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72話 次回の対戦相手

 領に戻ると俺はカナツさんに掴まった。

 カナツさんは大将という立場からか、領の皆に言えない愚痴を俺に零すことがある。〈戦柱(モノリス)〉のある泉に連れ出されたのだった。


「駄目だー! ハクハとの順位が全然縮まらないよ!」


 メイル領との戦いから一か月。

 互いの領が戦を終えた頃だと、カナツさんは順位の変動がないかを〈戦柱モノリス〉に触れて、何度か石碑の表面をスクロールさせる。

 その姿は、まるで、巨大なタブレットみたいだと思うが、〈戦柱モノリス〉は充電式ではないし、どこかにメーカーのマークが刻まれている訳でもない。

 ただ、俺がそういうふうに解釈しているだけだ。

 自分の知っている物で比べているだけのこと。


「あ、でも、メイル領とクガン領の順位は変わってますよ? へー、こんな風に表示されてるんですねー」


 そう言えば、俺は順位画面を見たことがない。

 俺が触れると自分の力しか見れない仕様になっているようだ。

戦柱モノリス〉に表示される順位は、3位までは俺が聞いていたものと同じだったが、その下――四位と五位の順位が動いていた。

 一位はハクハ領。

 二位はカラマリ領。

 三位はロゼ領。

 そして、俺が聞いていた限りでは、四位はメイル領で五位がクガン領の筈だったが、その二つの順位が変わっていた。


「私達がメイル領を倒したし、クガン領も恐らく勝利したんだろうね?! って、別に下の領の順位なんていいじゃんか! 上を見ようよ! リョータ!」


 カナツさんが狙うは優勝だ。

 だとすれば強力なライバルであるハクハを重要視するのは分かるけど――


「そういう訳にはいかないですよ……」


 俺は違う。

 クガン領が勝利したと知れば当然、土通さんのことを考えてしまう。

 俺と同じ異世界人で、先輩の幼馴染で彼女。

 至って普通の彼女は、この世界で人を殺した。俺の目の前で、二人の兵士を殺して見せた。確かにこの世界ではそれが当たり前のことだし、責める理由もない。

 それでも、同じ世界の俺としては――躊躇なく人を殺した土通さんが怖かった。

 彼女は今回の戦でどれくらいの人を殺したのだろう。


「諏訪さんもそうだ」


 メイル領の異世界人として俺の前に立った。

 そして戦った。しかも『爆弾』なんてものまで持ち出し、カラマリ領を苦しめた。俺が『爆弾』を知っていたからこそ、なんとか回避できたが、最悪多数の死人が出てもおかしくなかった。

 人を殺そうとしたことには変わらない。

 でも、それは……。


「うん? どうしたんだ、リョータ?」


「いえ……、別に」


 俺かカナツさんの答えに言葉を濁す。

 同じ世界の人間が人を殺すことに抵抗を覚える。などと言ったところで、変に思われるのは俺だ。この世界では戦の中で命を奪い合うのは当たり前なのだから。


 そう考えると――やはり、もう一度、先輩とどこかでゆっくりと話したいな。〈紫骨の亡霊〉の時は、それどころじゃなかったし。


 ヒーローを気取った格好をしているが、まだ、戦を嫌うという点では話ができるかもしれない。

先輩は確か最下位の領に所属しているんだよね……?

 俺が最下位の名前を確認しようとした時――「ぷつり」と強制的に表示されていた石碑の文字が切り替わった。


「なっ!?」


 カナツさんが画面を切り替えたと思ったのだが、どうやら違うらしい。カナツさんが緊張した面持ちで石碑に映し出された画面に視線を這わす。

 俺もそれを真似るようにして文字を読んでいく。

 映し出された文字は――、次回の戦における日時と項目。

そして――対戦相手だった。


「一週間後、戦内容は『団体戦』。対戦相手は――ロゼ領ですか」


 日時は分かるが戦内容の『団体戦』はよくわからない。団体って今までも普通に領で戦っているから団体ではないか? それに対戦相手は三位のロゼ領。

 初めての対戦相手だ。

 俺はどんな相手なのかカナツさんに聞こうと横を見ると――


「最悪だ……」


青ざめた顔で石碑を睨みつけていた。


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