レストランで正座をしている
レストランで正座をしている
実は私は便意を我慢しているのだ
私ももう大人だ
こんなレストランでイスの上に正座をするのが異様なことはわかっている
しかしこんなレストランで排泄物を垂れ流すよりは何十倍もましだろう
ただ、私以外は私が今にも暴走しそうな新幹線を制止していることは知らない
何も知らずに線路沿いの公園で遊ぶ少年たちを守るスーパーマンだというのに
「申し訳有りませんが」
ウェイターが私の肩を叩く
あまりにもソフトタッチではあったが、ダムが壊れるにはごく小さな穴で十分なのだ
私の心のダムは決壊した
心の中では警報が鳴り響いている
しかし何かがおかしい
手応えがあまりない
どうやら暴発したと思われた銃は空砲だったようだ
空砲により私の体が軽く浮いただけで済んだ
目を丸くするウェイター
無理もない
イスの上に正座した客が爆発音とともに軽く浮いたのだから
「お客様大丈夫でしょうか」
困った顔のウェイターが私の肩を再び叩く
その手の優しさ、温もり柔らかさ、そして声の響き
それだけで十分だった
自由を手に入れた私の便は勢いよく地面に突き刺さる
クサビのように深く確実に地面に固定され、なおも如意棒は伸び続ける
そして私の体は上昇し続ける
レストランの天井を破り、山を越え、雲を越え、真空へとたどり着いたのだ
天まで届くその一本の柱は、「塔」と呼ばれ親しまれているらしい
塔の上には何があるか、誰も知らないのだ
塔のふもとには一軒のレストランがある
塔の下レストランという名のこの店はそこそこ繁盛しているらしい
つい先日、食中毒騒ぎがあったそうだ
原因はまだわかっていないらしい




