第12話:助けたエルフは、伝説の工芸師でした
第11話では、王都での「ざまぁ」がついに完結しました。
今回から物語は新展開へ!
聖域の入り口に現れた、ボロボロのエルフの一族。
彼女たちが抱えていた絶望を、アルスの【再構築】が最高の「希望」へと書き換えます。
世界樹の結界の外。
そこには、十数人のエルフたちが身を寄せ合って震えていた。
中心にいるのは、翠色の髪を短く切りそろえた少女。彼女の背後には、衰弱した老人や子供たちの姿がある。
「……あの、あなたが、この森の主様ですか?」
少女が恐る恐る問いかける。
俺は頷き、彼女たちの状態を【鑑定】した。
『種族:ハイエルフ(森の工芸師一族)』
『状態:重度の魔力飢餓、住居喪失、帝国軍による追撃中』
「……ハイエルフ? 伝説の工芸師って、あの国宝級の魔導具を作るっていう?」
「はい……。私たちは、軍事帝国に工房を乗っ取られ、無理な増産を強いられていました。……逃げ出してきたのですが、もう、行く宛がなくて……」
少女――フィオナが、涙を浮かべて地面に膝を突く。
エルフにとって魔力の薄い土地での逃亡生活は、死に等しい。
「主様。彼女たちの魔力残量は限界です。……今すぐ、聖域の慈悲を与えてはいかがでしょうか?」
イヴが静かに進言する。
俺は迷わず、結界を大きく広げた。
「……ひとまず中へ入れ。ここは世界樹の加護がある。魔力ならいくらでもあるぞ」
◆
聖域に入った瞬間、エルフたちは一斉に息を呑んだ。
濃密な魔力が彼女たちの肌を潤し、枯れ果てていた魔力回路がみるみるうちに満たされていく。
「……はあぁ、なんて心地いい空気……。それに、この世界樹様……神話の時代そのものです」
フィオナたちは、世界樹の根元にある『霊水の泉』を飲み、セレスティアが用意した食事を口にすると、みるみるうちに活力を取り戻していった。
「アルス様。お助けいただき、本当にありがとうございます。……お礼と言っては何ですが、私たちは道具作りしか能がありません。どうか、この場所で働かせていただけないでしょうか?」
「働くって言っても、まだ住む場所もないだろう?」
「ええ……。ですから、自分たちで小屋でも建てようかと。エルフの魔法なら、数ヶ月あればなんとか――」
「数ヶ月? ……そんなに待たなくていいよ」
俺は、エルフたちが「居住区」にしたいと言った、世界樹から少し離れた平地へと向かった。
そこには、かつての冒険者たちが捨てていったキャンプの残骸や、ただの岩石が転がっている。
「……【広域再構築】」
俺が地面に手を触れると、白銀の魔力が波紋のように広がった。
地面から石材がせり上がり、木々が自ら形を変えていく。
ガガガガッ! と轟音が響き、わずか数十秒。
そこには、エルフの伝統的な様式と、俺が前世の記憶(現代知識)でイメージした「高機能な集合住宅」が融合した、美しい村が出現した。
『名称:エルフの工房街』
『設備:魔導式自動洗浄トイレ、常時魔力循環空調、世界樹直通の水道』
「な……な、なんですか、これは……!?」
フィオナたちが口をあんぐりと開けて固まっている。
エルフが一生かけて作り上げるような最高級の「生きた家」が、瞬きする間に十数軒も建ってしまったのだ。
「……アルス様。あなた様は、神様か何かなのですか?」
「いや、ただの鑑定士だよ。……さあ、今日からここが君たちの家だ。好きなだけ、最高のものを作ってくれ」
『エルフの一族が住民として定着しました』
『拠点機能【伝説の工房】が開放。装備の生産・強化が可能になりました』
「ふふ、アルス様。これでまた、聖域が賑やかになりますね」
セレスティアが嬉しそうに微笑む。
だが、その夜。
フィオナがアルスの寝室を訪れ、顔を赤くしながらとんでもないことを言い出した。
「あ、あの! アルス様! エルフの恩返しは……その……一生を捧げることと決まっているんです! だから、今日から私を……あなたの『専属メイド』にしてください!」
聖女、王女、精霊。
そこにエルフの工芸師まで加わり、アルスのスローライフ(?)はますます加速していくのだった。
第12話をお読みいただきありがとうございました!
ついに「村」としての形が整い始めました。
エルフの技術とアルスの【再構築】が組み合わされば、もはや作れないものはありません。
次回、第13話。「エルフ特製の『魔導コンロ』で、聖域に究極のグルメが誕生。……そして、王都のギルドが食糧難で助けを求めてくる」。
拠点の圧倒的な「豊かさ」を見せつける回になります!
続きをお楽しみに!




