二十二日 2
アホ鳥――省吾が命名した。あの黒い鳥のことだ――を真凛たちへと見せたが、「元の場所に返してきなさい」とまるで捨て猫を拾った子どものように叱られてしまった。まあ彰浩とて、岩をじゃりじゃりとかみ砕いていた動物を食べたいとも思わない。
いったいあの肉体は何で構成されているのか。羽をちぎり、身を切り開いたら肉の代わりに岩が詰まっていそうで怖かった。
結局黒い岩山では収穫といった収穫はなかった。
海岸側を見回った真凛と鈴子曰く、山裾は小さな破片が積み重なっていて足場が悪く危険で、黒い山を越えて向こう側へ行くには海を渡る他ないようだ。竹林側も左手にそびえ立つ緑の山――普段砂浜から見えている岩山――が邪魔をして、ここを越えられそうにない。
「そっちの岩山は登れそうにないの?」
「切り立った斜面のようになっていて、自分たちが登ろうとすると崩れてしまいました」
「黒い方は触っただけで手が切れそうだ。登るのは無理だな」
「うーん、じゃあ海を渡るしかないのか……」
「それは最終手段。反対側はまだ調べてないし。極力海を渡るなんて危険犯したくないし」
ひとまず彰浩たちは大き目の黒い岩を三つリュックに入れて簡易キャンプに戻ることにした。意気揚々と遠征に繰り出した身としては、水辺もなく持ち帰るのがこれだけとなると何ともわびしいものだ。心なしか肩を落とした真凛の背を見つめながら、彰浩は小さくため息を吐いた。
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簡易キャンプへ戻って来てからは、遅めの昼食をとった。毎食同じものを食べていると、笹原へのありがたみがじわじわと湧き出てくる。たった数食ではあるが、味に変化のある温かい食事というものは体力だけではなく気力すらも回復するものだ。
今からタープのある砂浜へと戻るには時間が足りない。日が落ちてから森の中を歩くのは不安であるし、薄暗い中を急斜面を降りてけがをするのも馬鹿らしい。それに今は往路と違って男たちの背中にはずしりと重い岩を背負っているのだ。食料も余分に持ち出して来ていたので、今夜も崖の上の簡易タープで休み、翌日早朝に砂浜へと戻る計画になった。
「どうでしょうか?」
「うん。大丈夫」
彰浩たちは鈴子に教わりながら竹かごを編んでいた。二日目ではあるが同じ動作の繰り返しであるため、こうした作業が嫌いではない彰浩の上達はすさまじい。気のゆるみから竹ひごを途中で折ってしまったり、しなりで強かに手を打つこともあった。未だに竹ひごは太いままであるし、時折大きな隙間が空いているとはいえ彼の手には何とか竹かごと言えるものが出来上がりつつあった。
「ここからは?」
「……わかんない。私がしてたの、本物の竹じゃない、から」
支えにあたる竹が足りなくなった辺りで、鈴子に尋ねるが彼女は暗い顔をして首を振った。
鈴子が今まで作ったことがあるのは、紙バンドと呼ばれる厚紙でできた紐を使った籠だ。それは力も必要なかったし、端の始末などボンドを使って紙を巻き付けるだけでよかった。だから、ぴょんとはみ出した長さの不揃いな竹をどうやってほどけないようにするか、彼女にはさっぱりわからない。
「えっと……せいろとか、ぐるぐる巻いてある気がする。何枚も」
鈴子と彰浩は竹を当てながらうんうんと唸っていたが、そのうち真凛と省吾まで加わって端の始末の方法を考え出す。
――こう、竹を竹で挟んで……。
――紐、紐は?
――樹液だ! それしかない!
彼らの騒がしい声は、日が落ちて焚き火と白い花が光源になるまで続いた。




