荒野の白百合
祖国は鬱蒼としている。
城は食わせ物の狸の巣窟だった。国の統一に反対をした者は既に一掃されている。僕は中心メンバーだから、もはや王族のいないこの城では新たな城主並みの扱いを受けた。もてなしを丁重に断り、僕は直ぐにリビエラの元へ向かった。
地下牢は寒かった。
冬とはいえ、暖炉が赤々と燃えていることを期待していた僕は拍子抜けした。リビエラの牢の前まで歩き、暗がりに身を置くリビエラに声を掛けた。
「リビエラ殿下」
「…ローエン?」
リビエラは蝋燭もつけていなかった。僕は自分の燭台で足元を照らす。リビエラは壁に背中を預け、座っていた。弱々しい声で返事をし、きらりと光る目が僕の肩を睨んだ。
「そう、おまえ、裏切って、いたのね」
リビエラは地を這うような声で言った。リビエラは相当、弱っていた。僕は嬉しくて頬が緩むのを抑えられなかった。
「さぞ、かし、良い気分、でしょうね」
「ええ…あなたは位を失いました。…平民です」
「笑いに、来たの…でしょう。笑えば…良いわ」
僕はリビエラが、無罪放免だと言われて喜ぶ姿が目に浮かんで、可笑しくて笑った。
「構わないわ。もう死ぬもの。…最期にお前が見られて、よかったわ。思い残すこともない」
「ええ、勿論貴方は死刑です。…王族は例外なく斬首刑と決まっていますから」
僕はからかうように言った。リビエラは悲しむでもなく、ふっと息を吐き出しただけだった。あまりに詰まらないリアクションを取るので、僕は早々に種明かしをすることにした。
「…とはいえ、僕が掛け合って貴女は助命されることとなりました。僕の妻として。…ですので、貴女を貰い受けることにしました」
「そ、う…それは、よ、かったわ、…ね、」
リビエラは、糸の切れた人形のように、カクンと瞳を閉じて倒れ伏した。ずるりと背中が壁から落ちて床に倒れ、そのまま動かない。様子がおかしい。
「リビエラ?」
僕は燭台でリビエラを照らし出した。暗がりにいた彼女は、とてもきちんと世話をされていたとは言えなかった。着の身着のまま閉じ込められた時のまま、煤やホコリや汗で汚れてぼろ切れとなったドレスを身にまとい、同じように美しかった相貌は汚れている。食事を摂らなかったのか、彼女はガリガリに痩せていた。あれほど美しかった濃い金髪も、今は見る影もなく退色して白く濁っていた。
僕は震える手で、リビエラを喜ばせるために隠し持っていた鍵で牢獄を開けてリビエラに駆け寄った。抱き起こした身体はとても、とても軽かった。
「…リビエラ!リビエラ!」
名を呼んでも返事は無かった。
直ぐにリビエラを連れ出し、御典医に見せて点滴を打たせた。しかしこれではリビエラは回復しない。御典医はある程度の栄養を与えても起きる気配のないリビエラに首を傾げてこう言った。
「生きる気力を感じられませんね。姫は死にたがっているのかもしれません」
「まさか!…彼女はそんな人では」
「牢獄にいたことで精神が歪むのは、よくあることです」
リビエラに限って、まさかそんな。
「殿下は眠っていますが、声は聞こえているかもしれません。毎日語りかけてあげることです」
有体に言うと、僕は非常に、後悔していた。
リビエラは相当病んでいた。確かに、よくよく考えれば大して仲の良い姉妹でも、妃たちでもなかったが、それでも家族が一人一人死んでいき、少しずつ自分に迫ってくるのは恐怖だったことだろう。それでもあのリビエラが生きるのを諦めるだろうか?
「…リビエラ、お願いだから起きて」
僕は三日間付きっ切りでリビエラに語りかけた。それでもリビエラの固く閉じられた瞳は開くことがなかった。
僕は当初の計画通り、リビエラを連れ出してアリシア陛下の元へ帰った。陛下はリビエラの様子を聞いて、設備の整った城内にいることを許した。僕は仕事の合間を縫ってリビエラを見舞った。
いつリビエラが起きるか分からないのでリビエラの病室に仕事を持ち込む。リビエラが眠ってからもうそろそろ2週間。いい加減起きても良い頃だろう。リビエラに言いたいことは、お説教したいことは山ほどあった。
「リビエラ」
僕が呼びかけるとリビエラはむずがるように眉を顰めた。今までにない反応だった。初めてリビエラが見せた反応だった。僕はもう一度呼びかけた。
「リビエラ」
リビエラは、ゆっくり、目を開いた。リビエラは目を細めてよく景色を見ようとしているようだった。…どうやら目が見えていないようだ。それどころか身体が殆ど動かないらしい。それは、そうだろう。リビエラの栄養摂取はほとんどないのだから。
「リビエラ…!僕が分かる?」
「…ロ、エ、……?」
リビエラは記憶障害を起こしてはいなかった。リビエラは、からからの唇を震わせて精一杯音を出した。微かに頭を動かしてこちらを向いた。照準の合わない瞳が彷徨う。痛々しい姿に、僕は何故か満足した。
「…どうして…どうして、君はそんな人間になったの…生きる気力を感じられないと、医者が言っていた。…そんな繊細な人だった?」
僕は、リビエラに文句を付けた。僕と結婚したがっていたくせに、先に死のうとするなんて虫が良すぎる。僕はリビエラが素直に黙って話を聞いているのを確認して、強く言った。
「…高々1ヶ月牢獄にいたくらいで死ぬ人か?…僕が知る君はもっと自分に忠実で、傲慢で、不遜で、我儘だった。…悪い扱いなんて1つもされていなかった筈なのに、どうして、」
「あく、ぎゃ、く、ひどう…の、王女…は、首を、おとされ、国に、へいわが、おとず、れま、し…た」
リビエラは、一瞬ふっと笑って、ページが擦り切れるほど読んでいた物語の一節を諳んじた。リビエラは辛そうに、ごふっ、と咳き込み、喉から血が飛ばした。
僕は凍りついた。
リビエラがあの詰まらない本を、そこまで本気にしているとは。僕が渡した本のせいでリビエラは死にかけているのか?
「そんな、そんな…!そんなつもりじゃ!」
僕はリビエラに反駁しようとした。しかし良い言葉が見つからない。リビエラは何も知らないのだ、だから僕があの本を渡したとも知らないし、僕がリビエラを守っていたことも、僕がリビエラを守るために力を付けてきたことも、何も、知らない。
「ロ、エ…うら、ぎり、」
ローエンの裏切り者。
リビエラはそれだけ言うとまた沈黙した。
僕は足から根が生えたように、その場から動けなかった。リビエラは僕を恨んでいる。リビエラが死にかけたのは間違いなく僕のせいだ。リビエラの父や母が死んだのも僕のせいだ。リビエラが何不自由なく暮らしていた日々を壊し、突然牢獄に閉じ込めたのは、僕がそう指示したからだ。
これ以上リビエラが僕の側にいたいと望むだろうか?
「まあ、やっと目が覚めたのですね。安心しました」
「マリア嬢」
マリア嬢がリビエラを見舞いに来た。マリア嬢は暇があればリビエラの寝顔を見に来てくれていた。リビエラの、肖像画とは全く違う姿を、マリア嬢は悲しがった。
「余程お辛い目に遭ったのですね」
「…全て僕のせいです」
「ええもちろん。宜しければ彼女は我が家で預かりますが?」
「…貴女が?」
「貴方達、別に好きで一緒にいるわけではありませんのよね。王女も婚約者に国を売られて牢獄に叩き込まれて死にかけたのですし、貴方をさぞかし恨むことでしょうね。貴方も別に好きでもない王女を押し付けられて、それが嫌で反逆したわけですし」
「僕は」
「妹と思っていたから可哀想で救出したのでしたね。まあ、彼女からすれば、貴方に救われるくらいなら死んだほうがマシだったと思われるかもしれませんね」
マリア嬢は、リビエラがここに運び込まれて以来、僕を目の敵にするようになった。僕が彼女をこんな目に遭わせたことが余程癇に障ったらしい。尤もなことだと、思う。残念ながら僕には否定ができない。
「…陛下のお言葉を借りれば、彼女は僕への褒美です。これは僕の物。…貴女に差し上げるつもりは毛頭ありません」
それでも、手放す気にはなれない。
僕は理解不能な感情に内側から突き動かされて、リビエラの退色した髪を撫でた。
「殿下が納得なさるとでも」
「…立場を分からせますから、ご心配なく」
僕はそのままマリア嬢を追い返した。リビエラは穏やかな寝息を立てていた。このまま時が止まれば良いのに。そうすればリビエラはずっと、僕の側にいるのに。僕を恨まずに眠っていてくれたら、いいのに。
日に5回、親鳥が雛に餌をやるように、リビエラに小さなスプーンで少しずつ、野菜や肉をどろどろに煮崩したスープを与えた。リビエラは従順に口に入れたが、最初のうちは二口ほどで戻してしまった。リビエラは決して僕に文句を言わなかったが、物言いたげに僕を見つめる回数が増えた。リビエラは少しずつ身体が動くようになり、目も良く見えるようになった。少しずつ起きている時間が長くなり、一般的な子供くらいの時間は起きていられるようになった頃に、僕は話を切り出した。
「…貴女はもはや王族でも、貴族でもありません」
リビエラは俯いた。やはりこの事実はリビエラを打ちのめすものだったらしい。リビエラは自分のみすぼらしい姿にも非常に心を痛めていた。そんな姿ではどこにもいけないだろう。まだ、足も動かない。僕からは逃げられない。
「ですから私の妾として迎えます」
でもそれだけでは十分ではない。リビエラを最上級に侮辱する言葉を吐き出した。妻ですらない。女性を最上級に侮辱する言葉。勝者が褒美として、王族の女性を迎えることがあるように。こうすれば誇り高いリビエラが一番嘆くことを、分かっていた。
リビエラは、瞳を潤ませて、頷いた。
「仰せのままに」
僕は、やっとリビエラを手に入れた。
どうせリビエラは足が動かないから逃げられやしない。僕は、僕を煩わせる悩みの1つが無くなって満足していた。リビエラはそれなりに機嫌良さそうに僕の屋敷に収まっていた。僕がリビエラの足が動かなければ良いのに、と本音を漏らしても、リビエラは小さく微笑むだけだった。
僕の書斎はリビエラの寝室の隣にした。リビエラが何か問題を起こせばすぐに駆けつけられるからだ。新しい侍女を雇うために何人か面接したが、気にいる人がおらず、決まらなかった。祖国からリビエラと一緒に連れ帰ったエリザは、暫くは陛下付きとして城に置いていた。そろそろ連れ戻してリビエラの世話をさせたい。リビエラは僕が隣の部屋で若い令嬢達と話しているのを、知っていた。聞き耳を立てていた。
リビエラは多分、僕が妻を探していると思っている。リビエラが泣いていると侍女から報告があった。僕はそれを聞いて気分が良くなった。リビエラには嫉妬するくらいの心が残っている。
「…足はどう?」
「今朝からは感覚があります」
「…そう」
聞いておいて、僕は突然不安になった。リビエラの足を優しく撫でながら、いつか立ち上がってこの屋敷から消えてしまうリビエラを思っていた。僕は何故リビエラをこの屋敷に留めておきたいのか、理由を上手く説明できない。リビエラが好きなのか?…リビエラが?
「国はどうなりましたか」
リビエラは消え入りそうな声で訊ねた。
「…税金がこの国と同じ水準に戻った…それに、前より豊かになった、と思う。…まだ併合して間がないから、何とも」
「そうですか」
「…僕は、君が民のことをほんの少しでも考えていたのが信じられない」
あのリビエラが?傲慢で、我儘で、高慢ちきなリビエラが?貴族以外は見たことがないような女が?
「エリザのお陰ですわ」
リビエラは、儚い笑顔を浮かべた。よほど僕たちの教育は効いたらしい。リビエラが、下々の者について考えるほどとは思わなかった。
「…彼女は好き?…もし必要ならば」
「とても好きです。でも、彼女には好きに生きて欲しいと思います」
「…彼女も君に会いたいと思うから」
エリザはリビエラを心配していた。安心させるようにリビエラの頭を撫でて寝かしつける。
翌日、僕はアリシア陛下からエリザを取り返した。アリシア陛下は惜しんではいたが、エリザが望んだこともあり、すんなりと引き渡された。エリザを屋敷に連れ帰るとリビエラはぱっと破顔した。
「エリザ!」
「リビエラ様!」
2人はひしと抱き合った。エリザは抱きついたリビエラがあまりにも細く、自慢の髪が退色したことに酷く心を痛めた。僕を一度キッと睨んで、リビエラに向かって泣いた。大泣きした。
「私が悪いのです姫様…っ」
「…何を言っているの?悪いのは私よ?」
「足が…綺麗な足が」
「動かなくていいのよ、こんなもの」
僕は驚いてリビエラを見た。リビエラは僕から逃げたがっているのかと思っていた。早く足を治して自由になりたいのかと。
リビエラはふとこちらに視線を向けて、変わったものを見るような目をした。僕は余程変な顔をしていたらしい。
「絶対に私が動くようにします」
エリザは決意を新たにすると、また大泣きし始めた。
「姫様が…!私の姫様が…!」
「エリザ、泣かないで…私は咎人なのよ…足が動かないくらい、なんでもないことだわ…」
「でも姫様…こんな酷い…!」
エリザはまた僕を睨む。…わかっている、悪いのは寧ろ僕の方だ。
リビエラが泣いたという報告よりもエリザが泣いたという報告が増えた。リビエラはエリザを泣かせてばかりいるらしい。報告を聞いている限りでは、リビエラは頑張るエリザに対し非常にやる気なく振舞っている。
それでもエリザは負けなかった。僕が、本当にリビエラはもう歩かなくていいのだ、と言うと余計に燃えた。リビエラに歩く訓練をして、そして本当にリビエラは少し歩けるようになってしまった。僕は焦った。リビエラの寝室は二階にしているから、そう簡単には逃げられないだろう。それでも万が一がある。僕は見張りを付けるか思案していた。
「リビエラ殿下のお加減はいかがです?」
「…足が動くようになりました」
城に出仕すると、アリシア陛下に会いに来ていたマリア嬢と鉢合わせた。マリア嬢は嬉しそうに微笑む。
「なのにまだ閉じ込めておくおつもりで?」
「…動くだけで、まだ不自由ですので。保護しているのですよ」
「監禁ではありませんか」
違うとは言えない。僕は黙って昏く微笑んだ。
「貴方の鈍感さにはいい加減腹が立ちます。貴方、リビエラ殿下がお好きなのでしょう?」
「…僕にはその好きが何のことやらさっぱりと。…リビエラには確かに他の人とは違う何かを抱いていますが」
「それは好きってことでしょう!」
「…言葉では簡単に片付けられません」
「貴方って人は!…とにかく、依頼通り明日、貴方の屋敷に伺いますので」
「…ええ、お待ちしています」
マリア嬢は地団駄を踏んで帰って行った。
帰宅し、リビエラを見舞うと、リビエラもマリア嬢並みに僕の痛む腹を探りに来た。
「妾という割には何もなさらないのね」
そうされるだけの勇気もないくせに。
「…そうしてほしい?」
「ここにいる理由が欲しいと、そう思いました」
「…理由…?…貴女らしくない」
僕がここに置いておきたいから、ここにいるのでは。どうしてそんなことも分からないのだろうか。客だとでも思っているのか。僕がリビエラを客としてもてなすとでも?
「私は恥知らずではありません。自分の置かれた状況はよくよく理解しております」
「…そうだね。…君はまるで分かっていない」
分かっていない。根本的に、分かっていない。リビエラは客でも、捕虜でも、妾でもない。
でもそれが何なのか、僕には未だに説明がつかない。
僕の言葉を言葉通りに受け取ったリビエラには、きっと僕がどれほどこの言葉にならない不可解な感情に振り回されているのか、分からない。
朝になると玄関のドアが激しく叩かれた。執事がマリア嬢が来たことを僕に告げ、僕は欠伸をしながらマリア嬢を応接間へ通した。
「おはようございます」
「…早すぎでは?…リビエラはまだ眠っていますから」
「では早く起こして食事でもさせてあげてください。私はリビエラ様の部屋に荷物を運び込むので」
早いけれどリビエラが喜ぶならそれで良いか、と僕は思い、早々にリビエラを起こして支度をさせた。朝食をゆっくりめに取って、リビエラを部屋に帰す。全て知っているエリザはニヤニヤしていた。僕はリビエラの背中を見送って、城に出仕した。
城に着くなり、僕の執事が血相を変えて馬を駆って追いかけてきた。曰く、リビエラが階段から転げ落ちて頭を打ち、こぶができたと。強く打って目眩がしているので休ませている、と。
目眩がしたのは僕の方だった。
僕はすぐに屋敷に帰り、リビエラを見舞った。マリア嬢には事情はともかく今日はとにかく帰ってもらった。マリア嬢は申し訳なさそうに帰った。
リビエラの寝室には物が溢れかえっていた。僕が注文したより随分多く持ち込まれている。まだ大仰な箱に入ったままの贈り物にリビエラは背を向けて眠っていた。僕が部屋に入るとリビエラは起き上がった。リビエラの目が赤い。また泣いたのか。
「…どうしてこうなるの?」
「大変失礼致しました」
僕は心底不思議だった。僕はリビエラを喜ばせようとしていただけだ。泣いてばかりの彼女が偶には笑えれば良いと、そう思っただけだ。リビエラは背筋を伸ばして頭を深々と下げた。そうじゃない、僕が望んだのはそんなことではない。何に対する怒りなのか、はたまた悲しみなのか、僕はまた言葉にならない感情に、頭がいっぱいになった。
「…あの人は酷いことをした?」
「…」
マリア嬢はリビエラを気に入っていたから、何もしていないはず。リビエラも憧れのローズに対抗心など燃やさないはず。
リビエラは沈黙して高慢にツンと顔を逸らした。
「私はいつまでここにいるのですか」
リビエラは僕を見ないまま、ぶっきらぼうに問うた。僕のそばには居られないのか?不可解な感情がまた広がり、胸が痛んだ。僕は病気か?
「…僕には意味がわからない」
「あの方がここに住まわれるのでしょう」
「…あの方?」
「今日こちらへいらした方です」
リビエラは涙声になってしまった。…なぜ、なぜ、なぜそうなる!僕は叫びそうだった。リビエラの胸が荒く上下する。それでも涙が零れ落ちないように息を止めて、リビエラは耐えていた。
「…マリア嬢のこと?」
リビエラは反応しなかった。それでもリビエラが、マリア嬢に何か良からぬ誤解をしていることはわかった。マリア嬢がここに住む?どうして?
いやまさか。
「…もしかしてこの荷物が彼女の物だと?」
僕は1つの可能性に行き当たった。…ああまさか、彼女はマリア嬢に嫉妬しているのか?僕があのマリア嬢を、リビエラを差し置いて愛人に、妻に、するとでも?
「君は馬鹿だ」
大馬鹿だ。
僕はそのままふらりと立ち上がって部屋から出て行った。リビエラは最後まで僕を見なかった。
明日も17時に投稿します