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 私は瞳に涙を溜めながらそれに頷いた。

「では……あなたの名前を是非、この私に教えて頂きたい」


『……パラ・フアームスウィート』


「では――パラ・フアームスウィートよ。我々はそなたを此より、未来永劫に崇拝していく事をここに誓おう!

だから我々民族同士の戦いを、これでどうか止めては頂けないだろうか……?」


 恐らくそれは無理であろう……と、私は言いながらも実のところ理解していた。

 人が何かを欲し、何かを得ようとする限り。その欲望の連鎖が途切れることなど、まず有り得無い。それが何を意味するのか位の悟りは、この時の私には既にある。


 我々はこの地で、優位を保ちたい。恐らくはあのワイゼル将軍とて、同じ思いであろう。そう互いが思い、それがいつしか無くなろうとも、それに代わる何かがまた生まれ()で、欲望の尽きる(いとま)など永久に訪れはすまい。


 争い自体がその形を変え、姿を変えようとも。その同じ欲望が我々人にある限り、傷付き倒れる者が居なくなる事は、ただ単に表立って目立たなくなるだけの話で、永久に……有り得はしないのだろう。

 しかし、


『……三百年』


「三百年……とは?」

 それは私の予想を超えた答えだった。


『やがてこの地に、一つの真理を解く者が訪れ。その者が撒いた種が、多くの人々の心の中に根付き安らかに統治してゆくことでしょう……』


「……では。少なくともこの国の民族同士が争い死ぬことは、その時から軽減される、と?」

 女神はそれに対し言葉としては何も答えず、ただ静かに微笑んでいた。

「せめて、名を! どの国の中からだけでも……!」

 女神はそれには何も答えず、微かに笑んだままで静かに目を閉じる。


 その様な事は問題ではない、そういうことなのであろう……。

 私もそれに対し、そうだったな、と何か納得顔で頷く。

 やがて女神はその姿をそのまま消し、その数日後、ワシは息子を呼び出し、このように伝えた。



「やがて救世主は現れる。しかし、それがこの国の者とは限らぬ。――されど息子よ!

お前の子、そのまた子も。救世主現れる時、それが例えどの国の民であれ、それに従い協力するのじゃ。

それが我々民族同士の争いに終止符を打つ、唯一の助けとなろうからのぅ……頼む!」

 その数日後、奇跡的にもカリエン・ロイフォート・フォスターは思ってもみない懐かしい人々と死ぬ間際に再会を果たし、そのまま幸せの内に安らかな微笑みを浮かべながら、静かに息を引き取り逝ったのだという――。


 それから更に数年後……フォスター亡き後、王国は次第に疲弊してゆき、僅か十年数年ばかりで瓦解する。


 再び、内戦となる戦いが始まり。その後、二百と数十年間そうした争いは絶え間なく続いてゆくことになる――。




 次のページは、本作品としては余計な部分なので少し悩みましたが、やはりそのまま掲載とさせて頂きます。





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