第3話:聖域に湧き出た究極の癒やし
第3話です!
「世界樹の管理人」として本格的に活動を始めたアルス。
まずは拠点の生活環境を整えようとしたところ、思わぬ「お宝」を掘り当ててしまいます。
そして森の奥から現れた、謎の少女の正体とは……?
世界樹の主となって一夜が明けた。
俺が昨日まで寝泊まりしていた、あの湿っぽくて狭い宿舎の物置部屋が、今では遠い昔のことのように思える。
「主様、おはようございます。朝食の準備が整っております」
銀髪の精霊イヴが、どこから用意したのか、瑞々しい果実と透き通った水を持ってきてくれた。
その水一口飲んだだけで、全身に魔力が染み渡り、疲れが完全に吹き飛ぶのが分かる。
「……これ、ただの水じゃないよな?」
「はい。世界樹の根から溢れ出した『霊水』でございます。街では一滴で金貨数枚は下らないかと」
……朝からとんでもない贅沢をしてしまった。
さて、腹ごしらえも済んだところで、生活基盤を整えたい。
特に、冒険者時代に一番の悩みだった「風呂」だ。
「イヴ、この辺りに水場はあるか? できれば温かいお湯に浸かりたいんだが」
「それでしたら、主様の魔力で大地を【再構築】すればよろしいかと。この地下には豊かな地脈が流れていますから」
なるほど。
俺は世界樹の根元の一角を【鑑定】し、地面の下を透視する。
すると、地底深くを流れる熱烈なエネルギーの奔流が見えた。
「……ここだ。【再構築】」
俺が地面に手を触れ、魔力を流し込む。
ズズズ、と大地が震え、そこから純白の湯気が立ち上った。
岩肌が自動的に整えられ、立派な露天風呂の形を成していく。
『名称:世界樹の神湯』
『効果:全状態異常の解除、魔力の最大値上昇、美肌効果(極)』
「おぉ……最高じゃないか」
さっそく服を脱ぎ捨てて飛び込む。
熱すぎず、ぬるすぎず。肌に吸い付くような滑らかな湯。
日々の激務でボロボロだった心が、溶けていくようだ。
――だが、その平穏は、微かな茂みの音によって破られた。
「あ、ああ……。もう、一歩も、動け、ない……」
森の奥からふらふらと現れたのは、ボロボロになった純白の法衣を纏った少女だった。
金色の髪は乱れ、その透き通るような肌には無数の傷がついている。
「おい、大丈夫か!?」
俺が慌てて湯から上がり(一応タオルは巻いた)、彼女を抱きかかえる。
その瞬間、俺の眼裏に彼女のステータスが表示された。
『個体名:セレスティア(神聖帝国・第一聖女)』
『状態:魔力枯渇、猛毒、追跡中(Sランク暗殺ギルド)』
「……聖女!? なんでこんな辺境に……」
彼女はうっすらと目を開け、俺の顔と、その背後にそびえ立つ世界樹を見上げて、小さく微笑んだ。
「……ああ、神様。最後に、こんなに、綺麗な場所へ……」
そのまま彼女は力尽き、俺の腕の中で意識を失った。
◆
一方その頃。
迷宮都市ゼノスのギルドロビー。
「おい、どういうことだガイル! 受けた依頼は『ゴブリンの群れの掃討』だろう!? なんで全滅寸前で逃げ帰ってきてるんだ!」
ギルド職員の怒号が響く。
そこには、全身泥まみれで、防具がボロボロに崩れたガイルたちの姿があった。
「うるせぇ! 道具屋が不良品を売りつけやがったんだ! 剣は折れるし、ポーションはただの泥水になってやがるし……!」
「道具屋のせいにするな! 鑑定士のアルス君がいた時は、一度もそんな不備はなかったぞ!」
「チッ……! あんな無能、関係ねぇよ!」
ガイルは毒づくが、その手は震えていた。
アルスがいなくなってから、信じられないほど「運」が悪い。
足元が滑る。獲物が急所を外れる。罠を必ず踏む。
彼らはまだ知らない。
アルスを追放したことで、彼らを守っていた最後のリミッターが外れ、世界そのものから拒絶され始めていることに。
「……クソッ、アルスの野郎。今頃どこかで泣いて土下座する準備でもしてるんだろうな」
そう吐き捨てるガイルの背後で、彼の高価な鎧に新たなヒビが入った。
第3話をお読みいただきありがとうございました!
ついに新ヒロイン・聖女セレスティアが登場しました。
彼女がなぜ追われていたのか、そしてアルスの温泉が彼女に何をもたらすのか。
次回、「聖女様、世界樹の湯で全回復して聖域の虜になる」。
続きが気になる方は、ぜひブックマークや広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援お願いします!




