3話
他人が優で自分は劣。
常に世の中はそうなっていると思う。
自分より優れているのが他人、他人より劣っているのが自分。
自分より人生成功しているのが他人、他人より人生失敗しているのが自分。
自分より社会に貢献しているのが他人、他人より社会の重荷になっているのが自分。
自分より出来るのが他人、何も出来ない何をやっても上手くいかないのが自分。
自分には人としての価値がない。
自分には生きる価値がない。
自分は生きていない方が良い。
自分は
死ぬべき人間で消えるべき人間なんだ。
目を覚ますと、見慣れぬ天井があった。
どこだ…ここ。
背中にあるのは多分ベッドだろう。
「う…」
重い身体を起こすとベッドの横にある椅子に座る男がいた。
「生明さん…?」
辺りを見回すと、ここは病室と思われる部屋である事が分かった。
あぁ、思い出した。
確か俺は風呂で自殺しよとしてたんだっけ…。
「いやぁ、驚きました。宵さんの家行ったら、宵さんお風呂で手首切って気絶してたんですよ?
ホント、寿命縮みましたよ。」
生明さんはヘラヘラしながらそう言った。
「どうして家に来たんですか。別に用もなかったでしょ。」
「うぅん、まぁそうでしたけど…。何となく?的な。」
「来ないで下さいよ。貴方が来てなかったら今頃俺は死ねてたんですよ。」
「…単刀直入に言わせていただきますね。
こんな事、もう止めて下さい。僕、宵さんに死んで欲しくないんです。」
今度は真面目そうに言った。
「じゃあ俺は生明さんの為に生きろって言うんですか。」
「そうじゃなくて━━」
「なら何なんですか。
生きる意味も何もない奴にどうして生きろって言うんですか。あぁ、アレですか。自殺しようとしてる人に言う決まり文句ですか。」
「違います!」
「そんなに俺を獸狩隊に入らせたいんですか。」
「え?」
「俺があの化物の血を冷たいって言ったからですか。」
「それは…」
生明さんは否定をしなかった。
図星かよ。
「利用する為に助けたいっていうのならやめてください。そういうのって中途半端に助けてその後は見離すんでしょ。そんなんなら、最初から希望なんて見せないで下さいよ。」
「人生で大きな挫折があっても、それでも立ち直って前を向いて生きていく人だって━━━」
「だから貴方も立ち直れますって言いたいんですか。
自分と他人が同じ物差しで測るなよ。
そもそも、アンタ何様だよ。アンタは俺の素性を知ってるだけで、俺の気持ちを分かってるわけでもないだろ。なのにいちいち口出しするなよ。」
あ、自分最低だな。
彼は善意で俺を助けたつもりなのに、なんてこと言ってんだよ。
冷静さを取り戻してきたがその頃にはもう遅かった。
生明さんの顔を見ると少しポカンとしたような、呆れたような、そもそもこの人の表情から感情を読み取るのは難しい。だって笑顔でも目笑ってないし。
でも、今分かるのは俺が最低な事をしたということ。
「すみません、今日は帰ってもらっていいですか。」
「あ、はい、僕の方こそすみません。じゃ。」
「…すみません、本当にすみません。」
俺は生明さんの背中を見てボソボソと謝る事しか出来なかった。
やっぱり感情に任せて物を言うのは良くないんだよなぁ。
あーあ、絶対嫌われたよな。そりゃそうだよな。
もう、会わなくて良いのか…って何考えてんだ俺。
それじゃまるで、俺が生明さんの事が嫌いみたいじゃないか。
…あれ?俺あの人嫌いなのか?
いやいや、嫌いなのに嫌われたくないってわがままかよ。
「…こんな人間、嫌いになってくれよ。」
1週間後、俺は退院出来た。
医者には心療内科に行った方が良いと言われたが、予約空いて無さすぎて多分行かない。
「退院おめでとうございます。」
「あ、どうも。」
病室で荷物を纏めていたら看護婦さんに話しかけられた。
「宵さんが入院してる間、毎日生明さんって人がお見舞い来てくれてましたよ。でも、病室にも入らずに入口からチラッと覗いて、しばらくしてから帰るだけなんですけどね。」
「…そうだったんですか。」
なんか、申し訳ないな。俺があんな事言ったばっかりに。
というか、あの人暇なのかな。
病院を出た俺は少し…いや、だいぶ歩いてさっき出たのとは別の病院に入った。
見慣れた廊下、やり慣れた面会手続き、見慣れた病室。
5年前から何度も来ている。
俺にはそれぐらいしか出来ないから。
俺は病室にある彼女の眠るベッドの前に来た。
彼女の名は慧取燦夏。
俺の唯一の友人で、俺のせいで植物状態になった人だ。
後半文章雑く書いちゃいました。大目に見てもらえると幸いです。
あと、今回他の話に比べると短めです。