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俺を無視して話を進めるんじゃねぇ!

「どうやら、レックス君は私を敵に回したいみたいだね」


 また戦闘が発生するんじゃないかと警戒しているが、セラビミアは笑顔のまま動かない。


 その代わり、周囲が騒がしくなった。


 誰かが制止する声と怒鳴り声、複数の足音などが聞こえる。


 リーム公爵の屋敷を管理しているレックスを見るが、驚いている顔をしているので、何も知らないのだろう。


 仕掛け人は、どうやらセラビミアで確定だな。


「お待ちください! この部屋は勇者様がジラール男爵を――」


「そんなもん知っている! だから来たのだ! どけッ!」


 小さい悲鳴と倒れる音が聞こえると、ドアが開いた。


 全員の視線が来訪者に集中する。


 オールバックの髪にがっちりとした体型の男で、優しい顔をしておりギャップがある。


 こいつは知っているぞ。


「遅かったね。ベルモンド伯爵」


 ジャックの寄親でありながらも領地を狙ってきた男だ。


 結婚式には招待せず、関係を断ち切ろうとしていたのだが……。


 どうやらセラビミアが呼び寄せたみたいだが、何を狙っている。


「これでも急いできたんですよ」


 俺やベルタなんて興味はないようで、ベルモンド伯爵は一度も見ない。


 傲慢な態度が鼻につく。


 やはり関係を断ち切ろう。


 そして、裏切ったことを後悔させてやる。


「言い訳はその程度にして。ちゃんと持ってきたんだよね?」


「もちろんです。国王陛下からの書状はこちらです」


 ベルモンド伯爵の登場に衝撃を受けて気づくのに遅れてしまったが、手には丸められた羊皮紙があった。


 何が書いてあるのか気になっていると、レックスが叫ぶ。


「俺を無視して話を進めるんじゃねぇ!」


 この程度で切れるなんてプライドが高すぎるな。


 どんな育ちをすれば、こうなるんだ?


 平民ではなさそうだから貴族、しかも上位かもしれない。


「まぁまぁ、落ち着いてください」


 レックスを見たベルモンド伯爵は、苦笑いを浮かべながら言った。


 セラビミアの味方をしているようだが、新勇者を敵に回したくはないようだ。


 伯爵と言えば貴族としても上位に位置するのだが、レックス相手にも下手に出ている。


「これを見れば、レックス様もご理解いただけると思いますので」


 ベルモンド伯爵は手に持っていた羊皮紙を開くと、文字が読めるように掲げる。


 リーム公爵暗殺の犯人が捕まったとの記載があり、正体は料金を踏み倒された暗殺ギルドだったこと説明されている。


 いくら未払いだったとして、暗殺ギルドが公爵家の当主を暗殺するか? できるのか?


 疑問ばかりが浮かぶ。


 内容は想像できないが、セラビミアと国王との間で何らかの交渉がおこなわれたのだろう。


 でなければ、こんな早く王家から承認は得られない。


 仮に犯人判明の情報が罠だとしても、セラビミアは俺の協力が必要なのだから、俺が死ぬことはないだろう。


 少なくとも今より状況は悪化しない。

 今は様子を見ておくか。


「どういうことだ……信じられない……」


 犯人捜しという大義名分を失い、レックスから勢いが失われ、戸惑っている。


 王家から、はしごを外されたという表現がぴったりだ。


 俺がやったことではないが、気分は良いな!


「公的文書の偽造は重罪です。こんなところで、嘘をつくはずがありませんよ」


 なだめようとして、ベルモンド伯爵は優しい声色で言いながら、レックスの肩に手を置いた。


「ご理解いただけますよね?」


 二人は数秒見つめ合い、小言で短い会話がされる。


 残念ながら聞き取れなかったが、レックスは納得したのか落ち着いた。


「そうだな。王家が発行した書類に間違いない。よく見せてくれ」


 出会ってわずかな時間しか経っていないが、らしくないなと感じる。


 アイツがすぐに説得されるタイプか?


 なんだか違和感があるんだよな。


 レックスの歩く姿を見守っていると、セラビミアの前に立って羊皮紙をつかもうと腕を伸ばす。


 ん? ちょっと腕の位置が高くないか?


 あれだと手に触れて……!


 今、セラビミアに暴走されたら、俺の命が危ないかもしれない!


 ムカつくが、邪魔をしなければならん。


 魔力貯蔵の臓器を全開放して身体能力を強化。


 走り、セラビミアの手を触る。


 数瞬遅れて、レックスの手が俺に触れた。


 体から離れていきそうな感覚があったので、気合いで呼び戻す。


 一度成功したからなのか、二度目は簡単に抵抗できたようだ。


「ジラール男爵?」


 何も分かっていないセラビミアは、首をかしげながら俺の名を呼んだ。


 澄んだ声とかわいらしい仕草があわさり、人を魅了する美しさを発している。


 見た目は良いからズルいよな。


 いろんな男が騙されそうだ。


 まぁ、俺は例外ではあるが。


「俺も関係者だからな。真犯人に興味があるんだよ」


 レックスの手を払いのけて羊皮紙を奪い取る。


 斜め読みして押印された紋章を確認すると、レックスの胸に押しつける。


「確認は終わりました。後はご自由にどうぞ」


「ジラール男爵ッ!」


「何なんでしょう?」


 あえて相手がイラつくような笑みを浮かべる。


「セラビミアに触れなかったことが、悔しかったのでしょうか?」


「……ッ!」


 顔に出すぎだな。


 こいつは人と接触することが条件で、何らかの特殊能力を発動させることが確定した。


 効果は分からないが、セラビミアにでも聞けばヒントぐらいは手に入るだろう。

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