第13話:聖域のグルメ革命と、飢える迷宮都市
第12話をお読みいただきありがとうございます!
エルフの工芸師フィオナたちが加わり、聖域は「村」としての形を整え始めました。
今回は、アルスの【再構築】とエルフの【精密加工】が合わさった結果、とんでもない「グルメ革命」が起きるお話です。
一方、アルスを追い出した報いを受ける迷宮都市では……。
エルフの一族が移住してきてから三日。
フィオナたちは、俺が【再構築】で作った高機能住宅に感動しつつ、さっそくそのお礼として「工房」をフル稼働させていた。
「アルス様! できました、これです! あなたがおっしゃっていた『温度を一定に保つ魔法陣』を組み込んだ調理器具……【魔導オーブンコンロ】です!」
フィオナが誇らしげに掲げたのは、銀色に輝く美しい箱型の器具。
俺が前世の記憶を頼りに「こんなのがあれば便利なんだけど」と呟いた内容を、彼女たちは一晩で形にしてしまった。
『名称:エルフ式魔導オーブン』
『ランク:伝説級』
『効果:食材の旨味を100%引き出す。火加減の自動調整機能付き』
「すごいな……。これなら、世界樹のふもとで穫れた最高級の食材をさらに美味しくできる」
さっそく、セレスティアが育てた『聖域野菜』と、イヴが調達してきた『魔獣の極上肉』を調理する。
じゅわっ、と弾ける脂の音。立ち上る香りは、もはや暴力的なまでの食欲をそそる。
「……あ、アルス様。お味見を……あーん、です!」
フィオナが顔を赤くして、出来立てのステーキを差し出してくる。
一口食べれば、口の中で肉が溶け、野菜の甘みが爆発した。
「……うますぎる。これ、王都の晩餐会に出したら暴動が起きるぞ」
「ふふ、アルス様。これこそが私たちが作りたかった『平和な食卓』です」
セレスティアも幸せそうに頬を緩める。
◆
その頃。
聖域から馬で数日の距離にある「迷宮都市ゼノス」は、地獄のような状況に陥っていた。
「……おい、今日もパンが届かないのか!?」
「ああ。ギルドから『獅子の咆哮』が追放されてからというもの、この街の運気は最悪だ」
アルスがいなくなったことで、迷宮の難易度が急上昇。
さらに、アルスが密かに浄化していた水源が濁り始め、周囲の農作物が次々と枯死していたのだ。
ギルドには、飢えた冒険者や市民たちの不満が爆発寸前で溜まっていた。
「ギルドマスター! このままじゃ街が死にます! 聖域のアルス様に、どうか食糧を分けていただけるよう頼んでください!」
「……無理だ。陛下からは『アルス様の平穏を乱す者は死罪』と厳命されている。……だが、背に腹は代えられん」
ギルドマスターは、震える手で一通の手紙を書いた。
それは、自分たちが切り捨てた「鑑定士」への、あまりにも惨めで卑屈な「救援要請」だった。
◆
聖域。
食後のティータイムを楽しんでいた俺のもとに、アイリス王女が苦笑いしながら一通の手紙を持ってきた。
「アルス。王都のギルドから、泣き言が届いているぞ。……『どうか、余った食糧を恵んでほしい。言い値で買うから』だとさ」
「……余った食料? 毎日イヴたちが収穫しすぎて、倉庫に入り切らないくらいあるけど」
「……それを聞いたら、あいつら泣くだろうな」
俺は、倉庫に山積みになっている『黄金の林檎』や『高純度魔力米』を眺めた。
自分たちを追い出した街を救う義理はない。
だが――。
「……じゃあ、こうしよう。食糧は売ってやる。ただし、その代わりとして――」
俺の提案を聞いたアイリスとイヴが、不敵な笑みを浮かべた。
聖域の支配力が、また一つ外の世界へと広がろうとしていた。
第13話をお読みいただきありがとうございました!
エルフの技術×現代知識のオーブン、最強ですね。
そして、アルスを失った街の惨状……。「いなくなってから気づく」という、ざまぁの延長線上のカタルシスです。
次回、第14話。「聖域ブランドの食糧、世界を席巻する。……そして、ヒロインたちの主導権争いがヒートアップ!?」。
お楽しみに!




