第20話:聖域ギルド設立と、常識外れのランク制度
第19話では、帝国の禁忌魔法を肥料に変え、ジャムを送りつけるという究極の煽り(本人は親切心)を披露したアルス。
帝国がジャムの美味しさに震えている間に、聖域都市アルスガルドは次なる段階へ進みます。
「自分の街に、自分がルールを決められるギルドを作る」。
鑑定士を追放した古いシステムへの、アルスなりの「回答」が始まります。
帝国軍の侵攻(お掃除)から一週間。
アルスガルドの入り口には、かつてないほどの人だかりができていた。
王国、帝国、さらには自由都市連合から、噂を聞きつけた冒険者たちが「伝説の聖域」を一目見ようと集まってきたのだ。
「主様。これほどの人出となると、そろそろ『管理』が必要ですね」
イヴが整然と並ぶ行列を見ながら、隣の俺に囁く。
「そうだね。既存のギルドだと、また【鑑定】の結果を信じない奴らが出てくるかもしれないし……。よし、ここに『聖域ギルド』を作ろう」
俺は広場の中央に立ち、地面に手を触れた。
「【再構築】――建築:『聖域ギルド本部』」
ズズズ、と大地が震え、白銀の石材と世界樹の原木が編み込まれるように組み上がっていく。
わずか数分で、王都のギルド本部すら霞むような、荘厳かつ機能的な巨大建築物が完成した。
「……はぁ。何度見ても、建築の常識が死ぬわね」
エプロン姿で掃除をしていたカレンが、もはや驚くのも疲れた様子で呟く。
俺は完成したギルドの入り口に、独自の「ランク板」を設置した。
「皆さん、注目! 今日からここ『聖域ギルド』は、実力と『貢献度』を重視する。ランクはこれまでのF〜Sではなく、俺が【鑑定】した『心の価値』で決める!」
集まった冒険者たちがざわつく。
「『心の価値』だって? アルス様、それはどういうことだ?」
「例えば、俺が作ったこの【真実の水晶】に触れてくれ。これで君たちの『適性』と『善性』を鑑定する。魔力が高くても、性格が悪い奴は……ランク外だ」
俺が設置したのは、前世の「適性検査」と【鑑定】を組み合わせた魔導具。
これを通れば、かつてのガイルのような「他人を蹴落として上がる無能な強者」は排除される仕組みだ。
「さらに、このギルドのランクが上がれば、世界樹の果実が安く買えるし、バルカンさんが打った『神鉄の装備』を貸し出し(レンタル)できる権利も与える!」
その瞬間、冒険者たちの目の色が変わった。
世界樹の果実一つで寿命が延び、バルカンの武器一つで一騎当千になれる。そんな特典、命を懸けても惜しくない。
「俺も登録するぞ!」「俺もだ!」
『「聖域ギルド・アルスガルド支部」が開設されました』
『都市の経済レベルが「SS」へ上昇。世界中から優秀な人材が流入し始めます』
殺到する冒険者たちの受付を担当するのは、なぜか元将軍のフレアだった。
「並べ! 順番を守らぬ者は、私が直接『掃除機』の餌食にしてやる! ……あ、次は貴殿か。……名前を言え」
元将軍に凄まれ、震えながら登録する冒険者たち。
こうして、世界で最も規律正しく、そして世界で最も豪華な「冒険者の聖地」が誕生した。
だが、その様子を遠くから見つめる影があった。
「……見つけたぞ、アルス。お前が作ったこの『楽園』……我ら【深淵の使徒】が、有効に活用させてもらおう」
物語は、人間同士の争いを超えた「世界の裏側」へと、静かに動き始めていた。
第20話をお読みいただきありがとうございました!
ついにギルド設立! これでアルスガルドは、経済と武力の両面で完全に独立した「国家」としての体裁を整えました。
そして、最後に現れた不穏な影。第2章の後半、そして第3章へと繋がる「真の敵」の予感です。
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