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『無能と言われた【鑑定士】、実は世界樹の管理人でした 〜パーティーを追い出されたので、辺境で伝説の聖域を作っていたら、聖女や女騎士が「泊めてくれ」と泣きついてきた〜』  作者: やまご
第2章:聖域都市・建国無双編

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第31話:天空都市の熱い夜、世界樹の雫と乙女の宣戦布告

「世界樹同盟」の結成を祝う喧騒が、遥か雲海の下へと遠ざかっていく。

 天空要塞アルスガルドの最上層。そこは、世界樹の巨大な梢が夜空を抱くように広がる、主アルスと、その最側近たちだけに許された聖域中の聖域だった。

 月光が世界樹の葉を透かし、淡い翡翠色の光が降り注ぐ中、アルスは専用の温室に併設された露天風呂に身を沈めていた。

 この湯は、アルスが【再構築】によって地脈の魔力を極限まで純化させ、肌を再生し魔力を活性化させる「神癒の雫」だ。

「……ふぅ。ようやく、一息つけるな」

 アルスが呟き、目を閉じたその時。

 薄絹が擦れる音と共に、湿り気を帯びた熱い空気が肌を撫でた。

「アルス様……。お疲れではありませんか?」

 現れたのは、聖女セレスティアだった。

 彼女は普段の重厚な聖衣を脱ぎ捨て、アルスが【再構築】で贈った「魔法糸の薄衣」を纏っている。湯気に濡れたその布地は無慈悲なほどに透け、彼女の豊潤な曲線と、宝石のように美しい肌の質感を浮き彫りにしていた。

「セレスティア……。君も、休まなくていいのか?」

「聖女の務めは、主様の心と体を癒やすことにあります。……今日は、特別な『聖域の香油』を用意いたしました」

 セレスティアは吸い込まれるような瞳でアルスを見つめると、戸惑う彼を制するように、背後にそっと回り込んだ。

 彼女の指先がアルスの肩に触れる。その指先には、とろりとした透明な油が塗られていた。

「……っ、温かいな」

「ええ。世界樹の果実から抽出したものです。……アルス様、力を抜いてくださいね」

 彼女の柔らかな掌が、アルスの背を、肩を、そして首筋をゆっくりと滑る。

 油の熱と、セレスティア自身の体温。その境界が分からなくなるほど、濃密な接触。

 彼女が体重をかけるたび、薄衣越しに伝わる双丘の弾力が、アルスの背中に「聖女」とは思えぬ情熱的な熱を伝えてくる。

「アルス様……。貴方は世界を救ってくださいました。……けれど、私は……貴方個人を、お救いしたいのです」

 耳元で囁く吐息が、アルスの理性を甘く削っていく。

 だが、その秘めやかな時間を破ったのは、小気味よい金属音だった。

「待ちなさい、セレスティア。抜け駆けは感心しないな」

 現れたのは、第一王女アイリス。

 彼女もまた、騎士としての鎧を脱ぎ、寝間着代わりのスリットが深く入ったシルクのドレスに身を包んでいた。鍛え上げられたしなやかな肢体が、月光の下で挑発的な光沢を放っている。

「アルス、私の『剣』は貴殿のものだが、私の『心』もまた、貴殿にしか捧げるつもりはないのだ。……背中のマッサージなら、戦士である私の方が力加減を心得ている」

 アイリスは堂々とアルスの正面に回り込むと、ドレスの裾を気にすることなく縁に腰掛け、細く長い足を湯船へと差し入れた。

 水面に波紋が広がり、彼女の足指がアルスの膝を優しくなぞる。

「……アイリスまで。みんな、今日はどうしたんだ?」

「決まっているでしょう」

 さらに、茂みの陰からエルフのフィオナと、成長著しいルルまでが顔を出した。

 フィオナは精巧に「再構築」された、体のラインを強調する透かし彫りのようなドレス。ルルはどこか危うい色香を漂わせるキャミソール姿だ。

「アルスガルドが世界の頂点に立ったということは、アルス様は実質、世界の王。……つまり、そのお世継ぎを巡る争いも、今日からが本番ということです!」

 フィオナが頬を赤らめながら宣言する。

 

「お世継ぎ……!? いや、そんな気が早い……」

「早くありません! 主様、私の『回路』は、主様の魔力を受け入れる準備がいつでもできています!」

 ルルが純粋ゆえの恐ろしい発言をし、アルスの隣に潜り込もうとする。

 まさに百花繚乱。

 天空都市の主を巡る、美姫たちの甘美な包囲網。

 だが、その蕩けるような空気を切り裂いたのは、上空からの鋭い風切り音だった。

「……興を削いで申し訳ありません、主様」

 イヴが銀色の翼を広げ、天空から舞い降りた。

 彼女の瞳は、これまでの平穏とは一線を画す、冷徹な「鑑定」の色を帯びている。

「……来ましたか。イヴ」

 アルスは彼女たちの甘い誘惑を振り切り(名残惜しさはあったが)、湯から上がると、傍らに置いていた漆黒の外套――深淵の力を無効化する【反物質外套】を纏った。

「はい。大陸の南端、『世界の果て』と呼ばれる大穴から……深淵の主が放った『終焉の使徒』たちが、黒い翼を広げました。その数、およそ五万」

 イヴの報告に、アイリスたちの顔からも甘い表情が消え、戦士の顔へと変わる。

「……五万か。今度は『掃除機』じゃ間に合わないかもしれないな」

 アルスは天空要塞の制御盤へと手を伸ばした。

「全居住区、防衛モードBへ移行。……ルル、魔力供給路を最大に。セレスティア、都市全体に広域障壁を。アイリス、フレア、騎士団をアークの随伴に」

 アルスが命を下すたび、天空都市が生き物のように震え、武装を展開していく。

 かつて彼を追放した連中が見れば、神罰と見紛うほどの光景。

「……さあ、世界を『バグ』ごと書き換えてやろう」

 アルスの瞳が黄金に輝く。

 第3章、深淵との全面戦争。

 それは、究極の「再構築」が世界の限界を突破する、神話の続きであった。

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