弟分の言う事にゃ
「ん?お前もしかして、ロッカか?」
王都の冒険者組合で孤児院時代の弟分を見かけ、思わず声をかけた。
「えっ?バッサルト兄?なんでこんなところに?」
いや、なんでこんなところ、はこっちのセリフなんだがな。
孤児院出てから随分経つから、王都で会ってもおかしくはないか。
ロッカも覚えている姿からかなり背が高くなっている。
「王都までの護衛依頼を受けてて、今完了報告したところだ。
ロッカお前、王都に来て冒険者やってるのか。知らなかった。
久しぶりだな、元気だったか?」
「うん、元気元気。あ、こっちにはロド兄もシアン達も来てるよ。
実はみんなして王立中央学院に通ってるんだ、今」
◆
へっ?一体何があったんだ?
いやロドは分かる。あいつは何考えてるか分からん奴だったけど、
頭は間違いなく良かった。あいつのおかげで食事に肉増えてたし。
野菜だって採れる量が増えたおかげでみんな喜んでたものな。
あのハーフエルフ十二人もロドに教わったせいか頭が良かった。
ロドにめちゃくちゃなついてたから、ついてきたのも分かる。
孤児院の院長先生も推薦したっておかしくはないだろう。
しかし、ロッカまで通ってる?どういう事だよそれは。
こいつ勉強嫌いじゃなかったっけか?頭もそれほど良くは…。
詳しい話を聞こうと、ロッカを誘って冒険者組合の食堂に入った。
注文したものが来るまで、ロッカと向き合って聞き出している。
「ミト姉と結婚したくて、騎士になろうと思ったんだ。
で、騎士になるには王立中央学院を卒業しないと難しいらしくて、
ロド兄達に勉強教わりながら何とか通ってる。
特待生にはなれないんで、学費とか食事代とかかかっちゃうから、
ロド兄からお金借りてるんだけどさ」
んー…騎士になりたい、は分かった。
しかしミトと結婚したい、とどう関係しているのかが分からん。
ミトって確か、料理人になりたいって言ってなかったっけか?
まあここにいるのは騎士になるため、なんだよな。うん。
冒険者見習いも続けるためには、月に一度は依頼しないとだから、
王都の冒険者組合に来ていたんだろう。そこは予想出来る。
あとは依頼で稼いでロドへの借金返済ってとこか。
「なるほど、騎士になるつもりなのか、ロッカは。
そういや院長先生も領主様も騎士だったらしいもんな」
二人とももう、五十歳ぐらいのはずだけど結構がっちりしてたよな。
同じぐらいの年齢の人達と比べても随分と若々しかったし。
ロッカがあの人達に憧れるのは良く分かる。
お、料理が来た。
さすがにここは兄貴分たる俺のおごりだが、高いものは頼んでない。
ロッカも借金持ちみたいだし、このぐらいで充分喜ぶだろう。
「バッサルト兄は、あんまり腹減ってないの?」
む。それはあれか?量をケチってるって遠回しに言ってるのか?
少しイラッと来るな、その言い方は。
「んー、まあそんなところだ。腹減ってるなら俺のも食うか?」
ここは器の大きさを見せてやろうじゃないか。
「いやあ、さすがに人の食事まで奪えないよ。
オレ出すんでもう少しいろいろ頼もう。すいませーん」
おいおい、借金どうした借金。いくら借りてるのか知らんけど。
◆
結構な量の料理を食うなあ、こいつ。
それだけ腹を空かしていたのか、あるいは何も考えていないのか。
一応忠告はしておくか。逆にごちそうになっておいてなんだが。
「ロッカよお、ロドに借金あるんじゃなかったのか?
おごってもらっといて言うのもなんだが、見てて不安になるぞ」
ロッカはけろっとした顔で、
「ん?ああ、ロド兄への借金は『出世払い』とかいうやつなんだ。
返すのは卒業してからでいいよ、って言ってくれてるんだよ。
なので依頼の稼ぎはオレが使っていいんだってさ」
随分とロドのやつは気前がいいと言うか。
高いんだよな?王立中央学院の学費とかは。確か六年間だっけ?
よく払えるなあいつ。
「ロドも大変だな、おい。特待生ったって金ある訳じゃないだろ」
思わずそう口にしたが、
「いや、ロド兄は今すげえお金持ちだから。だって男爵様だし」
…はあ?
そこからの話はなんかもう無茶苦茶だった。
男爵様って、領主様と同じ爵位じゃなかったか?
ロドが十歳の時にいろいろ手柄を立てて男爵にまでなっちゃって、
その手柄っていうのが最近あちこちで見かける夜間照明とかで、
他にも冒険者階級が上級の五つ星になっているとかなんとか。
俺まだ三つ星なんだけど。しかもロッカがもう二つ星だと。
この四年間で一体何やってたんだ、あいつは。
◆
この後。
バッサルトはロッカに連れられて、ロドが借りている借家へ行く。
借家、というから集合住宅を想像していたバッサルトだったが、
ほぼ領主邸と同等の豪邸だった見た目に仰天する事になる。
屋敷の中で久々にロドやハーフエルフ十二人と久々に顔を合わせ、
四年間に何があったか聞いてまた驚く。
その日一泊する事になるが、なかなか落ち着かず寝付けなかった。
彼は他人を妬んだり弟妹をいたぶったりする男ではなかったが、
この変貌ぶりには何とも言えぬものを感じざるを得なかった。
ロッカに関しては「騎士への不純な道」をご覧いただければ。
バッサルトは孤児院出身の彼らの兄貴分。ロッカより五歳年上。
ロドが進学する少し前に孤児院を出て冒険者の道へ入った。
増えた食用肉はゴブではありません。さすがに食用にはならない。
罠に引っ掛かったシカやらイノシシやらウサギやらです。




