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同居人の少女は改造されている  作者: はしもと
第四章 逃避行
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私の五感



「コーディネーターの田中です」

「知ってるよ」

「左様ですか」

「それで、なんの用だよ」

 苛立った声で訊いた。



「明日の正午、本日宿泊される予定の香川県のホテルまでお迎えいたします。もしも指定の時刻にいなかった場合、契約破棄となりますのでご了承下さい」

 どこへ逃げても無駄だった。追いかけてくる。それは変わらない。

「契約破棄でもなんでもすればいい。そんなもんは違法だ。訴えればこっちが勝つぞ」

「ええ、訴えることが出来ればですが」

「……」

「それでは失礼致します」



 ブッ。ツー……、ツー……。



「電話来たんだね……」

 気付けば、睦美はもう風呂から上がっていて寝間着に着替えていた。

「……逃げようぜ。どうせ殺され……」

 しまった、という顔をした。睦美は悲しそうな顔をした。



「わるい」

「ううん、いいんだよ。そうだね。どうせ殺されちゃうんだろうね。だって、これは耐久テストのようなものだもの。どこまでやれば、死ぬかを測る実験だもんね」

「だったら……」

「でもね、死なない人が殺される必要はないと思うの」

 そして、笑った。いつもみたいに一人で、笑った。



「群青さんは生きて。あなたが生きている世界が好きよ」

 睦美の意思は決まっていた。それもずっと前からこうなることは分かっていたのだろう。

「私の五感の全ては、きっとあなたを見つけるために神様が作ってくれたんだと思うの。だから、見つけられたよ。だから、聞こえたよ。温かかったよ。全部、私が見つけたんだ」



 まるでもう会えないような気がした。非通知の電話が掛かってくる前と同じように嫌な予感がした。

「ありがとう。こんな私を見つけてくれて。この世界に居場所をくれて、どうもありがとう」



 睦美の笑顔は冷たかった。

 睦美の声は悲しそうだった。

 睦美の手は温かかった。



 全部、自分だから感じることができたもの。




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