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神様の愛編-6

 隆さんが予約してくれら洋食屋は、デパートから少し離れた路地裏のような場所にあった。


 人があまりいない通路にあり、看板も目立つところの無いので気づかないで通り過ぎるところだった。


 外見は西洋風の建物だったが、こじんまりとしていて可愛らしい雰囲気もあった。


 入店するとテーブルは、6席ほど。洋食屋らしく出汁か何かの良い匂いが鼻をくすぐる。


 他の客でテーブルは埋まっていたが、予約していたのですぐに座れた。


 このお店は向井の知り合いが営業している所だという。給仕している黒いワンピースに白いエプロンをつけた若い女性は、向井と知り合いのようだった。


「あら、向井さんの紹介でいらしたのね。あの大食漢、まだツケ払っていないのよ」

「ここでもツケ払っていないのか…」


 それを聞いて隆さんは、心底呆れていて私も思わず苦笑してしまう。


 給仕の女性にオススメの料理を質問し、二人ともカツカレーを注文したした。店に中であるが、神様に祈りをさ捧げて食べ始めた。


 カツカレーは家でも作った事があるが、銀食器に綺麗に盛り付けられている。やっぱりお店のものは家庭料理と違うと思わされた。


 スパイスの香りが鼻をくすぐったが、思ったよりまろやかで甘い口当たりだった。家で作るカレーはとろみをつけるのが、ちょっと難しく一度失敗した事がある。それでも隆さんは文句を言わずに食べてくれた事も思い出し、再び嬉しい気持ちになってしまった。


「そういえば、太郎の父親が教会に来たんだったな。親父から聞いた」


 話題は太郎くんの事になった。太郎くんは最初は頑なだったが、結局話し合いに参加し、親と和解できたと言う。もっとも太郎くんの父親である藤沢さんは、病気がかなり悪化してしまっているので、今は入院中だった。太郎くんも引き続き教会で暮らす事になると言う。


「太郎くんのお父さんも福音を信じてくれて良かったね」

「そうだな。寺や神社の御守りをいくら買い漁っても解決しないだろうな」


 私が深く頷く。


 輪廻転生は無いと思うが、やっぱり神様に赦して貰って天国に行く方が良いと思えてならない。


「輪廻転生って無いのよね」

「ないな」


 隆さんははっきりと断言していた。


「不幸が前世のせいだというなら、苦しむ人に手を差し伸べる必要も無い。聖書でもそんな事は一行も書いていない。むしろ、イエス様は苦しむ病人にも子供にも優しく謙っていた。神殿で商売する狡賢いヤツらにはブチ切れてたしな。輪廻転生っていう思想は、元々生まれ育ちが恵まれた強者が作る都合の良い御伽話だ」


 再び私は深く頷く。


「それに前世の記憶が無いヤツとそうでないヤツがいるのもおかしい。神様がそんな不公平な事をする訳がない」

「そうね。それに来世があるから今なんてどうでも良いって雑に生きる事にもなりそう」

「そうだな」


 隆さんは私の意見にも同意してくれた。


「このカレーライスの起源があるインドも輪廻転生思想があるから、差別や身分制度が生まれている。貧乏人や病人は前世が悪いから支配者達に虐げられていても反抗しないらしい。むしろ、そうすれば来世は良いものに生まれ変わるって信じているらしい」

「酷い。そんなの不公平じゃない」

「もともと輪廻転生とは古代インド奴隷制度を行っていたバラモン教の教えだ。貧乏人や病人の身分差別を正当化するもので本当に支配層にだけに都合が良い」

「つまり弱者にはちっとも優しくない教えなのね」


 思わず口を尖らせてしまう。このカレーライスは美味しいが、インドに生まれなくて良かったと思ってしまった。両親が死んだ辛い時期に「前世のせいだ」と差別されていたとしたら、自ら死を選ぶ事も考えたかも知れない。私は孤児という弱者だったからよくわかる。


「その点、私達の神様は完璧に公平だ。イエス様を信じて罪を悔い改めれば、誰でも天国に行ける。今、苦しんでいる人も虐げられている人も一発逆転大ホームランだ」

「これって結構凄い事よね。聖書に書いてある通り、今悲しんでいる人は幸い。イエス様がおっしゃっている事は、この世の価値観とは全く逆なのよね。金持ちや成功者は、聖書読んでもあんまりピンとこない気がするわ」

「そうだな。神様は本当に公平なお方で金や地位の成功の裏には、それなりの苦悩が伴うように作っておられるしな」


 結局話題は、神様の事になり、温かい気持ちになってしまった。


「善行もしきたりも要らないのね」

「ああ、本当に恵みだな。行いも神様信じていれば、自然と伴うものも多いしな」


 再び、深く頷きカレーライスを食べる。


「隆さん、天国に行っても仲良くしてくださいね」

「ああ、そうだな。天国でも一緒に讃美歌いっぱい歌っていたいね」


 こうして二人で笑いあい、カレーライスを完食した。

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