま、『魔の子』いづずるのちに、神たろう知者が世界を救わんとし、また世界は太陽が照らす世界へと飛躍す。

 知者すなわち我が宿敵となりて麗しの世界を創りし主に、宛てずもなくて幸福せんとす。


 主の方――

 魔よお前の恐るる知者がもうじきこの道を通りて、後、お前を封ず。その時はこの世界また太陽が照らす麗しき世になろうか。だがしかし知者は己をまだ、知者とは到底に思ふておらぬようだが、魔よ考えあろう。


 魔の方――

 主ともあろうものが魔に愚問す。これ滑稽。主よ我と張り合いしは、主が負なる時それは即ち世界誠に滅びときなる。いかほどに考えようか。


 詩人の方――

 あれよと間に主と魔は知者に賭けると云ふ。その知者未だ行方が分からぬうちとして、その無き智謀は愚者として生きるる。のち愚者は知者とし月の世界を、太陽の輝きをともすであろう。


 知者の方――

 ああ、主よ汝天に誠居しなのか。この月の世界が魔から一向に、太陽を取り戻せぬ。そればかりか、魔の子がその命を授かろうと耳にする。真実かであろうかわからぬままに、世界は朽ち果て逝くのであろうか。


 魔の方――

 今だ愚者は、知者にはなっていず。主よこれでは一向に勝負にはならぬ。主よ我が勝ちと認めこの世は我が物とす。

 

  主の方――

  いやいやまだ理が解らぬ。故、しばらく勝敗はお預けとす。愚者はまだ己が知者だと気付かぬ故、試合も無き。魔よ慌てるなかれ。今に愚者は目覚めの時来たるる。

 

 詩人の方――

 主と魔はその後、一向に目覚めぬ愚者を待ちたりて、辛抱ならぬ魔は怒りに狂いて己の娘を、魔の子として愚者の前に現れ愚問を投げかける。

 

 魔の方――

 お前、一向に知者にならぬは何事か。我が娘、即ち、魔の子を引き連れ其方の目の前に自ら現れた所存。これにより世界は我が魔の物とす。よって太陽は出ず、月の世界が支配す。

 

 知者の方――

 やっと出たは魔の物たち。待ちわびて愚者であること一年。一〇〇〇年の命を持とう魔の物ここでその寿命も終焉か。この腰に拵えた其方を討つ剣を創って待ち望んだ。

 覚悟の上にその力この剣でかき消したもう。

 

 主の方――

 滑稽と笑うは私の方だった。魔よお前の娘も力が薄れ、本領が出せぬがその命尽きしは地獄の門をくぐらん。

 

 詩人の方――

 かくして魔は滅び世界は太陽の日を待ち望んで人々は愚者を知者と崇めた。知者はまた愚者に戻りて、その人生娯楽に打ち込む。魔の娘は力を失い人として愚者に嫁入りをせん。



 解説

 知者は神の力にふさわしくそれを恐れた魔王は、知者を殺しました。

 それにより太陽がなくなって月の夜になってしまいました。

 魔王は、魔の子(自分の娘)を目覚めさせようとたくらみます。

 しかし主(神)がそれを阻止しようと、今に魔王を倒す新たな知者がくると魔王と賭けします。

 魔王は賭けに負けたとき世界は本当に自分のものになると主(神)に言います。

 今は愚者で智謀もない人だけれど、いずれ知者になる男の存在がいることに主(神)は着目します。

 そうとも知らない愚者は自分が神に毎日祈りを捧げます。

 しかし待つけど一向に知者は現れず、とうとう魔王は我慢できなくなり賭けは自分の勝ちと断言します。

 主(神)はまだわからないと魔王を説得します。

 主(神)と魔王は一向に知者にならない愚者にあきれ顔で、とうとう魔王は愚者のもとに姿を現します。

 そして知者にならない愚者に、「どうして知者にならないのだ?」と問いけます。

 知者は魔王を討つ剣を創りながら機会を伺っていていたのだと明かします。

 そこに主(神)が現れて、「いぜん私を滑稽と笑ったが知者の手で躍らされていてあなたの方が滑稽だ」と笑い飛ばしますそして地獄に落とすと言い放ちました。

 かくして魔王は討たれて、魔王の娘も力を失い太陽が昇る明るい世界になりました。

 その後、知者は人々に崇められていたが自分は愚者だと隠居し、魔王の娘は愚者のお嫁さんとして迎え入れられました。

読了感謝!

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