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同居人の少女は改造されている  作者: はしもと
第三章 人を人たらしめるもの
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消息不明




 ゴーイング三三三便が消息不明になった日から、群青はギターを弾けなくなった。

 ギターを持つと指先が震え体が竦んでしまった。聴かせたい人もいなくなった。いなくなってからようやく、本当に聴いてほしかった人間は一人だけだったのだと気付いた。



 連日耳にする消息事件の内容は、次第に希望がなくなっていった。それでも千夏が死んだと思えなかった。そんなにあっけなく人が死んでしまうわけがないと思った。

 歌うことも忘れて、荒れて、名前も知らないような奴らと喧嘩したこともあった。何度も補導もされた。死にたくなったことも何回もあった。酒を浴びるように飲んで、吐いて、喚いて、借金もして、全部終わらせるつもりだった。



 そんな荒れた日々の中、群青は夢を見た。

 あの頃の河川敷でギターを弾いている夢だった。

 群青の目の前には千夏がいて、笑顔で唄を聴いていた。

 群青が歌い終わると目が覚めた。起きたらなぜか涙が溢れていた。そこでようやく気づいた。

 一体自分は何をしているんだろう。



 その日の朝、群青は布団から飛び出した。そして埃が被っていたギターケースを積み重なっているゴミの中から強引に取り出し、河川敷まで走った。弦は弛みきっていて、音程はめちゃくちゃだった。

 それでも彼は歌った。このときようやく歌うことが出来た。指の動かしかたも、コードも、声の出し方も全部忘れてしまっていたけれど、それでも彼は歌った。



 歌うことしか出来ないのなら歌えばいい。

 ギターをかき鳴らすことしか出来ないなら、かき鳴らせばいい。

 あいつがまた戻ってきたとき、あいつを笑顔にすることができるように、どこにいても自分の声が届くように。そう思えたから彼はもう一度立ち上げることが出来た。いつでも彼の人生の真ん中には彼女がいる。



 だからオレはプロになりたい、と群青は思った。

 あいつの喜ぶ顔をもう一度見るために。

 あいつとの夢を叶えるために。

 群青はそんなことを、もう一度だけ思うことが出来た。

 彼を支えていたのは、いつでもあの少女だった。

 支えているつもりで、いつも支えられていた。

 もう一度会ったときに、胸を張ることが出来るように。



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