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──それから六時間後。
異変に気付いたカスタトール将軍と副官は、砦へと急ぎ兵を引き揚げ向かっていた。それにいち早く気付いたワイゼル将軍は、即座に背後の国境へと逃れる。
「何とか凌いだようだな……」
私は安堵の吐息を吐いた。
「急ぎ追撃なさいますか?」
「……そうだな」
ワイゼル将軍は、パーラースワートローム国境へと向かい逃れていた。これを正面に囲い込むようにして包囲すれば、ワイゼル軍は国境を越える他にないだろう。
となれば、パーラースワートローム側の王兵とあの忌々しい精霊達があのワイゼル軍を攻撃する筈だ。それを上手く使えば、こちらの兵の消耗も少なく、楽に勝てるだろう。
早速戦略的作戦をたて、諸将に戦術的行軍の指示配置を命じた。
が、計画は予想外の展開となる。
私としては、当地の王兵と精霊等を利用し、ワイゼル軍を挟み込む戦略的作戦を企てていた。しかし何故か国境を超えパーラースワートロームの内地に来ても、精霊等は現れず。あの聖獣シルヴァーフの影すら見えない。しかもこれまで近づくことさえ困難であった当地の王都を、ワイゼル軍は難なく占拠し、なんとそこに居を構えたのだ!
これは有り得ない、予想を裏切られた事態だ。
(あの女神め……更に、何を狙い企んでいる!?)
もうこれは疑わずにはいられなかった。
ともかく私は、ワイゼル将軍のそうした動きを許す訳にいかず。迅速に対応しようと動いたが。国境付近でワイゼル側が新たに手に入れた《聖霊兵器》が、驚くことにそれを阻んできたのだ。
これまで、聖霊の加護無しでは使えなかった筈の兵器が、驚くことに突如として使えるようになっていた。
流石にこれは仕方なく早期撤退し、対峙する丘陵地に新たな砦を建設し。そこで腰を据え、備えることに決めた。
そして……意外なことに、これまで幾つか手に入れてきた聖霊兵器がこちら側でも同じく使えるようになっていたことに後になって気が付く。何よりも、これまでただの水だった筈の水が、青白き不思議な輝きを放ち始めていた。
しかもその水に浸すだけで、兵士達の傷も治ってしまうのだ。
「《精霊水》か……まさに、噂に違わぬ神秘の水だな。これは…」
これにより、結果としてフォスター等は精霊水を手に入れたことになる。だが、
「あのワイゼルのお陰で、キルバレス本国には簡単に帰れなくなるか……」
このまま帰還すれば、更にワイゼル軍は王都を堅固な城塞とし基盤を固める筈だ。そして精霊水が流れる上流をせき止め、独占しようとも企むだろう。事実、数度それを阻む為の戦闘が行われ報告を受けている。
《精霊水》を独占され、《聖霊兵器》を使われては対抗手段を失ってしまう。
となれば、今ここを離れる訳にはいかないだろう。
「……すまない。許してくれ」
私はその時、妻子の写実画が描かれたロケットを強く握り締めていた。
──それから三年後。
共和制キルバレス本国からこの私の下へ、急報が届けられていた。
「何だとッ!? 首都キルバレスで、クーデターが……!!」
それにより私は……いや、パーラースワートロームに居た全ての兵や諸侯は……帰るべき地を永久に失ったことになる――。




