第5話:今さら戻ってこいと言われても
第5話です!
聖域で快適な生活を送るアルスのもとに、ついに「あの連中」がやってきます。
ボロボロになった元仲間たちと、伝説の存在に囲まれたアルス。
その圧倒的な「格差」をお楽しみください!
聖女セレスティアが加わって数日。
俺の拠点は、もはや「家」と呼ぶには豪華すぎる場所になっていた。
セレスティアが祈りを捧げると、世界樹から収穫した果実の味がさらに良くなり、イヴがその素材で最高級の料理を作る。
正直、Sランクパーティ時代よりも何倍も贅沢な暮らしだ。
そんな平和を破るように、聖域の境界線を守る結界が微かに振動した。
「主様、例の『厚顔無恥』な方々が到着されました」
イヴが冷ややかな笑みを浮かべて報告してくる。
森の入り口の方を見ると、ボロボロの装備を引きずった四人の男女が、這々の体でこちらへ歩いてくるのが見えた。
ガイル、ルナ、そして他のメンバーたちだ。
「はぁ……はぁ……。おい、アルス! 無事だったか!」
俺の姿を見つけるなり、ガイルが安堵したような、それでいて相変わらず尊大な声を上げた。
だが、その直後、彼らは絶句した。
俺の背後にそびえ立つ、天を突くような黄金の『世界樹』。そして、そこに建つ白亜の宮殿のような邸宅を見て。
「な、なんだよこれ……。アルス、貴様、何をしたんだ?」
「何って、ただのスローライフだよ。それで、何の用だ? わざわざこんな魔の森の奥まで」
俺が冷たく問い返すと、ガイルは一瞬顔をしかめたが、すぐに無理やりな笑顔を作った。
「まぁ、そう固いことを言うな。お前がいなくなってから、装備の調子が悪くてな。特別に、またパーティに戻ることを許してやろうと思ってわざわざ来てやったんだ」
「そうよアルス。新しい鑑定士は全然ダメだし、あなたのありがたみが少しはわかったわ。感謝しなさいよね」
ルナが当然のように言い放つ。
どうやら彼らは、俺がここで何か幸運にも「遺構」を見つけ、それを管理しているだけだと思っているらしい。
「断る。今の生活に満足してるんだ」
「……あぁ!? 拾ってやるって言ってんだぞ! ひとりでこんな森にいて、魔物に襲われたらどうするんだ! 俺たちがいないと、お前はただの無能なんだぞ!」
ガイルが怒鳴りながら一歩踏み出した、その時。
「――主様を『無能』と称したその口、今すぐ引き裂いて差し上げましょうか?」
空気が凍りついた。
俺の隣に、いつの間にかイヴが立っていた。放たれるプレッシャーだけで、ガイルたちがその場にへたり込む。
「な、なんだこの女……魔力が、桁違い……っ!?」
「さらに、神聖国の聖女である私を差し置いて、アルス様を勧誘するなど……不敬にもほどがあります」
奥から、神々しい法衣を纏ったセレスティアが現れた。
その姿を見たルナが叫ぶ。
「せ、聖女セレスティア様!? なんでこんな場所に……!?」
「私は、アルス様に命を救われ、ここに置いていただいている身です。……貴方たちのような、恩を仇で返すような方々に、アルス様を渡すはずがないでしょう」
ガイルたちは、ガチガチと歯を鳴らして震え出した。
自分たちが「ゴミ箱係」と呼んでいた男が、伝説の精霊を従え、国の宝である聖女に傅かれている。
その事実が、ようやく彼らの脳内に恐怖として刻まれたのだ。
「あ、アルス……頼む! 悪かった! 俺たちの装備はもう限界なんだ! このままじゃ依頼に失敗して破産しちまう! 頼むから、一度だけでいいから修理してくれ!」
ガイルが地面に額を擦り付ける。
俺は、彼の腰にある折れかけの剣を【鑑定】した。
『状態:修復不能。主への積年の恨みにより、魔力が反転している』
「……無理だな。その剣はもう、お前を主とは認めていない。それに――」
俺は冷たく言い放つ。
「俺の【再構築】は、俺の大切な人のためにしか使わないことに決めたんだ。……帰ってくれ。二度と、この聖域を汚さないでほしい」
「そ、そんな……」
イヴが指を鳴らすと、突風が吹き荒れ、ガイルたちは悲鳴を上げながら森の外へと吹き飛ばされていった。
静かになった聖域。
俺は空を見上げ、ふっと息を吐いた。
「さて、イヴ。今日の夕飯は何だ?」
「はい、主様。世界樹の恵みたっぷりのシチューでございます」
こうして、俺の本当の自由な日々が、ようやく始まったんだ。
第5話、ついに元パーティを完全に拒絶しました!
「今さら戻ってこいと言われても、もう遅い」。これぞなろうの醍醐味です。
これで第一章「追放編」は完結となります。
次回からは、聖域をさらに発展させ、国や他国の勢力がアルスの力を求めてやってくる「建国・無双編」に突入します!
引き続き、ブックマークや評価での応援をよろしくお願いします!




