8/51
投げキッス
一人、病院の廊下のベンチでボーっ。
病院。…って、なんでここに入れらててるんだ?僕ら。
…そもそも、ホントに病院なのかなあ?
収容所、とか?
それに、今までの現実。
小さい子供から育って、モテない高校生、ってのは、なんだったんだ?
あれは全部、虚像だったのか?
「いろいろ考えたって無駄よ」
ナオだ。
「この世の中にはナゾがいっぱい。それは変わってないんだしね」
「そりゃまあ、そうだけど…」
「それより、その辺、ぶらぶらしようよ」
ナオと手をつないで、歩きはじめた。
「少しは気が紛れた?」
「そーだね」
「よかった」
…。
「ねえ、キスでもしよっか?」
「えっ?いや、僕、キョウと付き合ってるわけだし…」
ナオが笑った。
「いい。また今度にとっとく」
ナオが投げキッスした。
「じゃあ、またね」
ナオはどこかに行ってしまった。
…病院、かあ。
キスした方が、気が晴れたかなあ?
僕は廊下をぶらぶらしはじめた。