第24話:魔王の玉座、露天風呂に再構築される
第23話では、ルルが薬草摘みのついでに魔王軍の残党を消滅させました。
今回は、その「跡地」の有効活用です。
本来なら呪われた地として封印されるはずの場所が、アルスの手にかかれば、世界中から予約が殺到する「超高級リゾート」へと生まれ変わります。
「……主様。ルルちゃんが『お掃除』した場所、魔力の残り香がすごいです。このまま放置すると、変な魔獣が湧くかもしれませんね」
イヴが地図を広げながら進言する。
ルルが消し飛ばした『暗黒の迷宮』跡地は、今や広大な更地となっていたが、そこには魔王軍が数百年かけて貯め込んだ「負の魔力(瘴気)」が結晶化して残っていた。
「なるほど。……じゃあ、あそこを『浄化』しに行こうか。ちょうど聖域の温泉も混んできたし、第2浴場が必要だと思ってたんだ」
「……魔王軍の本拠地を、お風呂にするのですか?」
アイリス王女が呆れ顔で突っ込むが、アルスはすでにノリノリだった。
◆
現地に到着したアルス一行。
そこには、かつての禍々しい面影は一切なく、ただただ広い土の平原が広がっていた。
唯一残っていたのは、魔王が座るはずだった漆黒の『大玉座』だけだ。
「……あ、あの。師匠、ごめんなさい。やっぱりやりすぎちゃいました?」
ルルが申し訳なさそうに袖を引く。
「いや、いいんだよルル。……ほら、この黒い石、いい素材じゃないか。……【広域再構築】!」
アルスが地面に手を触れた。
ドゴォォォォォン!!
瘴気に満ちていた黒い石材は、一瞬で「最高級の黒曜石」へと浄化・変質。
魔王の玉座は、その形を崩しながら広がり、湯気を立てる巨大な『岩風呂』へと姿を変えた。
さらに、地脈の深部を流れるマグマの魔力を【再構築】し、効能豊かな『神癒の湯』を湧き出させる。
『名称:聖域別邸・魔王の癒やし湯』
『効能:全状態異常回復、魔力最大値の上昇、美肌効果(極)』
『設備:魔法式サウナ、世界樹の雫ドリンクバー完備』
「……な、なんてことだ。伝説の魔王が世界征服を夢見たその場所で……今、私が腰までお湯に浸かっている……」
同行した元将軍のフレアが、出来立ての露天風呂に浸かりながら、月を見上げて涙ぐんでいた。
「……アルス様。ここ、王都から馬車で一週間の距離ですが、間違いなく世界で一番贅沢な場所になりましたね」
セレスティアも、湯気に包まれながら幸せそうに微笑む。
『拠点「聖域別邸」が完成しました』
『周辺の魔族の生き残りたちが、あまりの居心地の良さに「湯守り」として志願してきました』
「あ、師匠! 変な角が生えたおじさんたちが、タオルを持って並んでます!」
ルルが指差す先には、かつての魔王軍幹部たちが「ここで一生働かせてください!」と、温泉の従業員として土下座していた。
こうして、世界を恐怖に陥れるはずだった暗黒の地は、アルスの手によって、大陸一の予約困難な「温泉リゾート」へと再構築されたのであった。
第24話をお読みいただきありがとうございました!
魔王の玉座を露天風呂にするという、暴挙にして快挙。
敵だった魔族たちも、アルスの作る「おもてなし」には勝てなかったようです。
次回、第25話。第2章の佳境です。「温泉リゾートの噂が広まり、ついに隣国の『商業ギルドのトップ』が、独占権を狙ってやってくる。……が、アルスの提示した『入浴料』に腰を抜かす」。
お楽しみに!




