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朝食を食べる前に今後の予定を話そう

「それじゃ、私は着替えてくるね~」


 俺が止める間もなく、セラビミアは下着姿のまま部屋を出て行ってしまった。


 昨晩は何もなかったのだが、周囲はそう思わないだろう。


「朝から重い話をするなよ」


 どっと疲れが押し寄せてベッドの上で横になった。体を動かすのもつらい。


 何もする気が起きずゴロゴロしていると、二人のメイドが入ってきた。


「失礼いたします。お食事が用意できました」


 視線を向けると、目だけ動かして床に散らばっているセラビミアの服を見ている。


 メイドの脳内では、俺が一方的に襲われて吸い尽くされ、倒れている。なんて妄想が広がっているだろうな。


 否定しても恥ずかしがっているだけと勘違いされてしまうだけである。なら、自然と振る舞うほうがいいだろう。


「わかった。すぐに行くと伝えてくれ」

「かしこまりました」


 メイドの一人がどこかに行き、もう一人は部屋の隅で立ったまま待機している。


 案内するためにいるのだ。


 ダラダラしている姿を見続けられても居心地が悪い。


 気合いを入れて起き上がると、着替えて顔を洗ってからメイドのところへ行く。彼女は頭を軽く下げてから、背を向けて歩き出した。


 後を追って、通路を歩く。

 すれ違う人々の視線が俺に集まっている。


 すでにセラビミアとヤったという噂は広がっていると思って良いだろう。


 実際には手を出してないのに酷い話である。


 だが、ジラール家の醜聞なんて数多くあるんだから、一つぐらい増えても問題はない。レベルアップさせてもらったお礼として受け取ろう。


 避けるべきなのは革命編への突入だ。それだけ気をつければいい。


 メイドがドアを開けてくれたので食堂へ入る。


 十人は同時に食事できそうな大きなテーブルがあり、ユリアンヌとアデーレは手前の席で横に並んで座っていた。


 俺に気づくと二人とも俺へ笑顔を向けてくれる。セラビミアとの噂を聞いていると思うが、機嫌は悪くなさそうだ。


 壁際には複数のメイドが待機していて、そのうちの一人が入り口に近い右側の誕生日席に移動すると椅子を引いてくれた。


 席はここ、ということなんだろう。大人しく従って着席する。


「よく寝られたか?」

「私たちは、ぐっすり寝れましたよ。ね、アデーレ?」

「はい。ユリアンヌと楽しくおしゃべりをしてから、しっかりと寝ました」


 なんとなくトゲがあると感じてしまう。


 妻たちは積極的に協力している風にも見えたので。気のせいだとは思うが……。


「旦那様はどうでしたか?」

「酒を飲んですぐに――」

「私と熱い夜を過ごした、そうだよね?」


 薄い黄色のドレスに着替えたセラビミアが俺にウィンクをした。


 かわいいが、あざとい。


 これで手を抜いてしまうほど、俺は甘くないぞ。


「酔ってすぐ寝た。それだけだ。何もしていない」

「だって。冷たい男だよね」


 笑いながらセラビミアはユリアンヌとアデーレの間に立ち、顔を近づける。


「だから、安心して良いよ……今のところはね。もう少しだけジラール男爵を預けておくよ」


 不吉なことを言ってから、セラビミアは俺の正面の席に座った。


「朝食を食べる前に今後の予定を話そう」


 ふと、この場にイングリット令嬢やクリストフ王子がいないと気づいた。


 誘拐事件は国中へ広がっているので、家臣にも隠しているのだろう。当然の対応だ。違和感はない。あるとしたら、この場で今後の話をするということである。


 イングリット令嬢を匿っている部屋ではなく、食堂でするというのであれば、誘拐ではなく本来の目的を話したいのだろう。


「改めて確認したいんだけど、メルートを殺してヴァンパイア・ソードに封じ込められた魂を移す必要があるんだよね?」


 解呪方法については馬車に乗っている間、妻たちには伝えている。


 口を挟むようなことはなく静かに聞いていた。


「それも可能な限り無傷で、な」


 セラビミアの言葉に補足した。


 剣から魂をメルートへ移すため、死んだばかりでかつ損傷は少ない方が望ましい。


「じゃあ毒殺が良いのかな? でも体内に残り続けたら魂を移しても死んじゃうんじゃない?」


 確かに! 腰にぶら下げているヴァンパイア・ソードを軽く叩いて聞いてみる。


『私の魂が入れば本来の力を取り戻せる。すぐに体は回復させ、解毒するから問題ない』


 ヴァンパイアすら殺すほどの毒だとしても自信がありそうだ。メルートとは格が違うのだろうか。


 俺からすれば魂を移した瞬間に死亡しても不都合はない。実際にやってみないと分からないことも多いので、考えるだけ時間の無駄だ。どちらでもいいか。


「それは問題ないらしい。新鮮なヴァンパイアの死体を用意すれば解決する」

「へー。それは、私すら知らない能力だ」


 目を鋭くさせ、セラビミアがヴァンパイア・ソードを見た。


 ゲームの制作者であり、世界のことを知っている神ごとき存在であるのに、知らないとは想定外である。これも現実になったから設定が変わったのだろうか。


「傷のない死体さえ用意すれば良いのであれば、やりようはあるね」


 セラビミアがヴァンパイア・ソードから俺へ移る。


「毒の用意ならできるけど、どうする?」

「手配済みだ」


 王都へ行く前にハイナーへ依頼している。今頃は入手しているころだろう。


 セラビミアの力は借りる必要がない。


「じゃあ、飲ませれば良いだけか。でも、難しいよね」

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