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浮気疑惑編-7

 夜になった。


 私は風呂から上がり、髪の毛をかるく結と寝室に直行した。


 いつもと同じ行動ではあるが、なぜか緊張してしまった。

 向井の爆弾のような発言から、空気が変わってしまった。

 隆さんは急に無口になり、無理矢理向井を家から追い出してしまった。それは良いのだが、この後の空気は重い。


 隆さんは一言も喋らず、風呂に直行。


 私は夕飯の片付けや布団の準備など、明日のご飯の準備など細々とした家事に追われて忙しかったが、黙りこくっている隆さんを思うと気が気でない。


 別に浮気だとは疑って居ない。隆さんはそんな事をするわけがないと信じている。和菓子屋にご主人だって、わざわざ否定してくれた。


 それなのに目の前にいる隆さんは黙りこくっている。その姿を思うと、不安が込み上げてくるようだ。


 いつもなら安心しきって寝室で一緒に眠るわけだが、今日は緊張しながら障子を開ける。


 隆さんは、まだ眠っていなかった。


 寝巻き姿で仰向けに布団の上でごろ寝している。その表情は、無表情というよりさらに難しい表情になっていた。


「お風呂、上がりましたよ」


 他に言う事も思い浮かばず、よそよそしく自分の布団に入る。


 すると、隆さんは私を覆うように体制を変え、軽く口付けをしてきた。いつもと違った唇の感覚がした。思わず拒絶してしまった。


 こんな事は初めてだった。自分でもなぜこんな事をしたかわからない。


 隆さんは、すぐに自分の布団に戻るが、さらに二人の間に重い空気が付き纏い始めた。


「志乃、もうあんまり向井を家に入れるなよ」

「どうしてですか?」

「あいつが居ると煩くてたまらない」

「ええ。わかりました」


 私があっさりと同意した為、隆さんは拍子抜けしていた。


「その前の一緒に祈りませんか? 私、あの華族の女性びついても気になります」


 自分の問題も確かに気になるわけだが、ふと脳裏に彼女の顔写真が浮かぶ。このままにして置くのも間違っているように感じてしまった。


「そうか、そうだな」


 その点については納得してくれたようで、起き上がり、畳に膝をつけて二人でしばらく祈った。


 普段は、祈った後は頭がスッキリしたり、心が穏やかになるものだが今回はなぜかあの女性の顔がつきまとい、悲しい気持ちを引きずってしまった。


 なぜか、隆さんも渋い顔しながら謝ってきた。


「実は、小説の仕事の事で女と会っているんだ」

「え……?」


 思ってもみない言葉で、頭の中は真っ白になってしまった。


「ただ、やましい関係ではない。志乃を悲しませる事はして居ないよ」

「本当?」


 その言葉を疑ってしまった自分にとての嫌な気持ちになってしまった。


「ただ、詳しくは話せない。小説の仕事は大変なんだ」

「そう……」


 正直に話してくれた事は嬉しいが、釈然としない。何か隠しているのは、事実であるが、深く追求する事もできなくなってしまった。


 浮気を疑っているわけでが無いが、隠し事をされているような状況は、あまり良い気分はしなかった。


 その後、いつものように隆さんと一緒の布団で眠ったわけだが、いくら優しく触られても胸の内には不安が雪みたいに積もっていく。


 もうすっかり春なのに、心の中の雪解けは遠いようだった。

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