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33話 レベルアップの効果と大将の存在

今回は少し短いです。

「ケインは勝てたのか……?」


 悠々と、カラマリ領で畑仕事をしていたであろう分身に、俺の意識が移行した。殺されると戻される。その特性を、クガン領の時には利用したが、やはり不便であることに変わりはない。

 俺を殺したケインがどうなったのか、確かめる術はない。


 ただ、無事であってくれと祈るばかりだ。

 それに、怪我を負った先輩も大丈夫なのだろうか?

 かなり痛そうだったし……。


「俺に出来るのは、報告だけか」


 今からアサイド領に向かっても間に合わない。役立たずの経験値に出来ることは、何が起こったのかを伝えることだけだ。

 自分に出来ることをやろう。


 取り敢えず城に行けば誰かしらいるだろう。

 俺は策に覆われた畑を出た。

 今更、状況を伝えたところで、何も出来ないのは皆同じだろうけど、それでも、一秒でも早く伝えたいと走る。

 例え、今、カナツさんとケインが置かれている状況が、より、不安を煽るとしてもだ。


 走るために力を溜めた俺に対して、「戻って来たんだね」と、呼び止める一人の男。

 こんな、俺しかいない畑で何をしているんだ?

 眼を細めてその相手を見ると――クロタカさんだった。


「……」


 アサイド領が暗雲に覆われていて気付かなかったが、どうやら、もう夜を迎えていたようだ。

 星々の煌めくその下で狂人は俺達が働く姿を見ていたようだ。

 なんのために……?


 それでも、俺に話しかけてきたところを見ると、狂人状態ではないようだ。

 ならば、普通に接した方がいいだろう。


「どーも、クロタカさん」


 挨拶を返しながらも、クロタカさんが畑にいた理由を考える。まさか、最近、戦い成分が不足しているから、俺を殺すつもりなのか?

 少しでも早く殺したくて、ここで待っていたのか?


 だとしたら、俺はここで死ぬことになる。

 畑にいる俺は、アサイド領に行く前に比べれば、一人増えている。その増加分をすぐに使ってしまうことになるのか。


 いつ、狂人状態になるのかと警戒するが、狂気は全く感じられない。

 それどころか、優しく俺に微笑むと、


「……サキヒデは仕事してるけど、アイリは今は天守閣にいると思うよ」


 俺が探していた二人の行き先を教えてくれた。


「君がここで生き返るってことは、なにかあったんでしょ? 少しでも早く伝えないとアイリ達が怒るよ……?」


「は、はい! ありがとうございます!」


 二人の居場所を告げたクロタカさんは、そのままどこかへ歩いて闇に溶けていく。

その背中に頭を下げ、アイリさんがいるという天守閣に走る。


 ……クロタカさん。

 それを伝えるために、ずっと待っていてくれたってことはないよね……? 様子を見に来たときに、たまたま、俺が復活したんだよね?

 だって、アサイド領を目指して三日が経過してるもん。

 その間、心配していたなんて――まさか、ね。


 クロタカさんの言う通り、アイリさんは天守閣にいた。

 勢いよく階段を登ってきたのは俺一人。もしも、カナツさんがいたら、一番にアイリさんに抱き着くだろう。

それがないということは、アサイド領で、なにか良くないことが起こったのかと察したようだ。


「リ、リョータ! 大将は? ケインは……!?」


「それは……」


 俺が死ぬ前に起こったことを告げる。

 先輩のこと。

 そして、ケインが〈紫骨の亡霊〉の大将と戦い負けてしまったこと。それでも、ケインが立ち上がるのを信じて、カナツさんが、三人の〈紫骨の亡霊〉を相手にしていると。


「それで、俺はケインを回復させるために、一か八か殺されたんです」


「そっか……。やっぱり使ったんだ」


 ピンチになれば、|俺を使って回復することを《・・・・・・・・・・》、ケインを含め、全員が考えていたようだ。

 ……まあ、俺の密かにそのつもりで同行したんだけどな。


 経験値が溜まってレベルが上がる。

 レベルが上がれば、その分の、ステータスが加算されるのだが、レベルアップはそれだけじゃなかった。

 ゲーム好きの人間ならば、一度くらいはこのシステムを経験したことがあるのではないだろうか?


 レベルアップで、HPやMPが回復するゲームを。


 この世界ではレベルアップで傷が癒える。

 一発逆転が可能なシステムだ。


 俺は自分の命を使って、ケインの傷を癒したわけだ。

もっとも、ケインのレベルが上がったかは、アサイド領にいるカナツさんとケインしか知らない。もしかしたら、俺を殺しても、レベルが上がっておらず、傷も癒えていない可能性も零ではない。

 高レベルだからこそ、必要な経験値は多い。


「ありがとね……」


 アイリさんが俺に礼を言う。

 いや、お礼されることなんて、一つも出来ていない。俺が先輩と同じ力だったら、今頃、笑顔でここに戻れただろう。


 なのに――現実は、何が起こったのかも分からない。報告しても待つしかできない

 ただ、黙って唇を噛む。


 それから数日。

 サキヒデさんにもアイリさんと同じ報告をしたが、「そうですか……。ありがとうございます」と同じように礼を言う。


 ……だから、やめてくれって。

 

 先輩の力も説明したんだからさ、本当は、先輩がカラマリに来て欲しかったって思っただろ? そう腐りたくもなるが、俺が腐っても何にもならない。

 無言で頭を下げてサキヒデさんと分かれた。


 それに、気が沈んでいるのは俺だけじゃない。

 城を出て街を歩く。いつもは、誰もが笑っているのに、通り過ぎる人は、皆、俺に「大将は大丈夫なの? ケインは?」と聞いてくる。

 

 皆が望んでいる答えを、俺は口に出せなかった。

 嘘を付けばいいだけなのに、それが出来なかった。口先三寸噓八百、その場のノリで生きてきた俺は、適当な言葉の一つも思いつかなかったのだ。


 俺の言葉に、カラマリ領の空気が重くなる。

 それは伝染し、領にいる全ての人を蝕んでいくようだった。


 大将がいないと、ここまで空気が違うのか。なにもしないと揶揄われる大将は、そこに居るだけで活気づく。

 俺は――そのことに改めて気付いた。

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