あぁ、まだ生きてた
数日間、彼女の高熱は続いた。意識を取り戻したように起きて薬を飲み、なにか軽く食べて、また気を失ったように眠った。彼女は目に見えて痩せていった。
さらに数日経過して、ようやく彼女の熱は治まってきた。活動時間も長くなった。
「あぁ、まだ生きてた」
誰もいない部屋で睦美は独り言を呟いた。群青はどこかへ行っていた。たぶん、ほっといてもそのうち帰ってくるだろう。立ちくらみが酷い体をゆっくりと台所まで引きずり、コップに水を注ぎ飲んだ。たくさん汗をかいたのだろう。服がベトベトになっていた。もう一回水を注ぎ飲み干すと、洗面所から長めのタオルを一枚持ってきて、濡れタオルにした。
風呂にはまだ入れそうになかったので、群青が帰ってくる前に服を脱いで体を拭いた。だいぶ汗臭い。でも、数日のわりには……といったところだった。果たしてあたしの体は、あたしが寝ている間に何回か洗われたのだろうか。分からないけど、分からなくてもいいことだろう。でも、まどろみの中でも、群青さんが氷枕を何度も用意してくれたり、お粥を食べさせてくれたり、顔を拭ってくれたりしていたことは。なんとなく覚えている。だから、それだけでいいんだ。
少女は体を拭きながら手首の傷跡がなくなった白い腕を見つめている。傷跡は綺麗になくなっていた。
そのとき、玄関の扉が開いた。
「えっ、あっ?」
「うあ?」
上半身全裸だった睦美は急いで前を隠した。群青は慌てて扉を締めた。ドアを通じて「ごめん」という声が何度も行き来した。
数秒後、顔を紅潮させた睦美が扉をあけた。そこにはネギをたくさんもっている群青の姿があった。
「ネギと生姜くっとけば治る」
明らかに照れ隠しだった言葉を、彼女は見えないようにして、もう一度、
「ごめん」
と、そう言った。




