哀しい女編-1
私達は、心中した清美さんと夏実さんを見つけたわけだが、あの後とても大変だった。
二人とも無事だったが、清美さんは持病が悪化したのか苦しみ出し、隆さんがせおって病院に連れて行った。
残された私は、夏実さんを教会に連れて行った。牧師さんと二人がかりで親元に連絡する様に説得したが、泣き叫びながら拒絶された。
あまりにも激しく泣き叫ぶので、寝静まっていた教会の子供達が目を覚まし、大騒ぎ。近所の人から苦情を貰い、私はずっと頭を下げて謝っていた。
そうこうしているうちに隆さんが帰ってきて、三人がかりで騒ぐ子供達を寝かせ、夏実さんを我が家の連れていった。
だいぶ興奮しているようだが、お茶を飲ませて、客間に布団を引き半ば無理矢理寝かせた。
顔色は悪かったが、あれだけ叫んで疲れていたのだろう。布団に寝かせると、電気が切れたかのように眠り始めた。
もうすっかり夜だったが、この騒動のお陰で私の気分は昂ってしまい、寝られない。
余計に昂るとは思ったが、お茶を沸かし、茶の間のちゃぶ台でちびちびと飲んでいた。
「おお、疲れだったな、志乃……」
「本当……」
隆さんも疲れた様子で私の隣に座る。私と同じように寝巻きに着替えていたが、隆さんも眠れないようだった。
あぐらをかき、ため息をつきながらお茶を啜る。
「ところで清美さんは大丈夫だった。入院したのよね」
「いや、身体の方がかなり悪いようだ。あっちは親元に連絡がついたが、どうなるか……」
「そう」
その話を聞いて、ますます眠れそうになかったが、とりあえず二人で祈ってみた。あまり長々と祈りは出来なかったが清美さんについては、祈る事しか出来ないだろう。
問題は夏実さんの事だ。
「隆さん、夏実さんはどうすれば。そもそそもウチのにいても良いものか……」
今は夏実さんを家に置いている状況だが、これからどうすれば良いのか判断がつかない。隆さんに指示を仰ぎ、従うのが一番良いと思ったが。
「そうだな。とりあえず今は家に置いておこう」
「カルト教団のマリアの涙や動物殺しと何か関係はあるのかしら……」
向井からは、夏実はマリアの涙の信者である事は確定で、動物を殺している噂もあると聞いたが。また、隆さんは仕事で清美さんに会った時、友達がマリアの涙の信者だと聞かされた事もあったという。こういう事だったのかと納得した表情を見せていた。
「わからない。ただ、ここに置いておけば、何か事情を話す可能性もあるとりあえず、今はあの夏実って女の面倒を見るか」
「わかった」
あまりにも私が素直に従うので、隆さんは拍子抜けした顔になっていた。
「いいのか。教会の子供の面倒を見る上、あの女の面倒を見るのは大変じゃないか?」
「いいえ。あのまま放っておくのは、できません」
「志乃、意外とお前は頑固な面もあるな」
「そんなんじゃないけど、別に子供一人増えたと思えばあんまり大変では無いと思う」
私が、あの川辺に落ちていた手紙を取り出して隆さんに見せた。あのまま持ってきてしまったが、まだ中見は見ていなかった。
「これが手紙というか、遺書か」
隆さんは私から手紙をそっと取ると、中身を開いて読み始めた。
しばらく無言で読み続けていたが、深くため息をついて私に手紙を渡す。
「何て書いてあったの?」
「とりあえず読んで見ろ」
私は隆さんに従って、手紙を読んで見る事にした。手紙は夏実さんが書いたもので、残されたものに宛てられた遺書だった。
この手紙では、夏実さんから清美さんの禁断の愛が綴られていた。読んでいると苦しくなるような内容だった。夏実さんの想いは、清美さんには通じず薬を飲ませて無理心中するという事も書かれている。
最初の予想と違って、同性愛同士の無理心中というわけではなかったが、辛い手紙である事は変わりはなかった。清美さんの身体が悪く、一緒にいられる時間も短いかも知れないというのも夏実さんを追い詰めた要因の一つらしかった。
ただ、マリアの涙や動物殺しについては手紙には何も書かれていない。夏実さんは「清美さんと自分は何もかも違う」と綴られていた。
私はため息をつきながら、手紙を丁寧のたたみ直し、封筒に戻した。
「どうしましょうか、隆さん」
「まあ、この様子だと同士愛が罪だとかは言わない方がいいな。あくまでも普通に接すると良い」
「でも、向こうが教会の関係者の家にいるには嫌がるかも」
「まあ、それは仕方ないだろ」
隆さんは欠伸をして、髪の毛をかきむしった。こうして話しているうちに、隆さんも私も眠気が襲ってきた。
今日は楽しい一日中のはずだったが、台無しのなってしまった。とはいえ、文句を言える立場でもない。自分達はいつでも遊びに出かけられるが、夏実さんの心情を思うとあまり笑えない。
「そろそろ寝るか」
「そうね」
私達は茶の間を退き、自分達の寝室の向かった。
布団を敷きしばらく夏実さんや清美さんについて祈ってから布団に入った。
眠いはずだが、このまま一人で眠る気分になれない。長い間、口付け交わし同じ布団の中で眠った。




