プリンを求めて
二話
その日、私は学校から帰った後、コンビニへ向かっていたの。
あのコンビニのあのプリンがどうしても食べたくて、気がついたら財布を持って外に出ていたわ。
ええ、そうね、あのプリンは控えめに言って最高。
卵とミルクをたくさん使用しているからかなり濃厚な味!それでいて甘すぎない、飽きずに食べられる。
下に眠っているキャラメルソースがまた絶品!ビターな味わいでプリンとの相性は抜群なのよね。
柔らかさは、なめらかなプリンのような感じではないの。スプーンですくっても形が崩れない程よい柔らかさ・・・。
言うなれば、プリンの王様!キング・オブ・プリン!!!
・・・・・・脱線してしまったわね、話を戻しましょう。
そうコンビニまでの道を歩いていた。
「しっあわっせは~ あ~~るいって こ~ないっ」
「だ~かっら あっるいって いっくんだね~~」
私は歌いながら歩いていたの、それほどまでにあのプリンが食べたかった。
コンビニまで残り約400m、横断歩道を二つ渡った先に目的地はあった。
近づいている、近づいている。
私の幸せ(プリン)への道がどんどん近づいている。
「プリン・・・プリン・・・もうすぐ・・・もう・・・す・・・ぐ」
その時の私は言うなれば砂漠の中でオアシスを探す人のようだったわ。
・・・いいえ、きっとそんなものじゃないわね。
・・・そう、それはまるで人肉を求め彷徨うゾンビのよう・・・。
コンビニまで後300m、250m、200m・・・。あと少しで私は幸せ(プリン)を手に入れることができる。ああ、なんて幸福なことなのだろうか、これほど幸せなことがあるのだろうか。否、断じて否。
そんなことを考えていたそのとき!!!
「あの~、すいません~」
「!!!」
後ろから声が聞こえたの、咄嗟に後ろを振り返ったわ。
振り返ってみたらそこには二人組の女の子がいたの。
二人とも私と同じ年ぐらいの女の子だった。
一人は腰ぐらいまで伸びた長さの銀髪ストレートで眼が紅く、口を開けたときにチラリと見える犬歯が特徴的だったわ。
服装はふわふわとした黒いドレス、それに日傘を差していたの。
まるで小さい頃に読んだ絵本に出てきた吸血鬼みたいだった。
でも、ニコニコ愛想良く、おっとりしている。お嬢様って感じの女の子だったの。私に話しかけてきたのもこの子なんだなってすぐに分かったわ。
もう一人は肩までは届かないぐらいのショートヘア髪色は黒、眼の色は紫。
服装はジャージのズボンにパーカー、今からコンビニ行きますみたいな感じ。
さっきのお嬢様系の子とは反対で、気が強いんだなーって思わせるような印象だった。
元気っ娘みたいな活発な子、実際話してみたら近い感じではあったわ。
後ろを振りかった私の顔を見た瞬間泣きそうな顔をしていたわ。まあ、この理由は後で分かるのだけれど。
まあ、そんな二人に私は呼び止められたの。
「あの~、少し時間よろしいですか~」
「・・・ああ、やっぱり、やっぱりこの方は・・・!」
おっとりした方に話しかけられた。
活発な方は驚いたようなそれでいてすごく嬉しそうな顔をしていた、まるでずっと探し求めていた人にやっと会えたようなそんな顔をしていた。
「・・・はいっ・・・なんでしょうか・・・・・・!!?」
歯ぎしりをしそうになった。心の中では舌打ちをした。
幸せ(プリン)はもうすぐそこなのに、まさかここに来て私と幸せ(プリン)を阻む壁が現れるなんて・・・!
私には二人が敵に見えたわ、そう、敵。私の脳は彼女たちを敵と認識してしまったらしいの。
自然と構えていたわ、喧嘩とかは全くしたことはなかったのだけれど。
さあ、いつでもかかってきなさい!勝負はもう始まっているのよ!!
そんなことを思っていたの。
でも、おっとりした方が放った次の言葉を聞いて、私は構えを解いたわ
「あなたは魔王の生まれ変わりです」
「・・・・・・・・・?」
魔王?はて、魔王とはなんだったかしら。
「魔王様!!あなたは姿形は違えども私たちの尊敬する魔王様そのものなのです!」
活発な方は目に涙を溜ながら、元気な声で意味不明なことを言った。
普通の人ならここで逃げ出すでしょうね、でも私は違った。
ただ頭が混乱して動けなかったわけじゃない。何か、面白そうなことが起こりそうな気がしたの。
頑張ってますー