転生した俺は異世界で皆を幸せにしたいので、白い粉を作る
短編です。頭に一瞬過ったので書いてみました。
「……素晴らしいな」
目の前には一面の緑。
白い粉の原料である竹に似た植物が広がっている。
こことは離れているが、山の方の区画には大根に似た植物が育てられている。
「旦那様。今年の生産量は『ホワイト』が2000トン。『ダーク』が1000トン。『ブラウン』が『500』トン。『クリスタル』はまだ稼働したばかりですので100トンとなっております」
ちらりと横を見ると別の作業員が白い粉を袋に詰めている。
作業員の表情は真剣そのもの。
真剣なのは、もし粉を零した場合の損失の額がデカすぎるせいだ。
この世界での粉は高級品。貴族でも自由に使う事が出来るのは上位の奴等だけだ。
「『ブラウンクリスタル』の生産施設はどうなってる?」
「8割方完成したとのことです。夏には稼働できる状態になる見込みです」
「そうか」
クリスタルは製造も大変な為今のところは大貴族と王族にしか降ろしていない。
「高等学院入学の件はどうなさるので?」
「俺にとっては、興味も行く意味もないが──」
首に巻き付けた布で汗を拭う少女の姿が見える。
「あいつの為だからな」
「では入学すると返事をしておきます」
「頼む」
緑の中から見える太陽の如き笑顔。
その幸せそうな顔の為に俺はこれまで事業を大きくしてきた。
これからもそれは変わらない。
俺は皆を幸せにする為にこの世界にいるんだ。他の物は全てついでに過ぎない。
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