第一話『ナガレニナガサレ』
何だかんだで世界は非常・・・・いや非情である。
その日は日曜日であった。その日が日曜日だと認識したのは、パソコンを開いた時だったはずである。
僕は認識した後、ベットからのそりと立ち上がり、部屋着から少しはマシな服装に着替える。
その後、自室から出て、2階にある自室から1階に降りる。
寝起きということもあり、目をこすりながらトタトタと階段をきしませながら降りる。
そして皆が言う茶の間、と言っても和室的なものではないフローリングの部屋に移動。
そのまま流れるままにキッチンへと移動し全く装飾のしていない無機質な冷蔵庫の厚めの扉を開ける。
中には、オレンジジュースのみ。
もちろんこれは、ほかの食材を全て使ったとかではなく、初めからこれしか置いていないだけである。
そのオレンジジュース(1.5リットル紙パック)を、ごくごくと飲み始める。
ごく普通に、紙パックを持ち、首をあげ、紙パックの先端を口に置き、大きく口を開け、飲む。
「はあ・・・・・」
僕は、ため息をつく・・・・いや正確には、安堵の息を漏らす。
その後、飲み終わった紙パックを無機質な水色のゴミ箱の中に捨てる。
僕は朝食を食べない
朝食は働くための原動力だとか言っているが、そんなものは戯言、否嘘っぱちに過ぎず、
何日か続けていると、朝食を抜いても何も感じなくなった・・・というより、逆に食べてしまうと体調を崩すようになってしまった。
では、他の食事、つまり昼食と夜食はどうしているかというと外食である。
またもや、医療の人や栄養士の人は体に悪いだとか健康に悪いなんぞというかもしれんが、これもまたそうでもない。
実際のところ、体調はそんなことで崩したことはないし、太ってもいない、どちらかというと筋肉質なくらいである。
こういうのことを考えると、意外に世界は嘘っぱち、否戯事ばかりに過ぎないということがわかる。
『何だかんだで世界は非常・・・・いや非情である』
人は平気で嘘を付き
痛いと知ってながら殴り
怖いと知っていながら脅迫をする
世界はただただ物を観て
嘲笑い
そして沈黙する
そんなものである。
「世界って案外、脆いんだよな」
僕はボソッと呟く・・・・
別にかっこいいとかそういう思いはさらさら無い。
事実をありのまま述べただけだ。
1+1=2 と同じように。
そんなことを考えていると
玄関のチャイムが無機質な部屋に響いた。
ピポポポポポポピンポーン
ピポポポポポポピンポーン
「人の家のチャイムで曲を弾かないで欲しいな・・・」
正確には押さないで欲しいな になるが・・・
それでも演奏は鳴り響いているので、
僕は廊下にやや早歩きで出て、玄関の鍵をあけた。
その瞬間
「たーくん!!」
と黒髪の少女は突っ込んでくる。
僕は不意打ちだったため、そのまま廊下に打ちのめされた。
「うぐっ・・・・・重いよ篠儀」
「えへっ♪ごめん!たーくん!!」
篠儀 菜季。僕の幼馴染であり、同じ大学の3年生である。
身長は158センチであり綺麗の部類ではあるが、問題は性格である。
「アハハッ♪もうたーくんは男の子なんだから、女の子は受け止めないとダメだよ~にーん」
篠儀は屈託のない純粋な純真な純正なスマイルを俺に見せる。
「はいはいごめんよ、篠儀」
そういうとスマイルを大きくし、満足したような顔をする。
「うんうん、全くだよたーくん!!私も受け止めなくられないなんてそんなんじゃ世界も受け止められないよ!」
「世界はお前より軽いのか」
とすかさずツッコミを入れる。
全く息をつかせる暇もないやつだ。
と思った。
もう何度目になるかわからないほど思った。
だが篠儀を見るだけでそんなことはどうでもいいと思った。
そんなことを考えていると、篠儀はポケットからするりと封筒を取り出した。
・・・これはどうでもいいとは言えないな。
そう思いながら僕は封筒を取り『仕事』の内容を確認した。
「今回は私のお友達と一緒に仕事をしてもらうよ♪」
篠儀はニコリとしながら、茶の間で椅子に座ってコーヒーを飲みながら口を開く。
「お前の友達っていうと今回はどんな人?武器屋?情報屋?俳優?科学者?」
「どれでもないよ~というか今回はもうちょっとまともな人!!」
と、篠儀はコーヒーを飲みながら、話す。
「青空嵐。警察官だよ!チョーかっこいいよね!警察官。なろうとは思わないど、見るならかっこいい警察官」
確かにまともな人である。正義を貫くまとも否真っ当な人。だがお友達にしてはまとも?なのだろうか。
「に~ん?なんだがたーくんは《すごいお友達》と思ってるみたいだね。確かに私は『受け取り屋』(オールレンジ)だから、
色々な人と仲良くなるけど、これほどまともいや普通の人と友達なのは数少ないと思うよ」
「・・・そうか」
僕は、篠儀のまともが僕にとってのまともと全く違うということを理解したので肯定する。
「・・・で?僕は依頼の内容が気になるんだけど」
正直、あまりに異様な内容だったため、僕は顔をしかめつつ質問する。
「にーん?たーくんはもっとヤバイお仕事もやってきたでしょ~?これのどこが気になるの?」
「気になるに決まってるだろ」
依頼内容には一言
『殺人鬼 有無 有無の取り調べ』
と書いてあった。
「有無有無・・・って言ったら、俺みたいな行使者の仲でも有名な殺し屋だぞ?殺人鬼として恐怖していない。殺し屋として恐怖しているんだ」
一度もあっていない男。
一度も見たことのない男。
そんな男に恐怖している。
「に~ん・・・確かに『矛盾殺し』はすごいよ?あったことあるけど!!狂気しか『矛盾殺し』にはないと思う」
矛盾を殺す程の実力者。ただ殺すだけを生業とした人間、否怪物だ。狂鬼である。
「でも大丈夫!!たーくんならできるよ!それに相手は捕まってるんだから。完璧に拘束されている!!『口』しか動かせないよ」
僕はこの時、安堵した。が、数時間後恐怖する。『口』すらも動かせないようにするべきだということを