第10話:国王、聖域のレベルの違いに絶望する
第10話をお読みいただきありがとうございます!
ついに一国の主、国王ラングリード三世が聖域に足を踏み入れます。
「鑑定士一人に国が動くなど」と高を括っていた王都の重鎮たちが、世界樹の「規格外」を目の当たりにして絶望し、そして平伏する。
第1章の最大の山場をお楽しみください!
迷宮都市ゼノスのさらに先、魔の森の深部。
本来なら人族を寄せ付けないはずのその場所に、王国史上最大規模の馬車列が到着していた。
「……アイリスよ。本当に、ここなのか?」
豪華な装飾が施された馬車から降り立ったのは、国王ラングリード三世。
その後ろには、王国最強の魔導師団と近衛騎士たちが、引きつった顔で控えている。
「はい、父上。ここから先がアルス殿の――『聖域』です」
アイリス王女が指し示した先。
そこには、王都の城壁すら子供の玩具に見えるほど巨大で、透き通るような白銀の防壁がそびえ立っていた。
「な、なんだあの壁は……!? 石ではない。魔力が結晶化したような、未知の物質……。鑑定士一人に、これほどの防衛設備が作れるはずが――」
軍事卿が叫びかけたその時。
門の横に鎮座していた「石像」――アークが、ゆっくりと紅い瞳を見開いた。
『――主の客人と認めます。武装解除の上、入域を許可する』
重低音の響きだけで、地面が震える。
王国最強を自負する騎士たちが、そのプレッシャーだけで一斉に膝を突いた。
「ひ、ひぃぃっ! 龍以上の魔力反応だと!? これがただの門番なのか!」
混乱の中、俺はイヴとセレスティアを連れて、のんびりと門を開けた。
「お待たせしました。辺境の鑑定士、アルスです。陛下、わざわざ遠くまでありがとうございます」
「あ、ああ……。……アルス殿、か。……アイリスから話は聞いていたが、私の想像はあまりにも矮小だったようだ」
国王は、門の向こうに広がる光景を見て、言葉を失った。
そこには、空を黄金に染める『世界樹』。その根元から湧き出すのは、一口で全魔力を回復させる『霊水』の川。
そして、庭に無造作に植えられた、国宝級の薬草たち。
「……アルス殿。あそこに転がっている、赤く輝く果実は……もしや伝説の【黄金の林檎】か?」
「ああ、おやつにちょうどいいんですよ。皮ごと食べると健康にいいですよ。……あ、そこの騎士の皆さん、喉が渇いてるならその辺の川の水を飲んでください。ただの霊水ですから」
「……ただの、だと……?」
国王は震える手でお茶(世界樹の若葉100%)を口にし、その瞬間、長年の激務で白かった髪が黒く染まり、肌に若々しい艶が戻った。
「……おお……おおお! 体の重荷が……呪いのような倦怠感が、すべて消えていく……! これほどの奇跡、王都の聖堂をすべて売っても買えんぞ!」
国王は、椅子から立ち上がると、震える声で告げた。
「……アイリス、軍事卿。聞きなさい。我がラングリード王国は、今日この時をもって、アルス殿を『一個の国家』として扱う。……いや、我が国が彼に従属する形でも構わん」
「陛下!? それは流石に――」
「黙れ! この男を敵に回せば、我が国は一日で地図から消える。逆に、彼の隣に座ることができれば……我が国は千年の繁栄を約束されるのだ!」
国王は、一国の主としてのプライドを捨て、俺に向かって深く頭を下げた。
「アルス殿。……いや、アルス様。この地を王国の干渉を受けない『絶対独立特区』として承認する。さらに、王室の全権をもって、貴殿を『大賢者』として迎え入れたい。……どうか、我が国に力を貸してはいただけまいか」
『国王ラングリード三世より、最大級の敬意と臣従の誓いを受けました』
『称号【王国の守護者】を獲得。王都でのあなたの権限が国王と同等になりました』
「そんな大層なものはいらないですよ。俺はただ、のんびり暮らしたいだけですから。……あ、そうだ陛下。王都にいる俺を追い出したパーティのことなんですが――」
俺がそう切り出すと、国王の目が、冷酷な統治者のそれへと変わった。
「案じるな、アルス様。我が国の至宝をコケにした愚か者どもには、この世で最も残酷な『後悔』を味わわせてやる。……アイリス、すぐにギルドを動かせ」
「御意、父上。……ふふ、楽しみですね、アルス様」
アイリスの不敵な笑みと共に、王都での「真のざまぁ」の幕が上がった。
第10話をお読みいただきありがとうございました!
国王、完全にアルスに心酔してしまいましたね。
「追い出した鑑定士が、実は国の命運を握る神だった」……これぞ王道の醍醐味です。
次回、第11話。「王都への帰還。元パーティ『獅子の咆哮』、ギルドから永久追放と奴隷落ちの宣告」。
ついに、ガイルたちの末路が確定します!
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