第22話:自称・無能の少女と、世界一適当な魔法講座
第21話では、世界樹の剪定という「家事」が、実は国家滅亡級の難易度だったことが判明しました。
今回は、そんな規格外の場所「聖域都市」に、ボロボロの杖を抱えた一人の少女が辿り着きます。
才能がありすぎて「呪われている」と捨てられた彼女を、アルスの【鑑定】がどう救うのか?
聖域ギルドの隅っこで、ガタガタと震えながら縮こまっている少女がいた。
年齢は十二、三歳といったところか。大きなローブに身を包み、手垢で汚れた安物の杖を大事そうに抱えている。
「……あ、あの。私、魔法を撃つと、いつも建物が壊れちゃうんです。だから、魔物退治じゃなくて、お掃除の仕事とか、ありませんか……?」
彼女がそう呟いた瞬間、周囲の冒険者たちが「ヒッ」と声を上げて距離を取った。
彼女の名はルル。王都の魔導学院で「魔力制御不能の欠陥品」として追放された少女だ。
「お、おい、あいつか……。『歩く天災』って噂の……」
「触れるだけで魔導具を暴走させるらしいぞ、近寄るな」
冷たい視線に、ルルが今にも泣き出しそうになったその時。
「……君、ちょっといいかな」
ひょい、と俺は彼女の前にしゃがみ込み、その瞳を覗き込んだ。
もちろん、発動させるのは【鑑定】だ。
『種族:人間(先祖返り)』
『状態:極超魔力過多、回路の目詰まり』
『素質:全属性魔法適性(極)、【神の瞳】の器』
「……なるほど。欠陥品どころか、ただの『規格外』じゃないか」
ルルは、魔力を出力する「蛇口」が全開なのに、それを流す「ホース」が子供サイズなのだ。だから魔法を撃とうとすると、ホースが破裂して周囲を吹き飛ばしてしまう。
「君、魔法を撃つときに、お腹のあたりが熱くなって苦しくない?」
「えっ……。ど、どうしてそれを……? はい、いつも爆発しそうで、怖くて……」
「それはね、君がすごい魔法使いだからだよ。……よし、俺がちょっと『再構築』してあげよう」
俺はルルの頭にそっと手を置いた。
「【回路再構築】。……ついでに、そのボロい杖も素材がいいから、作り直しておくね」
一瞬、白銀の光がルルを包み込む。
彼女の細い魔力回路は、世界樹の枝と同じ強靭な「超電導回路」へと書き換えられ、抱えていた杖は神話級の魔杖へと姿を変えた。
「……あ、あれ? 体が軽い……。それに、魔力が……静かに流れてる……?」
「試しに、あそこの訓練用カカシに向かって、一番自信のない『火の粉』を撃ってみて」
「は、はい……! えいっ!」
ルルが杖を振るった瞬間。
――ズドォォォォォン!!
聖域の広大な訓練場に、巨大な太陽が出現したかのような熱量。
カカシどころか、訓練場の防壁(特製)ごと、地平線の彼方まで焼き尽くす「極大消滅魔法」が放たれた。
「「「「…………は?」」」」
居合わせた冒険者たちが、揃って顎を外す。
「……あ、あわわわ! ごめんなさい! やっぱり壊しちゃったぁぁ!」
「いや、今のは良かったよ。ちゃんと真っ直ぐ飛んだだろ? あとは威力を一万分の一くらいに抑える練習をすれば、完璧だ」
「いちまんぶんのいち……?」
ルルは呆然と自分の手を見つめた。
自分が「無能」だと思っていた魔法が、実は世界を滅ぼせるほどの「力」だった。それを、このお兄さんは笑いながら教えてくれた。
「アルス様! 私、ここで修行したいです! お掃除でも、火起こしでも何でもしますから!」
『新たな弟子(?)ルルが加わりました』
『都市の魔導レベルが「賢者級」に到達しました』
「ふふ、また妹分が増えましたね」
セレスティアが優しく微笑むが、その背後では「ライバルが増えた」とフィオナやアイリスが静かに火花を散らしている。
アルスガルドの日常は、また一段と騒がしく、そして「最強」へと近づいていくのだった。
第22話をお読みいただきありがとうございました!
新たなヒロイン、天才幼女ルルの登場です。
アルスに「再構築」された彼女の魔法は、もはや戦略兵器レベル。
次回、第23話。「ルルの初めてのおつかい。……薬草を採りに行くだけのはずが、森の最深部の魔王軍拠点を一人で壊滅させて帰ってくる」。
お楽しみに!




