第2話:君たちが捨てた「ゴミ」の正体
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「鑑定士がいなくなっても何も変わらない」……そう豪語していたSランクパーティに、早くも「綻び」が見え始めます。
一方のアルスは、伝説のエルフ(?)とスローライフの準備万端です!
「……ふぅ。これが、俺の新しい家か」
アルスが顔を上げると、そこには空を覆わんばかりの巨木――『世界樹』がそびえ立っていた。
数時間前までただの枯れ枝だったとは思えない。葉の一枚一枚がエメラルドのように輝き、周囲には肺が洗われるような清浄な空気が満ちている。
「はい。主様が魔力を注いでくださったおかげで、この地は完全に浄化されました。私は世界樹の精霊、イヴ。以後お見知りおきを」
銀髪の美少女――イヴが、恭しく頭を下げる。
彼女の頭上には、普通の鑑定士には見えない「金色の文字」が浮かんでいた。
『個体名:イヴ(世界樹の守護精霊)』
『状態:極めて良好(主への忠誠心:MAX)』
『戦闘力:測定不能(SSS級)』
……とんでもないものを引き当ててしまったらしい。
だが、驚くのはまだ早かった。
「主様、あちらの『ガラクタ』も再構築なさいませんか?」
イヴが指差したのは、俺がパーティから「ゴミ」として持ち出すことを許された革袋の中身だ。
中には、刃の欠けた錆びた短剣や、真っ黒に汚れた石ころが入っている。
「……やってみるか。【再構築】」
俺が錆びた短剣に触れる。
すると、ボロボロだった刀身が光の粒子に分解され、一瞬で透き通るような蒼い刃へと作り替えられた。
『名称:蒼海の涙』
『ランク:神話級』
『効果:振るうたびに装備者の傷を癒やし、水流の刃を飛ばす』
「神話級……。これ、国宝どころか伝説の武器だぞ……」
ガイルたちは「研ぎ直す金ももったいないゴミ」と言って捨てたが、俺の目にはこれが「古代の聖遺物」の成れの果てだと分かっていた。
彼らが捨てたのは、ただのガラクタではない。世界を救うための「遺産」だったのだ。
◆
その頃。
迷宮都市ゼノスのギルド酒場では、Sランクパーティ『獅子の咆哮』が景気のいい声を上げていた。
「ガハハ! 無能がいなくなって、ようやく酒が美味いぜ!」
リーダーのガイルが、大ぶりのジョッキを煽る。
隣には、新加入したばかりの『聖騎士』の青年が、少々困惑した顔で座っていた。
「……あの、ガイルさん。本当に鑑定士がいなくて大丈夫なんですか? 装備の点検とか……」
「気にするな新人! アルスなんて、ただ剣を撫で回してニヤニヤしてただけだ。あんなヤツがいなくても、俺様の『剛剣』は今日も絶好調だぜ!」
ガイルが腰に下げた大剣を叩く。
その瞬間。
――パキン。
静まり返った酒場に、不吉な乾いた音が響いた。
「……あ?」
ガイルの視線の先で。
数々の魔獣を切り裂いてきた自慢の大剣に、クモの巣のような亀裂が走っていた。
しかも、一つではない。
魔導師ルナの杖からは宝石がポロリとこぼれ落ち、他のメンバーの防具も、まるで吸い殻のようにボロボロと崩れ始めていく。
「な、なんだ!? 何が起きてるんだ!?」
彼らは知らなかった。
アルスが毎日、その【鑑定】と【再構築】の微細な魔力を使って、限界を超えていた彼らの装備を「奇跡的に」繋ぎ止めていたことを。
メンテナンスをしていたのではない。
アルスという『支え』がいなければ、彼らの装備はとっくにゴミクズになっていたのだ。
「クソッ、鍛冶屋だ! 鍛冶屋へ行くぞ!」
焦るガイルたち。だが、彼らはまだ気づいていない。
不吉な音を立てているのは、装備だけではない。
アルスの【幸運の加護】を失った彼らの「運命」そのものが、音を立てて崩れ始めていることに――。
「お前の代わりなんていくらでもいる」と言った側から、代わりがいないことに気づき始める……ざまぁの醍醐味ですね!
次回、アルスが世界樹の麓で「究極の温泉」を掘り当て、聖女様が迷い込んできます。
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