プロローグ
「答えのない問題を出してもいい?
物語の古典的ジャンルの一つ。人格が入れ替わる話を例にしてみるね。
男と女がぶつかって人格が入れ替わるという話は、誰だって一度は聞いたことがあるよね。
ここで男をA君、女をBちゃんとする。
二人の人格は入れ替わってしまった。するとこの場には、
A君の体の中に、Bちゃんの意識がある人間。
Bちゃんの体の中に、A君の意識がある人間。
二人の人間が出来る。
さて、ここで問題。
正解はないから気軽に答えて。
あなたから見て、A君の体の中にBちゃんの意識がある人間は、
果たしてA君かBちゃんのどちらでしょうか?」
*
「じゃあ、次の問題ね。
その人間がもしも、完全記憶喪失にあってしまい、回復することがない場合、その子はまだBちゃんって呼べるのかな? そこに残っている要素はもう、A君の体しかないんだよ。それってもうA君じゃない?」
正解のない質問のはずなのに、彼女は真剣に回答を待っていた。
その人を、その人たらしめるものは何か。
こんな簡単なことすら考えたことがなかった。
悲しそうな顔をしている彼女のどこを見て彼女だと認識しているのだろう。
いや、認識していたのだろうか。
今にして思えば、睦美は初めから、こうなることを全て知っていたのだろうか。知っていた上での行動だったのだろうか。
彼の頭の中で、様々な憶測が飛び交っていた。




