人には言えない悩み
私には誰にも言えない悩みがある。
人には言えない事など誰しも一つはあるだろう。しかし、私は目下この悩みのせいで生活に支障が出てきてるのだ。
早急に解決しないといけないのは分かっているが人には言えない。
このままでは仕事も出来ない。やっと、やっと夢だった小説家として本を出したのにこんな事(一大事だけど)で仕事が出来ないのはつら過ぎる!!! 夢を実現させたのにそれをこんなにも早く潰すなんて絶対に嫌だ。
私は意を決してある場所へ向かった。
「葛田さん二番へお入りください」
看護師さんの声にビクッと肩を震わせ、私、葛田律子は二番診察室へ入った。
私の人には言えない悩みは病院でしか解決出来ない状態まできてしまっていたのだ。
緊張しながら診察室に入るとそこには目の覚めるような美形領主(医者)と仕事に忠実そうな従者(看護師)がいた。<律子ヴィジョンです>
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!
即座に回れ右をしてドアに手を掛けようとしたが
「葛田さん、まずは問診から始めますので辛いかもしれませんが、椅子に座ってもらえますか」
一歩遅かった。
渋々慎重に椅子に座る。
女医さんはいないことは覚悟してたけど、こんな若くてイケメンとか絶対有り得ないでしょ!! こういう場合は、おじいちゃん先生って相場じゃないの!?
心の中で大絶叫
私の心は今や大型台風に家の屋根を吹き飛ばされて、更に電線に屋根が衝突して大停電で自分の状況も分からず、どうしていいか分からないパニック状態だ。
私の大荒れの心の声など聴こえない(当たり前)ように問診はスムーズに行われた(ここまでで既に羞恥プレイ。ゴリゴリと神経が削られてHPはほぼゼロ)
「それでは患部を診るのでこちらの診察台へ下着まで脱いでうつ伏せでお願いします。ここにタオルが置いてあるので下半身に掛けてお待ちください」
看護師の無情な言葉に私は慄いた。
それは死刑宣告
完全に詰んだ。
うら若き乙女が見ず知らずの男(注意:イケメン医者)に下半身を見せるなんて、なんて破廉恥! なんて拷問! しかしここまで来たらやるしかない。それに私は悩みを解決するために、言い換えれば下半身を見せにここに来たのだ(混乱)
私は意を決してスカートを脱ぎ、ストッキングを脱ぎ、下着に手をかけ、下着と共に恥を捨てた。
診察台でうつ伏せに死刑執行を待つ。
仕切りのカーテンが開かれイケメン(注意:医者)が入ってきた。
ドキドキしながらその時を待つと
「葛田さん、患部を診ますので膝を立ててお尻を上げてください」
プレイのハードル上げてきた━━!!
見ず知らずの男(二回目)に四つん這いになって尻を見せるという羞恥プレイ!! HPはマイナスだよ!! それでも背に腹はかえられない。のろのろと私は尻を上げた。
「内痔核、いぼ痔ですね。うーん、薬だけでは難しいので外来処置になります。しばらくは通院してもらいますね」
死刑執行って一回じゃないの!?
余りの衝撃に診察後の治療説明もうわの空で私は病院を出た。
そう、私の人には言えない悩みとは「痔」だ。
小説家という職業柄長時間椅子に座って作業し、筆が乗ると水分もろくに取らずトイレも我慢した結果、痔になってしまった。
少しでも運動など身体を動かしていれば良かったのだろうけど執筆以外は資料探しや読み込みのインプット作業でやはり座りっぱなし。改善などされるわけが無い。
悪化の一途を辿る。今やドーナツ座布団は私の親友だ。
これからしばらくあのイケメンに尻を見せ続けなければいけないという拷問が決定して私は真っ白に燃え尽きた。
おやっさん、もう立てねーよ(あ◯たのジョー風)。
どこにもいない架空のおやっさん(眼帯のセコンド。首にタオルをぶら下げてる)に向かって私は呟いた。
私が真っ白に燃え尽きている頃、病院では
「葛田さん、綺麗な人だったな。彼氏いるのかな」
痔持ち作家に一目惚れしたイケメンの医者が次回の診療を心待ちにしていた。
診療を重ねる毎に心を殺していく(悟りを開く)作家と診療を重ねる毎に恋心を募らせる医者
最後はハッピーエンドです(たぶん)